友の激励
秋を思わせる時期になった。高世は親友相沢翔と一緒に帰っているところだった。歩きながら、高世は、
「結局、俺は口だけだったんだな」と諦観の笑みを浮かべて言った。翔は黙って聞いている。
「俺には大した志も、覚悟も何もなかった。あるのは一丁前の口だけ。これが口だけ男ってことかね」
その時、
「ふざけんな」
翔が静かに言った。
「俺は大したことない?口だけ?本当にそうか?」
翔が興奮した調子で続ける。
「春頃、威勢のいいこと言ってたお前はどこいった?生徒会長の考えを知ったからなんだって言うんだ。」
高世は答えない。
「確かに、お前には覚悟がなかったかもしれない。でもな、お前が最初に言った『応援』の意味は間違っていなかったはずだ。そうだろ?それはお前がこれまでの学校生活で信じた道を貫いた結果によるものだ。」
「やめてくれ、気休めはいらない」
高世は言う。だが、翔は、
「俺はやめねぇぞ。いいか紗雪、覚悟は大事だ。だが、それは覚悟の内容による。自分の目的のために信念を曲げることが覚悟だと俺は思わない。己の信じた正義のために最後まで道を貫く覚悟をすることが大事なんだ。自分の弱さと向き合い、そして熱意がある今のお前ならその覚悟を持つことができるんじゃないのか」
その刹那、高世の脳裏に亡き祖父との思い出がよぎった。
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