地中海死闘編
フランスを降した後のムッソリーニの目はマルタ島に向いた。
ギリシャ侵攻も考えていたが誤射によりバルボが死んだ後、リビア総督に就任したグラツィアーニからはエジプト攻撃の為戦力補充を訴える電報が届き、空母機動部隊を除けばマルタ島の英軍が本国への石油輸送に邪魔だったのである。
7月に起きたカラブリア沖海戦では引き分けに終わり、ムッソリーニだけでなくヒトラーもジブラルタル攻略をスペインに要求したが内戦で荒廃したスペインにその余力は無く、せいぜい得られるのは海峡を通過する艦艇の通報のみであった。
数日前に発生したメルセルケビール海戦で英仏間の関係は悪化したが、それ以上に仏の独伊に対する感情が悪くサボタージュやレジスタンスの活動は下がったものの情報はスペイン頼みなのは変わらなかった。
乗員の疲労度や地中海沿岸では空軍の支援が得られる点では有利だったが、海上戦力が劣っていた為海軍の動きは通商護衛に限られ、マルタ島へは専ら空襲を行った。
相次ぐ空襲によりジブラルタルからアレキサンドリアへの移動中機械故障と称してマルタに留め置かれたハリケーンも稼働機が十機を割り込み、英国本土ではバトル・オブ・ブリテンが勃発。
マルタ島守備隊はスピットファイアを要求していたが本国の空が危うい時にそんな余裕はなく、ジブラルタルに居たH部隊はハリケーン輸送の為マルタ島に向け出撃。
そんな彼等を歓迎したのは初期不良の洗い出しも終わり、開戦後は1日1機のペースで製造されたP.108を主力とする戦爆混合2波80機による爆撃だった。
沈没艦はなかったがアーガスが中破、搭載していたハリケーンは全損。
H部隊が引き返した事を知ったイタリアは8月にダンテ・アリギエーリ以下11隻の艦艇を出撃させ、マルタ島を砲撃。
ジブラルタルへの空襲も行われ、修理中だったアーガスはとうとう沈没。
それと引き替えにイタリアも航空機を2割喪い、大型機による攻撃を躊躇するようになった。
英国はジブラルタルすら危うい中、マルタ島を見捨て喜望峰ルートで物資輸送すべきか悩んだ。
損害を与えた航空機も水力発電所や製鉄所の新増設に伴う電気代下落によりボーキサイトの精錬コストが下がり、重量ベースで米国の1/4相当の製造能力を持つと試算されていた。
機能停止状態の中輸送を成功させたイタリアは9月、エジプト攻撃を開始。
スエズ打通を目指し北アフリカ戦線が形成されたのである。
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