職業『罠士』の大罪人 ~不人気職の検証勢、最前線を突き進む~

aaa168(スリーエー)

『落とし穴には、無限の可能性が広がっている』

ログイン、死亡



《『Freedom-Liberty』の世界へようこそ!》


《この『FL』での貴方の名前を入力してください!》



■プレイヤー名:長久 霞ながひさ かすみ



《実名は避けて下さい。使用できません》


「ちゃんと反映されてるな。えー……コレとかどう?」


入力デバイスが現れたのでそこに再度打ち込んでいく。



■プレイヤー名:†XX†



《ダガーエックスエックスダガー様で宜しいでしょうか?》

「『記号』で変換して出したのにしっかりアナウンスの読みは変わると、ごめん間違えた」

《承知しました》



■プレイヤー名:一期一期一会


《『いっきいちごいちえ』様で宜しいでしょうか?》


『いっきいっきいちあい』で変換して入力したはずなのに、勝手にまた読みが変わった。後に対応する言葉があるからかな。


「読み方が違うぞ」

《失礼いたしました。正しい読み方を教えて下さい》


こうして修正も聞く。


この世界は気になる事ばっかりだ。

もう少しだけ付き合ってくれ。



《声に出して、正しい読み方を発音して下さい》



「『あああ』」



《正しい読み方を発音して下さい》

「やっぱり無理なんだな」



《貴方の名前を教えて下さい》

「適当に決めてくれないか」

《コレまでのお名前の入力履歴から、自動で作成させていただきます》



《『一期一会』様でよろしいでしょ――》

「それは嫌かな……」

《申し訳ありません》

「あ。こっちこそごめん」



別に怒った訳では無かったんだ、AIには申し訳ない事をした。

ただ反応が見たかっただけ。



《貴方の名前を教えて下さい》

「なんで?」

《……》


「! 無視とかもあるのか――」



本当に、気になる事ばっかりだ。





アレからAIと話す事しばらく。

名前は結局『ダガー』にした。自動作成ひたすら回して、10回中2回それだったからな。

キャラクリエイトは興味ないから適当に。

用意されていた見た目……プリセット『パターン1』に俺の顔を融合させた。

流石に同じ顔の奴が居たら流石に嫌だから。リアルと同じなのも嫌だし。


黒髪黒目、中肉中背。

思いのほか現実の自分だけどもういいや。

パターン1の男に似てるってどうなの? 



……で、後は職業のみとなり。



《『ダガー』様、職業を選択して下さい》

《『FL』には膨大な職業が存在する為、5つの質問から貴方に最適な職業をご提案させていただきます。予めご希望の職業があればお申し出下さい》


正直、コレに関しては最初から決まってるんだよな。



「罠使う職業が良い」


《かしこまりました。何かを設置する職業は、『弓士』・『冒険者』・『罠士』が存在します》


「結構多いな。どれもすぐ罠使えるのか?」


《弓士と冒険者はレベルが上がり、上位職に転職すると使える様になります》


《罠士は罠設置に特化した職業で、レベル1から罠を設置出来ますがスキルやステータスなど、戦闘能力が先程の二つに大きく劣ります。非常に上級者向けの――》



「罠士で」



即決。どうせやるなら早く使いたい。

なんで罠なのかと言えば、ファンタジーといえば罠だからだ。

魔法、剣、そんなモノより罠が主役。



《本当によろしいですか?》


「ああ」



《承知しました》

《それではダガー様のキャラ作成を終了します》

《まもなく『FL』の世界に移動します》

《ダガー様》


「?」


《この『FL』を、お楽しみ下さいませ――》


世界に飛ばされる直前

その、無機質な声には。

どこか――『含み』があるように思えた。





《始まりの街でログインしました》

《『FL』の世界に、貴方は足を踏み入れました!》

《マップ『始まりの街』を取得しました!》


「やっぱ凄いなフルダイヴ」



まるで現実の世界。

同じ台詞を吐いた奴らが恐らく千人は居るだろうな。


目に見えるモノだけじゃない。空気も音も、まるでそこにいるみたいだ。

科学の力って凄いな。見えているのはファンタジー世界なのに。


……感動はそこそこに。

早速スキルを見よう。



「えっとメニュー、ステータス……スキル一覧」



プレイヤー名:ダガー

職業:罠士


LEVEL1


HP:1000

MP:100


STR(筋力値):5

INT(知力値):5

DEX(器用値):5

AGI(敏捷値):5

VIT(体力値):5

MND(精神値):5


ステータスポイント:残り0ポイント

罪ポイント:【0】


skill:

罠設置LEVEL1  


装備 :なし

所持品:『始まりの街』マップ HPポーション(小) MPポーション(小)

所持金:10000G


取得称号一覧




《スキル説明:罠設置》


罠士専用スキル。罠を設置出来る。

レベルが上がると設置出来る罠の種類が増加する。


『落とし穴』

プレイヤー、モンスターが触れたら発動。

設置場所の下に落とし穴が生成される。




「落とし穴が使える……!」



早速試したい!

戦闘エリアに行こう。えっと、マップマップ――




『始まりの街』。


石造りの街に暖かい空気。

優しそうなNPC達に、雑貨屋や武器屋が並んでいる。


それをガン無視して戦闘エリアへ。


《始まりの街・戦闘エリアに移動しました》

《チュートリアル・罠設置Ⅰを開始しますか?》



「後でいいや」



《承知いたしました。チュートリアルはいつでもメニューから受けられます》



「ありがとう」



そこは広がる草原だった。

辺りには沢山のプレイヤー。

そして――



《スライム LEVEL1》



ゲームの雑魚敵では定番なそれ。

それじゃ早速、いっちゃいますか!



「……『罠設置』」



手を地面にかざして、そのスキルを発動。

ロード時間の様な円が三秒間掛けて完成し――



《落とし穴を設置しました》



楽しい!


今俺の前の地面には、見えないがその罠が設置されている。



《落とし穴》



やっぱ見えた。

仕掛けた場所に視線を合わせたら、アイコンとその文字が表示された。こっちだけしか見えないっぽいな。スライム全く気付いてないし。


やべぇテンション上がってきた。

後は目の前のコイツがハマってくれればOK。



「こっち来い」

『ピギ――ッ!?』


《落とし穴が発動しました》



「……良いね」



その地点に移動した瞬間、スライムは突如現れた地面の穴に吸い込まれる。


そして1秒後、穴からスッと上昇しながら再度現れるスライム。

まるでエレベーターの様に。

で、赤いバー……HPは10%減っていた。少なくない?


でもMPも使わないしCT再使用時間もゼロだしこんなもんか?



『ピギ!!』

「うおッ……!」



そして怒ったスライムが俺に突進、ほのかな痛覚と衝撃、吹っ飛ぶ身体。


減るHP……残り70%。

うん、後三回遊べるな。



「『罠設置』」

『ピギ!』

「ぐッ」



すかさず落とし穴を設置しようとしたが、タックルで吹き飛んでしまう。


見れば手の円が消えていた……つまり設置失敗。

体力40%。あと二回か。



「『罠設置』……」

『ピギ!!』


「ッ……!」


《落とし穴を設置しました》

《落とし穴が発動しました》

『ギィ!?』


穴に吸い込まれるスライム。



「攻撃食らっても、手さえ地面に触れとけば良いんだな」



どうやら発動中の被弾が解除の条件ではなく、手が地面に触れなくなった時が条件らしい。


ああ、どうしよう。体力は既に10%。

遊べるのはあと一回。

試したい事は――



「ッ――『罠設置』!」

『ピギ……!』



ダッシュでスライムと距離を取る。

そして罠設置。

この距離ならギリギリ被弾ゼロで間に合うだろう。


だが。

ここはワガママを通そう。



《落とし穴を設置しました》

『ピギ――!!』



完成、前を見ればスライムが突進の動作を開始していた。


それをちらっと見た後――俺は前に足を踏み出す。


《落とし穴が発動しました》


瞬間。

足下に現れる穴。

そして目の前は暗闇に。


人一人が余裕でハマれるその空間。

上を見れば、スライムが穴の上を横切っているのが見え。



「これ、回避に使えるな」



呟く。

さあ、戻ってもう一度検証だ。



《貴方は死亡しました》


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る