幼馴染の彼女をNTRされても僕は絶対許すマン、しかしもう一人の学園一の美少女である幼馴染が「それが許されるのはサバンナだけ、動物園では許されない」と恫喝する。僕は2人の幼馴染とそっと距離を取るが…?
サラルート〜ミソギとケジメ【後篇】ただ、海の絵を、描きたかった
サラルート〜ミソギとケジメ【後篇】ただ、海の絵を、描きたかった
おばあちゃんから聞いた…ここは、神奈川の海沿いにある病院だって。
何でおばあちゃんがいるの?って聞いたらお姉ちゃんが神奈川で一緒に住もうと言ったらしい。
おばあちゃんはお母さんの母、ハイカラな人で…別に都心に出ても良いと言ったそうだ。
孫娘の活躍も間近で見れるし、この年で東京進出だと喜んでいた。
そして私は3年間、九州の病院にいたらしい。
何か夢のような話をして、何か不思議な事を言っては騒ぎ、眠るを繰り返していたらしい。
話をあわせると食事をしてくれるので、病院の人はよくあわせてくれていたそうだ。
だけど、先輩は何の話か知っていた。
その話は…先輩が死ぬ悪夢、夢の中で見たファンタジーの世界、最後は必ず私がおかしくなる話。
その世話を…昼間はおばあちゃん、朝と夕方から夜は太郎さんがみてくれていた。
太郎さんはシャカシャカの件もあるので、私の母方の実家のある九州・長崎の施設に私を入れた。
地元の郵便局で働きながら私とおばあちゃんの面倒を見ていた。
おばあちゃんが、何で私達の為にそこまでするのか聞いた時、先輩は言ったそうだ。
「尊敬する家族はいますけど、血縁という意味で言えば俺にはもう居ないんです。だから背負うものが無いので、気にしないで下さいね。」
逆におばあちゃんを心配していたそうだ、田舎で高齢で、一人娘は亡くなり、孫はこの調子…弱っていたのは先輩じゃなくてもすぐ分かるだろうから。
ただ、暫くして…1年か2年…おばあちゃんの口座に桁のおかしい金額の振込があった。
お金を用意したのはお姉ちゃんだそうだ。
ドラッグで芸能界が騒ぎとなり、なかなかまとまったお金が用意出来なかったそうだが、落ち着いた所で事務所に借金を掛け合ったそうだ。
お姉ちゃんと先輩は…私はもう、なにか言える立場では無いけれど…お姉ちゃんの告白をフッたらしい。お姉ちゃんから聞いた。
「俺は今、サラとの思い出に生きていて、その気持ちに同情とか後悔とかもあるかも知れない。それでもサラがいる限り…俺はサラを愛そうと思う。
高校卒業して…俺に会いたがっていた血の繋がった母親が会いに行ったらもう亡くなっててさ、少し後悔はしたけど…俺の手に掴めるものはとても少ないらしい…だから…もうサラだけを掴むよ…」
お姉ちゃんは笑顔で言ったそうだ。
「そっか…うん!分かった!だったら絶対にサラを元に戻さないとね!でも協力するよ!だって私はサラのお姉ちゃんだからね!」
そこからお姉ちゃんとメグミちゃん、そして蘭子さん達で何とか私を治す方法は無いかと模索していたそうだ。
高校の時の先輩の友達、鬼頭さんやヨータさんも時折、九州に来て先輩を励ましていたらしい。
そして目を覚ましてから落ち着いた時に、先輩が私に言った。
「あの古本屋を鬼頭君が壊さないで取っておいてくれたんだよ。オーナーも、あそこにそのまま住んで良いって。だからサラ…俺は仕事するからサラはあの本屋をやらないか?バイク屋の客も常連客も皆サラを待っているよ…一緒に…住んでくれないかな?」
おばあちゃんから全部聞いた…先輩も、お姉ちゃんも私しか居ないと言っていたそうだ…ここまでしてもらって私は…
メグミちゃんが来た時に…頼んだ。
私に必要なのは…罪を認める、罪を知る事だ。
頼んだ人が来るまでに…鉛筆を借りて裏紙に絵を書いて見た。
手が動かなかった…身体の調子が悪くてではなく…いつもの頭から手の先に流れる様に湧き出て流れるイメージが何も出てこなかった。
あれだけ書いたタタロ君も、お姉ちゃんのキャラクターも、電車のキャラクターも、何もかも…絵を見ると認識はできるのに形に出来ないのだ。
手が全く反応しなかった。
思えば私の才能とは何だったんだろう…努力…それは時間と共に失われるモノ…そう考えるやはり、私の絵の才能は…始めから無かったかも知れない。
そうなると多分…作曲の才能も無いんだろう。
「なんも…ないなぁ…わたし…」
そんな事をしていると頼んでいた人が来た。
メグミちゃんと一緒に。眼鏡をかけた…本物の天使。
「アマテラス様、こちらです。申し訳ありません…ご足労を」
「メグミ…貴女と私は同じ組織ではないわ、私はそちらから抜けた人だから様は不要よ。それと私はアマテラスじゃない、イクエよ。異名で言われた方が嫌だわ。まぁネタキュンシュ通したのは正解ね、個人で来てたら断ってたし。貴女もネタキュンシュに忠誠を誓えばいいのに。
それと…こんにちは、初めましてでは…ないわね?サラちゃん…だっけ?」
「はい…今日はわざわざ…すいません…でもどうしても…知りたくて…認めたくて…」
「わざわざ…ていうのはこちらの台詞だけどね…あの時を見たいなんておかしな事を言うから…知らないなら知らないで別に良いと思うけど…まぁ禊ぎ…かしら?まぉ良いわ。さっさとやりましょう。」
「え!?あ…ちょ…あ!?」
突然、頭に乗せられた手…次の瞬間…
これは先輩の目?いや違う…先輩の横にいる人の目…だって先輩が泣いている。
そして…先輩が見ているのは…
『チュパァ…ポプラしゃん♥気持ちいいれしゅ♥腰がぁ…うごきましゅ♥』
汚い、汚らしい、汚らわしい…顔が少し変わっている…胸も少し膨らんでる…未だに少し残っている、ドラッグの後遺症、斑の模様の痣の後…その姿は私…それを先輩が見ている‥見ないでぇ…お願い…
『頭がトぶ!♥デジャインがわくぅ♥あへぇぇ』
見ているとも知らず…激しく腰を振り穴という穴から液体を垂らし、筋肉という筋肉が弛緩している…多分…私が先輩を何とかしてあげようなんて思っている時だろう…自分が憎い…殺したい…やはり死ぬべきだったのではないかとすら思う程の痴態…
「そうら!シャら!おみぇえの芸術はエクスプロージョンだ!もっとエクスプロイドしろろろ!」
よく猿のように…というが…多分…人間が一番醜く堕ちる事が出来ると思う…そう思わせる程の醜さだ…もし、裏切り行為を良しとしている人がいるなら見てみれば良い…醜さ…悍ましさを…
「わだじにはいるぅ!♥きぼぢいいい!♥しゅご!♥しゅごいぃい♥これずきぃぃい!♥」
私が壊れている…私が狂っている…私が…先輩を殺している…死ねば良いなんて甘ったれている…これで平気でいられるなんて…狂っているよ…
「う…くぅ…うあ…うぅ…サラ……サラ……アァ」
先輩が泣いている…この口の言った事。この手が伝えた事。この心が思った事。全て裏切り。
気が遠くなる、嫌でも意識が逃げる。
気付けばベッドに寝ていた…昼間だったのに夕方になっていた。
今はメグミちゃんしか居ない。
「ずっと寝てたよ…イクエさんが程々にって。私は実際に見てないから何ともいえないけどさ。あんまり自分に対して罰とかは…」
「ごめんね…ありがとう…でも、良く分かったの…私の…これから…」
ここからが…罰を受け入れる時…私の禊ぎの始まりなんだ…
―――――――――――――――――――――――
「千鶴!準備出来た!?そんなんじゃ学校遅れるよ」
「うるさいなぁ…間に合うから大丈夫だよ!行ってきまーす!」
小さい古民家の様な家で暮らす3人家族。
前面は古本屋になっているから本当に小さな一軒家だ。
私は犬山千鶴、高校1年生だ。
朝の日課、家はギリギリで出る。
何でわざと遅刻ギリギリに出るかと言うと、隣に住んでいる5歳上の鬼頭ハジメ先輩に車で送ってもらう為だ。
「ミカエ!行ってくるね!」「バウッフハフヒ」
もう少しで20歳になる老犬ミカエにも挨拶して外に出る。そして隣のバイク屋に真っ直ぐ向かう。
「せんぱーい!今日も間に合わないので送ってくださーい!」
「あら、千鶴ちゃん?ごめんね、ハジメは今日、お客様さんのバイク車検通しに行ったわ」
「えぇそんなぁ…仕方ない…今日は遅刻しちゃおう。蘭子おばさん、ごめんなさい!お騒がせしました。」
「良いのよ…それより息子がごめんね!そうだ…お茶でも飲んでく?どうせ1時間目行かないんでしょ?」
「えへへぇ…何で分かったんですか?」
「そういう所は貴方のお父さん、太郎にそっくりだからね、千鶴は(笑)」
隣の家、バイク屋にいる蘭子さん。
私には好きな先輩がいる、幼馴染で5歳年上のハジメ先輩…そして蘭子さんはハジメ先輩のお母さんだ。
私のお父さんは…この蘭子さん以外にも友人が沢山いる。
それもウチは貧乏なのに、友達には有名人やらお金持ちやらが多い…叔母のメグミさんに至っては医者だ。
蘭子さんの話だと全然アイツは友達いないけどね(笑)と、言っていたが。
そんな友達の多い父を持つ娘の私、何事もやる気が無く、クラスで虐められてもいないが、特定のグループにもいない。小学校からの付き合いの友人はいるが親友という程でも無いし、高校に入ったら余計薄い付き合いが消えた。
でもまぁ…そもそも今は、親の世代の様な虐めなんてのは殆ど無くなっている。
いや、一度だけあったな…先生に嫌われたんだ。
私のお母さんは中卒で、古本屋を営んでいる。
家事も拙くどちらかと言えばドジで天然で…だけど口うるさく「ちゃんと人の話を聞かなきゃ駄目だよ」って決まり文句の様に言う人、そして怒らない人だ。
その母に対して中学の時の担任は…
『お前の母親は犯罪者だ…皆忘れているけど俺は知っているぞ』
おかしな先生だと思った…だけどお母さんにその事を聞いたら『そうかも知れないね』と一言だけいった。
その時のお母さんの顔は今までにないぐらい辛そうな顔だったらそれ以上聞けなかった。
そして、先生にそんな事言われたよってお父さんに相談したら、その先生は次の月から来なくなった。
何かしたのか聞くと、お父さんは
『当たり前だ、同じ生徒同士なら…まぁあるのかも知れないし口出ししないが、教師がそれはないだろ』
と、一言。確かにその通りだし…私も何だか、今は聞く時じゃない気がして結局、謎のままだった
それでも気になって調べたんだ…そして私は聞いた。
お父さんと友達の一人だと思っていた有名な歌手で30半ばなのに凄く綺麗なシアラさん。
遊びにきたときに本人にこっそり聞いたら教えてくれた。
皆さんが学生時代にあった、あの噂は本当なの?って。
「本当だよ、2人共死んだとか言う私達2人に関してのネット記事の話はは無いけどね?私もサラも生きてるし。だから…別に隠してる訳じゃないけど、千鶴と私は血が繋がっているよ。でも私に似なくて良かったと思ってる…だってこの外見で良い事なんて無かったから」
シアラさんはお母さんの姉…つまり叔母にあたる人だった。
ネットの噂では…親が学生の頃…当時、歌手のシアラには妹がいて、その妹の芸名はシャカラみたいな名前の人。
シアラが人気絶頂の時に、名前からしてシアラに対抗するようにシャカラは世に出てきたが、シアラの劣化版と言われ広告の割に泣かず飛ばす、更にその年の末にアーティストと言われる人達がかなりの人数、引退や自殺で消えたという噂。
実際にかなりの数がいなくなっているがどれも原因不明。
証拠というものがないが、原因は各所属事務所の運営者であったり、力のあるアーティストだったり…そしてその一端をシャカラは担っていたらしい。
記録として残っているのはネットの胡散臭いブログやCGの様な動画のみ。
宗教団体の新兵器やら宇宙からの洗脳波、東京湾に現れた恐怖の大王とか全部、眉唾な…オカルトな内容。
ただ、新種のドラッグ説は少し本当っぽかった。
「ねぇ…蘭子さん。お母さんって何やったの?」
そして一時限目をサボった時にふと、思い出して蘭子さんに聞く。
蘭子さんの昔の事は知っている、お酒を飲んでいる時に話してくれた。
お父さんとままごとみたいな付き合いをしていた事、蘭子さんはお父さんと付き合いながら他の男の人としていた…そして、実のところ、シアラとお父さんが相思相愛だったという事。
格差で上手くいかなかったという2人、そこでお母さんが慰めて付き合った。
別に良い話で終わる筈が…
『ワタシが言うことじゃないんだけどさ…まぁ本人にも聞いてくれよ?色んな見方があるからな』
お母さんは、浮気した…本人は浮気とも思っていない様な、騙されたに近い形だったらしい。
当時、母さんもまた、人気のイラストレーターだったそうだ。
作曲活動もこなすマルチアーティスト。
そこの事務所の社長としていた、アートという
そこから先は…蘭子さんも、詳しく知らないらしい。
ただ、笑いながら言った。
「あの時の話、巷ではオカルトみたいな扱いだろ?あながちウソじゃないかもね?まぁ本人に聞いてみなよ?アイツにとって、聞かれたら伝える事が罰と禊ぎらしいから」
もう知っても良いんだろうか?聞いても良いんだろうか?
ネットで見るsyaka釈華
私はお母さんが浮気をしていたと知っても軽蔑しない、寧ろそれぐらい心があったんだと驚くだろう。
高校生になれば流石に気付く、小言を言う天然のお母さん、だけどまるでお父さんと私、自分に関わる人に、全てを捧げる様な…
いつも心が何処か遠くにいる、自分というものが多分無いだと思う。
『そっか…千鶴ももうそんな歳何だね…いつまでも子供じゃないか』
お母さんが私の目を見ながら言った、何かを決心するような。
『太郎さん…今週末、家族で海に行きましょうか?』
お父さんはいつもの様に口端だけ動かし、笑いながら言った。
『そうだね、週末は晴れるというし…せっかくだから行ってみようか』
その日はよく晴れた日だった。まだゴールデンウィークにも入っていない、丁度良い気候、潮の香りのする海に来た。
正直、この年で家族とバーベキューなんておかしな話かもしれない。
だけど鬼頭の家族と合同ではこういうイベントを行うからごく自然に3人と一匹て行った。
お母さんはスケッチブックを持っていた。
正直、お母さんが絵を描いているのを見た事が無い。
何か子供の時に書いてくれたが酷い絵だった。
元、人気イラストレーターなんて、娘の私からしたら信じられない事だ。
砂浜にシートをひいて座る、親子3人と犬一匹…お父さんはバーベキューの準備を開始した…
『太郎さん…私がご飯の準備するからその間に…この間の千鶴の質問の答えて貰って良いですか?私は客観的に見れないから。私の気持ちだけしか言えないから』
『あぁ…分かった。じゃあ交代してくれ。あの時と同じやつ作るから、分かるな?』
『えぇ、もちろん!任せて下さい、先輩(笑)』
それからお父さんは教えてくれた。
昔、心が弱かったお父さんはシアさんとお母さんの事を知り何回も死のうとした事。
友人もろくにおらず、鬼頭さんのバイク屋に入り浸っていた事。
そしてお母さんは何が何でもシアさんやメグミさんの様になろうとした、悪魔に魂を売ってでも。
『プライドが高かったんだろうなぁ…周りが凄いから、自分が何者でも無い事を認められなかった。俺も、サラも』
そしてメシアさんやメグミさん、蘭子さんとの繋がり。
『それでも、俺やサラは恵まれていた。誰一人として欠けてたら今の幸せは無かったよ』
不思議な人達の事と、助けてくれた事。
『オカルト的な噂になってるけどあれは真実だった。でも、あの時は誰しもが夢心地だったよ…なぁミカエ。今でもあの人達には御中元を送ったり新年の挨拶をしているよ。ほら千鶴も話した事あるだろ?あの変な人達。』
『くうぅーん』
豆柴のミカエを撫でながらお父さんは語る。
お父さんには言わないが、たいしてパッとしない私が一匹狼気取っても学校で虐めの標的やからかいの的にならないのはその人達のおかげだと思う。
それは私もズルい女だという証明だと思う。
例えばハジメさん。
ごっついアメリカンバイクに乗っていてその後ろに乗っていて学校まで行く。
例えばお父さんと鬼頭のおじさんの先輩…ヒロさん。
古い形のベンツに乗っていて、一度送ってもらった。
例えばその奥さんのタツさん。
何故かリヤカーをひいていて後ろに載せられて運ばれた事がある。この夫婦、いや家族は有名人だ、良い意味でも悪い意味でも。
私自身もそうやって周りを牽制して生きている卑怯者だ。
ドライと思われるかも知れないが、親といえどヒトの浮気に現在進行系ではないガタガタ言う筋合いは無いと思っている。
『お前も色々世話になってると思うけど…恩を感じるなら次の世代に返してやってくれよな。それがあの人達の願いだから。まぁハジメがな、お前の事を見ててくれるから安心だよ』
しかしお父さんはこんなもんだ、大した話じゃねーだろ?と言わんばかりの顔で調理に戻った。
でも多分、お父さんはその時の事がとうでも良いと思う…いや、そう思う事で生きる道を選んだのかなぁとふと思った。
そしてお母さんが来た。
『バーベキュー食べながらにしようか?あんまり暗い感じで話したくないし。過ぎた事だしね』
バーベキューの肉を頬張りながら聞く、母さんの懺悔。
『この可愛いミカエと一緒にね、この国を、世界を滅茶苦茶にしてやろうと思ったって言ったら信じる?』
「それは流石にどうだろう?」
『でしょ?だけど私の中では本当なの。不思議な話。だから何かの物語だと思って聞いてね?
この可愛いミカエは可愛らしい聖女、私はその手先。お互い絶対叶わない相手から大切なモノ…離れていった元の飼い主や…尊敬する姉の大切な人を奪おうとした。どんな手を使ってでも。
心を、身体を、魂を売り渡し、誘惑に負け、快楽に負け、都合の良い未来を夢見た。
その時の姿は心底醜かった。
結果的に間違いだらけ、大きな力に都合の良い様に使われていただけ。沢山の人に迷惑をかけた。
それでも私は…ギリギリ救われたの、お父さんに。』
バーベキューを少し食べた後にお母さんは急にスケッチブックに絵を描き始めた。
『その後、お父さんは私に全てを捧げてくれた。夢や明るい将来、楽しい時間。
私は目を覚ました後も心が壊れていて、たまに思い出すように悪夢を見て、人に触られるのも話しかけられるのも怖くて、だけど太郎さんに全てを捧げないといけないと思って…
一度だけね、優しくとても優しくしてくれたの。
それで貴女が出来た。奇跡的でしょ?』
下手な、子供の描いた海みたいな絵がパラリと落ちる。
それでも母さんは右手だけで器用に動かし続ける。
『それから一度も…していないの。炊事、家事、洗濯も壊滅的。お父さんは私に本屋さんの仕事を紹介してくれて…私は出来る事を精一杯やるしかなくて、千鶴は手のかからない子供だったから助かったしね。でも太郎さんが、千鶴が、皆がいたから償い続けられた。今も償い続けられる。いつか…いつか描ける様になる日まで…』
「まぁ別に良いんじゃないかな?私、お父さんと毎日やってるのって言われるより…娘としては…別に許す許さないもないし…お母さんは立派にお母さんしてると思うよ?」
凄い上から目線になってしまった…
お父さんが残ってるお母さんの手を掴んだ、私も引きずられる様に掴んだ。ミカエも寄り添った。
そうしないとお母さんが消えそうだから。
家族皆が一丸となっていた。母さんの目が潤んでいた。
『私は…馬鹿だから…ごめんって言い過ぎて…今度は言うなって言われたら…今度はありがとう…ありがとうしか…言えないの…出会ってくれて、助けてくれて、愛してくれてありがとう…とか、生まれてきてくれて、私を慕ってくれて、親と思ってくれてありがとう…としか言えないの…』
シャカシャカシャカシャカシャカシャカ…
信じられないぐらいの速度でえんぴつが動く…
鉛筆、色鉛筆、持ち替えてはシャカシャカ動く。
『お母さんはね…悔しいの…こんなに幸せな筈なのにまだ後悔している…恩を返せない、何も出来ない自分…皆が忘れてしまっているせいで責められもしない…なのに今だに大事なヒトを取られると思うと嫉妬する自分…結局死ぬまで何も出来ないこの心…手が…私はこの手が…アレ?…』
気付けば描かれていたその絵は…家族に海ときたと思うであろう思い出の1枚、そんな絵
お父さん、お母さん…私とミカエ…そして、ある筈の無いバイク…
その海の絵は技巧に富んだ、1人のアーティストの完成された、才能が迸った1枚だった。
『母さん、凄い上手いじゃん!絵を描けるんじゃん!って、え?』
母さん自身も分かっていないようだが…分かっているのは、母さんも大粒の涙を流していた事。
『千鶴にミカエ…太郎さん…それに、サヴェージ君…私は…結局誰からも叩かれず…のうのうと毎日を生きていただけなのに…』
お父さんがお母さんを後ろから抱きしめる…娘の前なんだけど…
『もう何年も…頑張ってきたんだ…千鶴も知り、世間も忘れつつある…もう、良いだろ?自分を許してやりなよ…』
気まずいから前からお母さんを抱きしめる…
でも今なら言えるな、今しか多分言えない…恥ずかしいから…
私や家族の為に全てを投げ出したお母さん…
同じく未来や夢、娯楽を捨て家族を守る事にしたお父さん
『厨二病元薬中メンヘラ母さんと激弱メンタルクソ雑魚父さん、2人共尻尾を追いかけてグルグル回る犬みたい…ってタツさんが2人の事を言ってたけど…私にとっては最高のお父さんとお母さんで、2人から生まれて良かったって思ってるよ』
『ワンワンッ!ワワンッ!』
あはは…2人共、半泣きだけど苦い顔…だけどミカエもそうだって言ってるよ…きっとね。
〜サラルート 終〜
※大変おまたせしました。この後、シアルートもあります。相変わらず着陸が胴体どころか頭から落ちながら誤字脱字が半端無いですが許して下さい!少しづつ直します!そして愛していますよ!クマシオより
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