第16話 一章エピローグ

 冒険者ギルドにやってきた僕はいつものようにヒッチがいるタイミングを狙って受付に向かう。


「あら。アーウィンさんお早いお帰りですね。案外あっさり片付いたんですか?」

「……これが討伐数報告書。それと未発見ダンジョンの登録申請報告書」


 ガタッ、と椅子から腰を浮かせて僕の差し出した書類に目をやるヒッチ。


「発生原因は扉を使った呪術結界によるマナの濃度上昇。元々あったゴブリンの巣穴に仕掛けたらしく第一層でも深度がありブラッド・ハウンドが出現していました」

「お……お手柄ですねえ……規模にもよりますがこれはかなりの報酬が期待できますよ!」


 新たなダンジョンが見つかる。

 それは金鉱を見つけるようなものだ。


 領主はギルドに報奨金を渡すと同時に私兵やギルドの冒険者を使って調査を始める。

 規模によってはダンジョンバブルという経済効果が生まれ周辺の町が潤ったり、冒険者ギルドの支所が作られたりする。

 当然、発見者の功績は大きく多額の報酬が支払われる。


「支払われるまでどうせ二、三ヶ月はかかるでしょう。最低額でいいからギルドで立替払いしてくださいよ」

「えっ、珍しいですね。アーウィンさんがお金を欲しがるなんて」


 僕の冒険者稼業における報酬なんてのはおまけみたいなものだ。

 母の仕送りで生活は事足りるし。

 だけど、これからはそういうわけにはいかない。


「ウチのパーティメンバー食わせてやらないといけないんで。武器を折ったり、飲み屋のツケが溜まってたり、とてもあの村長からの報酬じゃ足りない」

「パーティ? まさか……アーウィンさん、アオハルに入るんですか⁉︎」

「入るどころかリーダー就任だよ! だってアイツら本当に無教養なんだもの!」


 そう言って、レオ以下六名の血判が押されたパーティメンバー変更届を差し出した。

 その最上段にアーウィン・キャデラックの名前をキチンと書いてある。


「はぁ〜〜というか、さすが書類作るの完璧ですね。本職の官吏みたいです」

「……ありがとうございます」


 座学や教養科目は学院内でも上位だったから当然。

 名前すら書けない連中のせわをしなきゃならないなんて本当にパーティとは面倒なものだ。


「楽しそうですね」

「楽しくないですよ。先を考えて思いやられているんです」


 僕はパッと思いつくだけのアオハルの連中への不満を喋り倒した。

 そんな僕をヒッチは頬杖をつきながら眺め、ニヤニヤと笑っていた。

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