第14話 命旦夕に迫る
(此処では立木が邪魔をする…… )
―――仕方ない誘い出すか……
眼前で
(あんな物、触れたら一瞬で両断されちまう)
―――――⁉
すると竜巻が激しく左右に揺れ始め、やがて大きく蛇行し周りの大木をも軽く飲み込む。
「おいおいおい、
―――エマは何処だ?
(いや
「対応しきれん」
俺は命の危険を察知すると
なっ―――――
目にも止まらぬ速さで
「森が抜けた!!
俺は
「ん? あの大きさは大熊か? 側に居るのは…… 」
―――人⁉ 馬を
(襲われている⁉ )
―――あれはきっと俺達が原因だ、軽率過ぎた俺達の責任……
「まずいな、
状況を理解するより先に身体が反応した。倒木を飛び降り脚を踏み出す。被害の拡大をこれ以上広げない為にも、一瞬で
良く見ると大熊の右の眼球に矢がその意思を示している。いい腕だ、俺であっても急所を射貫くには、
―――
俺は少し
(勝手に転げやがって)
「行くぞ」
まだ自分の技にも不安が残る。
―――上手く扱えるのか……
⦅ねてるみたいれす。お山みたいれす⦆
ギアラの言葉を思い返し、後ろに控える者の姿を思い浮かべ、強い意志を
―――――起きろ
鬼丸―――――!!
⦅ 御意 ⦆
主の意識下の呼び掛けに呼応し、刀に封印された新たな絆が開放される。
―――何だ⁉ 力が暴れ……
妖艶な赤紫の煙が身体の周囲を染め、刀はその煙を纏い始める。
(ぐぁ、抑えきれない、今にも腕の血管が破裂しそうだ!! )
首筋の血管も膨張を隠しきれず鼓動がその次を急かす。人の領域を超える為の1歩を踏み出すと、地表が沈みドンと身体を押し出し目の前の景色が消え、その
「何だ⁉ 俺の中の何かが、ソノ者の意識と重なる」
―――どうか我らの悲願を
切れかけた意識の中、刃を放つ。
≪鞍馬流 妖刀術
一瞬にして全ての間合いを制圧し、大熊は突然現れた恐ろしい程の紫に燃ゆる
「ぐはっ…… 」
(あの声は一体何だ、鬼丸の精神なのか⁉ )
想像を超える負荷に身体が悲鳴を上げ、肩で呼吸をし酸素を
「グランド―――――!! 」
誰かが叫んだ。その先に視線を投げると、倒木の向こう側にも大熊と対峙する男が見えた。
―――しまった、もう一頭……
(身体が言う事を聞かない…… )
大熊はこちらを凝視していたが男の叫びに我に返り、目の前の敵ににじり寄る。仲間が何の抵抗も出来ぬまま瞬殺されたのだ、強者に挑む程、浅はかではない、手負いの奴はこれからその命途切れるまで、自らが生き続けて来た歴史を懸け襲い掛かる。
「まずいぞ、ヴェイン逃げろ、逃げるんだ」
満身創痍の男が叫ぶ。
大熊がその命を懸けた覚悟の雄叫びを放つ!! 耳を
「いやー、嬉しいねー、どうやら最後の相手に選んで貰えたようだな、すっかり気に入られちまった」
己が生き残るが為に巨大な鉤爪を恐ろしい程に振り上げる……
「グランドすまねー後は頼んだ…… 」
「あぁ、だめだヴェイン、だめだ諦めるな頼むヴェイン」
ヴェイ―――――ン!!
正に鉤爪が振り下ろされるその刹那的時間軸の中、大熊の眼前でドガンと閃光を伴い爆発が起きる。堪らず大熊が
―――――⁉
遠くの馬上からの遊撃、現れたのは全力で馬に鞭を入れ
「やらせない!! やらせるわけないだろ熊野郎!! 退け、退くんだヴェイン」
「カシュー、おまっ…… 」
「あんただけ格好良く死なれちゃ残された俺達が困るんだよクソジジイ」
一瞬で風と距離を予測し
グオオ―――
「ヴェイン今の内だ、退くぞ乗れ!! 」
カシューはヴェインを引き上げようと手を伸ばすが屈強な
「何してるんだよヴェイン…… 遊んでるんじゃないんだぞ? 」
ヴェインの手を放そうとしないカシューの目に涙が溢れる……
カシューの青く澄んだ濡れた瞳を、その目に焼き付けヴェインはゆっくりと横に首を振った。
「おい、やめてくれヴェイン、そんな顔で見るな駄目だ」
カシューは手を強く握り放そうとはしない……
「おい、頼むヴェインお願いだ…… 頼むよ」
カシューは大粒の涙を流し、消えようとする命の
グアアァ―――
四つに構えた大熊が力を全身に溜め、今、正に飛び出そうとしている……
「放せ、手を離すんだカシュー」
ヴェインは初めてカシューに向け微笑みを晒した。それは悲しい覚悟を決めた男の最後の笑みだった……
「嫌だ、駄目だ、一人では逝かせない!! 」
繋いだ手を…… カシューは離さない……
グランドはこれから起こる悲劇から、目を背け現実から逃げるしかなかった。地面に頭を擦り付け、差し迫る絶望に涙ながらに懇願する。何という非情な運命か、何という儚き命か……
「あぁ…… 神よ…… 神よ……どうか…… どうか」
グランドの願いは神の
なっ―――――⁉
激しく吹き上がる血潮は永遠と続き
「あ、あれは…… 神の…… 天使の輪なのか…… 」
カシューは涙で
「来たか…… 」
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