第177話

「ただいま〜」



 ボクの誕生日が過ぎ、政さんの誕生日を迎えるまであと少し。

 今年はふたりで、良いホテルの良い部屋に泊まろうなんて、結構前から予約済み。

 そこでふたりきりで、政さんの誕生日を祝う。

 手料理は振る舞えないけど、普段は味わえないディナーとお酒を楽しむ予定。

 そしてそのあとは………ね。

 楽しむ予定。

 うちだと控えめに、遠慮しなきゃだから。



 今日は土曜日。

 冬のこの時期は風邪やその他感染症に罹る子が多くて、職場から内階段で上がるだけの我が家に到着したのが、もうすぐ2時って頃だった。



 お腹すいたよ〜って、リビングダイニングのドアを開けたら、そこには。



「………勉強は?」



 今日は土曜日。

 11月最終の土曜日。つまり現役高校生の期末テスト前。

 テスト期間中で部活がないから、今日はみんなで集まってテスト勉強ってボクは聞いていたはずなんだけど。



 ドアの向こうには、エア竹刀で素振りをする宗くん、せっせと編み物をしている明くん、大の字に転がって寝ているあおちゃん、カラスのかーくんとボクが作って置いておいたおやつを食べている光くん。



 そう、勉強するって集まっているはずの、期末テスト前の現役高校生、高校2年生の4人。



 ボクを見て、寝ているあおちゃん以外の3人が、ヤバいって顔をしてバタバタと片付けてバタバタと教科書やノートを開いた。



 もう。みんなで勉強するって聞いてたから、お昼ご飯とおやつを用意しておいたのに。



「さっきまでちゃんとやってたんだよ。めっちゃ勉強してた」

「本当に〜?」

「本当だよ、実くん。ちゃんとやってた。ね?光くん」

「うん。あのっ………本当ですっ………」

「まあいいけど。まだテスト前だし」



 なんて言いつつも、ボクは特に心配していなかった。

 明くんはちょっと本番に弱いっていうのはあっても、普段からコツコツ勉強していて、小中学校に引き続き、高校での成績も申し分ない。

 宗くんは宗くんで、じつは明くんが断ったからだけど、入学式で新入生代表をつとめたことがあるだけある。

 部活や習いに行っている剣道道場で結構言われるらしいからっていうのもある。なかなかに成績優秀だ。

 そして光くん。

 光くんもどうやら成績がかなりいいらしい。明くんが言っていた。

 前にたまたま見た光くんのノートは、すごくキレイで見やすかった。

 この子頭いいんだろうなあって、思った。



 そしてあおちゃん。

 あおちゃんは………ねぇ。



 あおちゃんは今日も女の子。短いスカートからスラっと細い足。

 しっかり捲れているスカートの下が、所謂見せパンってやつなのが救いだろうか。



 モデルを始めてから、ますますかわいさに磨きがかかったよね。



 寒いのか、大の字から丸くなるみたいに横向きになってまだ寝ている。起きる気配なし。忙しいのかな。



 ボクは手洗いうがいを済ませてから、ソファーにかかっている双子寝落ち用ブランケットを掛けた。



「それやると余計起きねぇぞ。掛けるなって本人が言ってた」

「風邪ひいてテスト受けられなくよりいいよ」



 モデル業が忙しくなる一方で、疲れているのかもしれない。



 あおちゃんはボクたちの声に、ぴくりとも動かず寝ていた。

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