ポーションのない異世界~アリシアVer~

るいす

ポーション開発編

第1話

気が付くと、私は人通りの多い町の中心に佇んでいた。記憶は自分の名前などの個人的な情報は抜け落ちているものの生活するうえでは何の問題もなさそうだ。身体は小さくなっており、服も化学繊維で織られた服とは縁遠い服装だ。なぜこのような状況になっているのかは思い出せないが、とりあえずこのような時の定番の一言を呟く。


「ステータスオープン」


すると目の前にウインドウが現れ、なにやら情報が書き込まれている。


____________

名前:

職業:薬師

スキル:生活魔法

   :調合

____________


まじまじとウインドウを見つめていると通りがかった人とぶつかってしまった。


「痛っ」


「ぼーっとしてんじゃねえぞ」


ぶつかった男はそう言って立ち去っていった。私は転んで砂で汚れてしまった衣服を手で払いながら立ち上がると、道の端に移動する。その時におばあさんが近寄ってきた。


「大丈夫かい?お嬢ちゃん」


「はい。大丈夫です」


そう言うと安心したような顔をするおばあさん。それでも念のためにと手足を確認された。私は優しい人だなと思っていると声をかけられた。


「お嬢ちゃんの名前は何て言うんだい?」


「それが全く思い出せなくて、名前がないのも不便なのでおばあさんがつけてくれませんか?」


そう言うと、おばあさんは驚いて私の頭を確認し始めた。どうやら頭を打ったと勘違いしているようだ。傷がないことを確認したおばあさんは少し悩んだ末に。


「アリシアっていう名前はどうだい?」


「はい。気に入りました。今日から私はアリシアです」


そう言うとおばあさんと私は笑いあった。


「そう言えば私の自己紹介がまだだったわね。私の名前はペルリタ。しがない薬屋の店主だよ」


私は調合というスキルを持っていたことを思い出し、生活の基盤もないことからどうにかこのペルリタさんに雇ってもらえないか思案する。すると、ペルリタさんは何かを察したかのようで。


「そんないかにも考え事をしていますっていう顔をしてどうしたんだい?」


どうやら私はポーカーフェイスができないらしい。そんなことはさておき、どうせペルリタさんから聞いてきてくれたのだから厚かましいがお願いをすることにした。


「私、気づいたらここに居て今後どうしたらいいのかが全く分からないんです。それで、私には調合のスキルがあるのでペルリタさんに雇っていただけないかと思って」


ペルリタさんは驚いた顔をして声を潜めて私に話しかける。


「調合スキルのことは内緒にした方がいいよ。とても珍しいスキルだからね。それと他にスキルはあるのかい?」


「はい。生活魔法というスキルがありますが使い方が分かりません」


「と言うことは七歳なんだね」


私は首を傾げ分からないことをアピールすると、笑いながらペルリタさんが教えてくれる。


「生活魔法と言うのは七歳になると天から授かる魔法とされているんだよ。まあいうなれば誰にでも使える魔法さね。それと私のところで働きたいって話だったね。いいよ。こき使ってあげるから家に来なさい」


そういうとペルリタさんは私と手をつなぎ人通りの少ない方へ歩いていく。少し警戒した私だったがペルリタさんが笑顔で話しかけてくれるので警戒感は薄らいだ。


「言っただろう。私はしがない薬屋だって。私の店は街はずれにあるんだよ」


そう言って三十分は歩いた頃、ペルリタさんは立ち止まった。


「ここが私の店だよ」


そう言って目の前にあるのは小さな一軒家だった。裏には畑があるようでそれなりに広い敷地ではあるのだがお店自体は小さかった。考えがばれていたのかペルリタさんが話す。


「何度も言っただろう。しがない薬屋だって。それに弟子もいなかったからこの広さで十分だったのさ」


そう言うと私の手を引いてお店の中へ入っていく。こうして私は何とか新しい世界で生活できる環境を整えることができたのだ。

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