木々村良平の異能狩り超能力事件簿

ととんかつ

1-爆発音と倒れていたやつ


お昼休みに爆発音が響いた。

学校内で爆発音が響くのは、珍しいことなので、周りが一斉にガヤガヤとし始める。


多くの生徒が音に関して驚いていたであろうその時に、俺は違うことを考えていた。


能力を使われた時のにおいがした。


特殊な能力、世の中では超能力、だとか、異能だとか、そういった言葉で表されるあれのことだ。特殊能力。それが使われた時特有の感じがした。

俺は能力が発動したのがわかる力を持っている。匂いみたいに感じることができる。

例えるなら、裏路地に溜まってる廃油のようの嫌な匂いなど。基本的にはいい匂いではない。実際に嗅覚が感じているわけではないと思うが、そんな匂いがする感覚がある。


俺のセンサーが引っかかったので、この爆発には能力が関係しているものかもしれない。


そんなことを思っていた。


爆発の被害者はいないだろうか?

能力関係での事柄でなるべく被害を出さないように、と師匠から言われているので、もし能力が関係しているなら被害が広がらないように早急に対処しなければならない。

俺は能力が使われた感じの強いところ、つまり爆発があった方に向かった。



向かっている最中に、俺のことを少し述べておく。



俺は、今年の4月からこの高校に入学した。


この地域、特にこの高校の辺りに能力者が多数発生しているらしく、それについて詳しく調べるのにちょうどいいということで、俺は高校1年生としてこの高校に入学させられ、高校生活を送ることになった。

詳しい話は他にあるのだが、それはおいおい。



7年くらい前に起きた事件のせいで、俺はそもそもまともに学校に通えなかったので、高校生活に馴染めるかが不安だった。

「普通の生活に慣れるのも訓練の内だ」

なんてことを師匠に言われたが、俺を丸め込むために、師匠は適当に言ったのかもしれない。



日本の小学生が当たり前のように受ける授業を俺は受けれなかった。正確には2年ほどは普通の小学校に通っていたが。

そんなハンデのある人間が怪しまれずに高校生活に溶け込めるのだろうか?






俺は能力者が能力を使ったら、わかる能力を持っている。

けれど、それだけじゃない。

能力を発動している最中に、能力者の身体に触れていれば、その能力を消し去ることができる。消すだけだけれど。


能力者同士の戦いで、能力を消すという能力は、使い方によってはかなり強いものになるらしく、7年ほど前にこの能力を手に入れた俺は、師匠に拾われ、師匠のいる組織に所属することになった。

所属するといっても、師匠の保護下にいる子供、みたいな。そんな感じだけど。勿論正式な戦闘員としては扱われない。


師匠の所属する組織は、表向きの仕事もやっていて、警備や探し物の依頼なども受けることがあるらしい。師匠は基本的に裏のこと、能力関係のことに携わっている。

基本的に、能力の存在は世の中に秘匿されていて、普通の人間は能力を持っていない。

けれど、能力を持っている人間がたまにいる。

そういった人間たちが好き勝手に能力を使い始めると、社会に混乱が生じる。不平等が生じる。そういった能力による世の中の混乱は、不平等なため、治めないといけないらしい。

治めるために、能力者を鎮める能力者が必要なのだそうだ。


そういう人たちが集まった組織が、師匠が所属している組織だ。


俺も能力によって人生を狂わされたので、その必要性は強くわかる。


師匠が言うには

基本的に人間は能力を持っていない方が平等で、変に力を持つと、人生を狂わされる。能力を持ったことでそれ以外の者も不幸になる。


だから、師匠たちの組織が能力者を揃えるのは、必要悪だと、そういう理解を俺はした。



これ以上の組織の話や、師匠の話や、俺の身の上話はまたいずれ述べることにして、今は学校で起きた爆発についての方に話を戻す。



能力発動の痕跡がないかと、感覚を頼りに向っていたら、人気のない校舎裏の方から強く匂いがする。

爆発が起きたところには人が多く集まっている。

どうやら、爆発音と能力の匂いがあるところはズレていたらしい。


爆発と能力の使用は関係ないのか?

たまたま同時期に?


そんなことはないだろうと思いながら、俺は他の人が爆発現場に気をとられているのを尻目に、校舎の裏側をのぞいてみた。


人が倒れている。制服からして男子生徒だ。そして、その倒れている人から能力発動の匂いを微かに感じた。

こいつが能力者?

俺はうつ伏せに倒れているその男子生徒の体格は小柄だった……。それに髪型も見たことあるような。

あれ?これ、確か同じクラスにいたような?


まだ入学式が行われてから1週間程度。クラス全員の顔や名前が一致しているわけではないが、その小柄さが特徴的で、特に特徴のある髪型ではないが、さすがに何となく、記憶に残っていた。


確か、凪元源蔵とかいう、いかつい名前をしていたような。名前の割りに小柄だな、と思った覚えがある。


「大丈夫か?おい。」

と、肩の辺りを叩きながら、声をかける。

返事はない。気絶しているようだ。


…仕方ない。こういう時は、動かさない方がいいのかもしれないが、流石に屋外で倒れているのをそのままにするのもかわいそうだ。

幸い体格も小柄ではあるし、多分運べる。

保健室に担いで行こう。

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