第7話 紫の君(若紫)を得た話2
兄が続ける。
「
「ええ。」
「その練習でしばらく連絡を取れなくて、やっとあの北山へ連絡したんだ。そうすると、尼君は
「あら・・・」
「私たちも、母
「そうですわね。同じようなご状況ですものね。」
むしろ、女性であり、兄もいない若紫の方が大変だと思う。父からの寵愛の面でも。
「そして姫君が京に帰ってきたと聞いたて会いに行ったんだ。そして一晩共に過ごしたんだ。」
「お、おにいさま?」
「一緒に寝ただけだよ。
よかった。言い方がわるいよ。
「安心しました。」
「そこで話した姫の
そうだよね。
「不安もわかりますわ。」
「それで帰ったんだけどね、その次の日に、
「ええ。そうですわね。」
「だから、強引に引き取ってしまうことにしたんだ。」
それ、後の世では誘拐っていうんだよ。知ってる?
「・・・どのようになさったんですの?」
「その日は左大臣家にいたんだが、急用ができたと夜更けに出て、故
怖かっただろうな。強盗だよね。紫の君かわいそうに。
「それは、恐ろしゅうございましたでしょうに。」
兄は続ける。
「女房たちが、何をなさるのだというから、連れていくので誰かひとりついてこい。というと、明日に父宮が迎えに来るので困ります。というんだ。そんなことを言っても止めようもないから、後からでも誰かこればよいと言って
強引すぎる。平安時代にも嫁盗みの例もあるし、
「みなさま、ビックリなされたでしょうね。」
「うん。姫君もないているし、混乱した場であったよ。」
混乱させているのはあなたですよ?
「そうでしょうね。」
「それで、姫と乳母だけ連れて二条院の西の対へお迎えしたんだ。姫君も最初は泣いていたが、しばらく一緒に過ごしたら慣れてくれてね。今ではなついてくれて可愛いよ。まだまだ子供っぽいところもあるけれど、一緒に遊ぶのがとても楽しいんだ。」
「ようございましたわね。」
「ああ。あの子といると物思いを忘れられるんだ。」
「そうでございますか。」
兄にとってはとても良い縁組なのだろう。若紫にとっても、他の可能性を考えるときっとマシに違いない。継母が自分の子と分け隔てなく接してくれるタイプの女性だったらどこかの貴族の正妻になれたかもしれないが、そうもいかないような方みたいだし。
「また、紹介してくださいませね。」
「ああ。君と似て美しいからお互いに仲良くなれると思うよ。」
そういうと、兄は紫の君の待つ二条院へいそいそと帰って行った。
……………………………………………………………………………
〈お知らせ〉
今更ですが、主人公の呼び名を決めました。
理由
桐壺更衣の娘→桐の花→桐の花の色=薄紫
伝統色の薄紫かつ桐科の植物→紫苑
となりました。
よろしくお願いします。
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