第28話 英雄 色を好む
「何だってんだよ、こんな店に連れ込んで、飯でも
「
「あっ⁉ わかったぜ。
「ははは、貴殿は本当に
二階席の窓際の丸いテーブルに案内されると、遣いの兵士は右手を胸に当て「
丸いテーブルには、イスラー教の女性信者が身に
その姿を間近で見た大隊長は顔を
「こっ、これは大変失礼致しました」
「構わぬ、気にするな」
その人物が立ち上がりニカブを脱ぐと立派な煌びやかな甲冑に身を包んだ一人の女を目にする事となった―――
「へぇ、こりゃまたびっくりだぜ、俺になんか用かい? 女騎士さん」
「こっこら貴様、無礼だぞ!! 」
側近であろう人物が慌ててヴェインを叱責する。
「構わん。身を
「はっ! 失礼致しました」
「呼び出してすまない貴殿に少し話があってな、まぁ気負わず気楽に頼む、酒でも遣りながら話そうではないか、さぁ掛けてくれ」
「
浅黒い肌と
「これは失礼した。私はウッディーン・アルマイール・サハリアと言う、まぁこの辺りの領主と思ってくれたら良いだろう」
ヴェインはその危険な誇り高き美感に惑わされ、綺麗な顔立ちに残る尋常では無い
「女の顔に傷が有るのは
ヴェインは背中にゾクリとしたものを感じ慌てて視線を逸らす。
「かっ勘弁してくれ、俺ぁそんなつもりじゃ…… 」
「私はな、随分昔に女は捨てているのだよ、貴殿には知っておいて貰っても良いだろう」
女騎士は鎧の肩口を持つと、勢いよく肩から右腕を引き抜きゴトンとテーブルの上に重い金属音を落とした。
なっ⁉―――――
「右足も
―――――!!
「腹の中も生きる機能を果たすので精一杯の状態だ、内臓は金属には出来んからな。余程の物好きで無い限り、神も目を背けるだろうな」
「何てぇ事しやがる…… 」
「良い目をする。見知ったばかりの私の為に
「人が
「ははは冗談だ、
恐ろしい
―――――⁉
「
イスラール軍に
ラマダンとは、イスラル暦の断食の月であり、教徒にとって最も重要な月となる。1か月の間、日の出から日没までの時間帯で断食を行い、ラマダン中は、飲食や性行為を含むあらゆる欲望を禁じ、精神的な浄化を目的とした断食を行う。
但し戦況が激しく、長期戦になる場合は断食を中断することが許され、また、
「そして兵達が久し振りに街に出れる
民衆達と兵達の溝は深く、正に一触即発だった。
そんな時に民衆の声を代弁し、そして鬱憤の堪った兵士の怒りをも受け止めてくれる存在が現れた。民衆は魅了され、その強さと男気に
「そんな姿を見せられては、勧誘しない訳にはいかんだろう、なぁ策士殿。いや…… 軍師殿かな? 」
―――――⁉
「お初に御目に掛かり光栄に存じます
部下達が道を開くとその後ろから
「しょっ!! 将軍だって⁉ 」
ヴェインが今更ながら驚愕する……
「元レンイスター
「あぁ、まったくだ、やってくれたな司令官殿。民衆も兵達も今やヴェイン殿を求めている、そして私もな。まんまと騙された気分だ。面倒な事をせずとも、何故軍に参加したいと願い出なかった? 」
「恐れながら閣下、閣下は商品価値も分からぬまま商品をお求めになるので御座いますか? 」
「ぬ…… 」
「こう見えましても我等は気高きケルトの
「成程な、ではこちらからも聞きたい事が有る。このイスラールには他にも
ウッディーンは
「いいえ
「ほう、それで? 貴様、一体私に何をさせるつもりだ」
「閣下…… 此処からはどうか人払いを…… 」
「なんだよびっくりしたぜ、
「ははは、ヴェイン殿、きちんと繋がってるぞ!
二階席から階段を下りて行くと一階席が人混みでごった返していた。
「おいおい、なんなんだぁ⁉ 何でこんなに人が沸いてやがる? そんなにこの店の料理は評判なのかよ」
「違うぞ、皆ヴェイン殿を一目見ようと集まった者達だな」
「へ⁉ 俺⁉ 」
「我が軍の将軍様からの直々の誘いを受けた人物が、どう言う人間なのか皆興味深々なのだよ」
「へぇそうかい、んじゃ俺ってぇ奴を教えておいてやるか」
「ふふふ、
「おい! てめぇら、俺様にアラックを樽でよこしやがれ!! 」
「やはりこうなるか…… 」
シャマールは残念そうに溜息をついた。
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