第38話 ごめん、遅くなって

「さてと。どうするかなぁー」


改めて作戦通りに行動する。未だグラウンドは真ん中にいる人間を囲むようにみんな集まっていた。そして、皆それに釘付け状態。


俺はそのまま校舎に入り込む。と同時に途中で分かれたはずのクリシャに出会った。


「先輩!今までなにしてたんですか!探したんですよ!」


「お、おう…ごめん」


俺もクリシャがいることをすっかり忘れていたため、それも含めて謝る。もちろん、クリシャはそれに気づくはずもないが。


「で、なんなんですかその服!反則なくらいに似合ってるんですけど!」


「怒ってるのか、褒めてるのかがイマイチわからんな…」


「どっちもです!」


「は、はい…」


クリシャの勢いに押されてしまった。

でも、息が荒いのに加え、クリシャの髪の毛が少し湿っているように見える。汗をかいてしまうくらいに俺たちを探してくれていたのだ。

そう思うと、俺はなにも考えずにクリシャの頭に手を置いていた。気づいたころには、その手は自然とクリシャを撫でていた。


「えっ?せん、ぱい?」


「ありがとうな。俺たちは大丈夫だから」


「うっ…うう、先輩にこんな母性があったとは…」


照れているのか、ずっと顔を下にしているが耳が赤くなっている。


「よし。クリシャも校舎から出てグラウンドの方に避難でもしといてくれ。下手すると今からこの校舎、全壊か半壊するから」


「壊さないでくださいよ!?この校舎、一応築5年って聞いてますから」


築5年。別に建ってすぐでもないが、確かに建物の年齢で考えると新品な方に入るだろう。でも、5年もあるわけだし。


クリシャを校舎から避難させたところで、俺は3階へ上がるのだった。


★★★


お兄ちゃんはまだなのだろうか。いくらなんでも時間がかかりすぎていると思うのは私だけなのか。

それとも、これが苦しい時間だから、長く感じるだけなのだろうか。


「っと!」


私にも限界というものが身近に迫ってきている。仕込んである魔法陣を一つも踏まなければあともって3分といったところだろうか。


「そろそろ鼠も逃げる体力がなくなったところか?」


執念深く、私を追ってくるあの男はまだ私のことを追いかけていた。こうまでなると気持ち悪くなってくる。

そんなことはどうでもいいのだ。早くお兄ちゃんが来てくれないと、私は本当にあの地獄の施設に帰らなければならない。


どうこう逃げているうちに、遂に1番端の教室にだどりついてしまった。


「さあ、もう逃げられないぞ。観念しろ」


「いやだね」


なんとしてもお兄ちゃんがくるまでは耐える。もう一度決意を固めたとき、私は盛大にやらかしてしまった。


ーーーッキキン!


「きた!」


私を追いかけていた男はガッツポーズをしていた。そりゃあ、ガッツポーズもするだろう。

なにせ、私の踏んでしまった魔法陣から発動された魔法で、私の周りに大量の剣が出現してしまったからだ。しかも、刃先を全て私に向けている。


「観念しな。もうおまえに逃げ場はない」


私が抵抗すると、あの剣たちが一斉に私に襲いかかるだろう。そうなれば、死は逃れられない。だけど…


「ーーっ」


「なんだ?最後に言い残したことでもあるのか?」


深く息をして、最後に叫ぼう。またあそこに戻っても抜け出せばいい。私はもう開き直っていた。


「おにー」


お兄ちゃんのおの字が出かかったとき、私に刃先を向けていた剣が、粉々になった。


「!?」


「なんだと!?」


すぐに辺りを見渡しても誰もいない。でも、気配はする。しばらくしないうちに、私の足元にある魔法陣も消えて、その人は姿を現した。


「ごめんな、音羽。遅くなって」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

さて、いつまで続くんですかね。もう厳しいって言いなれてしまいました(笑)

それと、前の時にいつものあれをやり忘れてたのでここでやります!

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