第200話 異界の蒸気機関、その研究と流通
200
額に十字傷を刻まれた少年、
「あのリヤカー、五トンもの荷物を運べるそうだから、今後の輸送や探索がはかどりそうだね」
蒸気アシストつきリヤカーは、俗に言う一二フィートサイズのコンテナ。長さ約三メートル半、幅二メートル半、高さ二メートル半の、箱形運搬容器を載せるボックス型のリヤカーだ。
モンスターの襲撃を警戒して迷宮内部を移動することから、前後両方に持ち手がついて〝蒸気機関つき大八車〟とも呼ばれているらしい。
「遥花先生の授業によると、たとえ〝鬼の力〟を使っても、冒険者一人が〝自前の装備を除いて〟ダンジョン内で
「でも、新型の蒸気機関を作るのには、希少な
「蒸気機関本体もだけど、燃料の木炭も、異界迷宮に生える一部の樹木からしか作れない貴重品だろ? コストが高すぎて割に合わないんじゃないか?」
「〝
桃太達がやいのやいのと話していると、もうスタミナが切れたのかやる気が無くなったのか、昆布のように艶の無い黒髪の少女、
「ふむ。ダーリン……げふん、校長の手伝いで資料を見た記憶がある。
賈南がもたらした情報に、男子生徒達は湧き上がった。
「地球の生産品で再現できるのか?」
「知ってのとおり、カクリヨ産の方が出力は高い。だが地球の技術も日進月歩で進んでいるのだ。現に南米やアフリカでは、〝
「へええ」
桃太達は、地球干渉を目論むクマ国の過激派団体〝
賈南は当然ながら
「日本でも九州の宮崎県、近畿の奈良県、東北地方の秋田県などに製作所を建設中だそうだ。学園内の掲示板を見るに休暇中のバイトも募集していたぞ」
「それって、花粉症対策にもなるのでは?」
「よし、出雲。地上に帰ったら杉と檜を刈り尽くさないか?」
「き、気持ちはわかるけどさ」
と、男子達が〝
「コケエエエッ。およしになって、食べないでええ」
まさにその周辺で、珍妙な悲鳴が響き渡った。
――――――――――
あとがき
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