不可能を、可能に
「やっぱり軽い剣がいいよね〜。扱いやすいし」
「は、はい……!」
「あでも耐久性もそこそこ欲しいんだよね?」
「ま、まあ……はい……」
「そんでもって特殊効果も欲しいと〜」
「…………すいません」
「いやいや〜良いんだよ〜正直なのはね〜、嘘つきよりはぜーんぜん」
「ひっ……」
距離を置くエルリア。
どーしたの〜? 別にもー怒ってないぞ〜?
和解(?)した私達は、工房の机に鉱石を並べて剣に使う素材を吟味していた。
前述した通り、エルリアの要望は「軽くて扱いやすく、耐久性もあって、特殊効果付きの剣」とのこと。
これらは、とりあえず考えられる強い剣に必要なスペックの三拍子。
エルリアはどうやら欲望に正直らしい。
しっかし、いくらなんでも要求スペックが高すぎる。
今までの人生の中で剣を作るのはおろか、金属を溶かしたり高熱に熱するなんてしたことがない私が、いきなりそんなハイスペックの剣なんて作れるわけがない。
だが、この子に助けられたのも事実。
いまこうやって悩めているのも技術や場所をくれたエルダリアさんのおかげ。
そして暖かい食事も食べさせてくれた家族の皆さんのためにも、この子の願いを叶えてあげたい。
だけど……、
「うーん……作ってあげたい気持ちはやまやまなんだけど、リアちゃんの要望通りの剣を作ろうと思ったら、この四種類の鉱石を全部一緒に精錬しないと出来ないんだよ。」
「そ、そうなんです……か…………?」
不意に言葉が途切れる。次いで顔を赤く染める。
私は構わず言葉を続ける。
「もしかしたらできるかもしれないけど、私、鉱石溶かして精錬とか一切したことないし、最悪壊しちゃったらあなたのおじい様に申し訳ないからできないよ。」
「……………………す、すすいません。つかぬことをお伺いしますが──」
「そっちの方が可愛いから、以上っ!!」
「え、ええぇぇ……!?」
若い芽は早めに詰め、という言葉の通り災いを招きそうな発言は、言葉を全て聞く前に潰しておく。
昨晩、エルダリアさんにいくつスキルを持っているのかと聞かれた際、ポロッと零れた「リアちゃ……」というあだ名。
やっぱ孫が可愛いんだろうな。
エルリアもエルダリアさんのことを呼ぶ時に「おじいちゃ……祖父が──」と言い直していたし、とても仲がよろしいようだ。
しかしこのような呼び方は家庭内ならよくても、家族以外の他人の前でとなると少々恥ずかしい。
私だっていきなり子供の時のあだ名である「ひなちゃん」で呼ばれたら恥ずかしいし、それをわかっているからあんまり他人のあだ名がわかっても言わないようにしている。
だがなリアちゃん。あなたは私の心に傷を負わせた。
それがたとえ予期せぬものであったとしても簡単には許しはしない。
気を取り直して真面目な話。
「まあもし精錬系のスキルがあればまた別…………だけど……?」
精錬系……スキル……?
まてよ……? なんか私大事なことを忘れている気がする……。
首を捻っていると、エルリアが狼狽した様子で言う。
「ひ、ヒナタさん……り、リアちゃんはやめてください……」
「ちょっと黙ってて」
「っ…………は、はい……」
少々言葉がキツかったかもしれないが、もう少しで思い出せそうなので致し方なし。
スキル……スキルといえば私は何を持ってたっけ……。
ギルドでスキルを見た時の記憶を呼び覚ます。
たしか全部で7つのスキルを持っていて、その中でも鍛冶に関係するものは3つ、武器制作、金属加工、合金精錬の3つのはず……。
あれ、合金精錬ってやつ「精錬」ってあるし、鉱石を精錬するためのスキルじゃないか?
なんなら「合金」とも書いてあるし、初心者の私でも出来るかもしれない。
他にも武器制作とか金属加工とかあるし、どれもレベルはマックスの
──これはいける。
「……そうと決まれば」
私はちょこんと立ち尽くしているエルリアの手を取った。
「……ひっ」
「エルリア、あなたの要望どおりの剣、作れるかもしれないよっ!」
ちょっと、いやかなり怖がられているのは心外だけど、まあ年上のオネーサンに詰め寄られたら誰でもこうなるもんか。
まあ、私も含めてだけども。
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