第6話 源典侍とのお話2
「それでは、
そんなはずはないのは知っている。扇ごしにじっと見つめると兄は目をそらした。
「その時まではね。」
「その時までは?」
少しの沈黙の後、兄が話し始める。
「ある日ね、夕立が降ったあとに、ちょっと涼しいし、宵闇に紛れて
そんなに上手なのか。いつもとの違いに惹かれたのかな?「瓜作りに・・・」は身分の低いものの妻になって貴公子を諦めようかしらという意味だ。
「まあ。それほど。聞いてみたいものですわ。」
「それで、そのあと思い乱れているような雰囲気だったので、東屋を静かに歌って近づいてみたんだ。」
「お誘いになりましたの?」
「そんなつもりはなかったんだが、「おし開いて来ませ」と言うのでびっくりしたんだ。」
でも、そう返せるのが源典侍の賢さだよね。
「それで、どうされたんですの?」
「立ち去ってしまおうと思ったんだが、このようなお年の方をひどく扱うのもと思ったし、これも一興だと思ってね・・・」
なるほど、関係を持ったということですね。
「それでね、頭中将にしてやられたよ。」
「頭中将さまですか?」
「夜更けごろに、私はなんだか眠れなくて起きていたんだが、誰かが入ってきてね。源典侍の恋人の
「あら、大変。」
修羅場だ。修羅場。
「本当に。誰にも気付かれないうちに逃げてしまおうと思ったのだが、見苦しい格好で逃げるなんて間抜けじゃないか。ためらってしまってね。そうしているうちに、相手は太刀を抜くし、源典侍は大慌てで、その男にすがっているしでね。」
「大騒ぎですわね。」
壁で区切られていない宮中で、夜更けに迷惑だなあ。
「その時、ふと相手の男が頭中将だと気付いて、わざとだなと思ったから腕をつねったんだ。そしたら、頭中将は笑いだしてね。私は直衣を着るよ。と言ったら邪魔するんだ。だから、帯を解いて差し上げたんだ。それで二人とも笑いながら帰ったよ。」
「仲が良うございますわね。」
源典侍もお気の毒に・・・
「そうだね。それで次の日にお互い口止めし合って終わったよ。」
「まあ。平和に終わってようございました。」
「そうだね。」
変わり種の恋のお話だった。
「ふふふ。興味深いお話でしたわ。またお聞かせくださいませね。」
「ああ。またお話ししよう。」
そう言って兄は帰って行った。
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