にじゅうわ〜とうとう決意ばっかりって言われた…
眼の前でサラが、おっさんと折り重なる様にグッタリしている…白目を向いて涎をたらし、か細い幼い身体が全裸で、全身から色んな体液を垂らす。
知っているサラ…最近は奇行は目立たなくなり、服装も落ち着いて普通の女の子の様になってたな。
そしてこの半年でシアに似てきて、線は細いけど綺麗になった。
話す事も、前はこんな漫画が…とか、こんな小説が…とかしどろもどろになっていて、俺に話を合わせてこんなバイクがあるとかこんな所に行ってみたいとか…一緒にいて楽しかったな。
それに、別に最近のサラが良いわけじゃない。
昔は色んな言葉を尽くし、身振り手振りで自分を慕ってくれた、普通の、可愛い後輩だった。
俺の事を見てくれていた、先輩のこんな所が好きとか、先輩といるとこんな風に楽しいとか、俺を喜ばせてくれる可愛い後輩だった。
シアが変わったように…サラも変わっていった…
でもなぁ、サラ?これはサラの意思なのかな?
それでもドラッグは違うんじゃないかな?
心が弱いから間違えたのかな?それともこの道が正しいと思っていたのかな?
もしかして…教えてくれなかったのは…自分でも後悔しているからじゃないか?
シアは分かる、遠くにいったから。そして過去にはすぐ近く、一番近くにいたから。
お互い依存していたから。
そして、俺が弱くて距離を取ったんだ。
俺が離したんだ…才能が、存在が眩しかったから。
だからサラ、教えてくれよ…どうしてこの道を選んだのかさ…
もし、別に俺の事がどうでも良くなったのなら教えてくれよ。
いや、教えてくれなくていい。態度で示してくれれば分かるからさ。
蘭子の時も思ったんだ。後から何がしたいか分かるまで…俺なんてキープする価値はないんだから。
「この娘とは、最近会ってたのかな?」
イクエさんが、突然俺に問う。
「いえ、1か月近く…直接は会ってないです…電話とかチャットとかだけですね」
「そうか…多分、会ってたら禁断症状出てたかもね…直接あったら分かるもの、定期的に黒目がクァっとなるからね。それと多分この娘、コンタクト入れてるね」
「つまり…どういう事ですか?」
すると、突然タツさんが足で折り重なる二人を蹴り分けながら喋りはじめた。
「眼鏡は相変わらずクイズ方式でうんざりだ。つまりこの小娘は自覚してる…ドラッグを使っている事や現状を自覚してるって事だ!キマった!コレで人間間違いのミスは挽回したな!」
「挽回した訳無いじゃない…全方向を敵に回しただけね」
二人の会話は無視しつつ…でも、そっか…自覚はあるんだな…だから…隠すんだな…会わないんだな…
考えはまとまらないけど…今日の事を知った上で答えを出さないとな…
「あの…お二人には申し訳ないですが…ワガママだと思いますが…もし、お願いしたら…またサラに会わせてもらえますか?何となくですが…サラが避けた場合、多分…無理矢理会おうとしても、俺個人の力ではもう会えないんですよね…シアの時みたいに…もう違う世界に片足どころかどっぷりと入ってるんですよね…だから…」
誰かの力を借りないと…1人で立ち向かえば詰んで…心が崩壊する…だから…
するとタツさんは俺が次の一言を言う前に、フッと謎の笑いをして、腕を組み自信満々のドヤ顔しながら言った。
「あぁ、構わんぞ!そうだな、何だったらシャーに会わせてやろうか?お前は二人共会いたかったんだろう?オレなら出来る!だから今日の事は忘れろ、今すぐに!」
シャー?あぁシアに事かな…会って…あぁそうか。シアはサラのお姉さんで、ある意味この道の先駆者で、ある意味正反対の姉妹…逆に一番気持ちが分かるんだよな…。
シアと話したい、そもそも…シアに会いたかった…でもサラと違って俺は突き放したんだ…会ってくれるかな?
「シアが良いのであれば…会えるのであれば…会いたいです…会わせてくれますか?」
ウチに来たときは何故か正体隠してたしな…
「ウ厶!何せオレの弟子だからな!任せとけ!」
「弟子に出奔されまくる貴女が任せとけって…そもそもシアって子、獅子川美音の事務所に移籍して、不知火傘下になってんだから会えるに決まってるでしょ…私が言いたいのは拉致った所で、本人の意志でやってるんだからどうにも解決しないって事、分かってる?」「はぁ?」
なんか良く分からない固有名詞が出たが、俺はこの人達にお願いする事にした。
あの悪夢は俺が1人で受け入れて1人で動いた時に起こる最悪の結果、それは既に変わって来ている。
賽は投げられて、出目も変わった…もう戻れないけど…
それならそれで良い。
皆に幸せを返すと決めたあの日。
俺は確かに決めたんだ。
その為なら頭を下げる、お願いする。
だからサラ…もうちょっと待っててくれ。
関係の無い人でもお願いして、俺に出来る事をして…間違っているか知らないけど…自信を持ってサラの手を掴める様になるからさ。
もう一度、変わり果てたサラの姿を見て、また少しだけ涙が出て…頑張ろうって思った。
「太郎君、貴方はいつも泣いては決意ばっかりしてるけど結果も選択も何も出来てなくない?まぁ良いわ…私もやる事やっちゃうわね、これでも優しいクラス委員だったイクエちゃんよ…」
そういう自分でも分かってる事は言わないで欲しいし、本当に俺の思考を読んでるんですね…
―――――――――――――――――――――――
次の日の深夜…メグミとすったもんだあったが多分、タツさんが来る日だ。
部屋にいると2つの影がベランダにあった。
あの特徴的なシルエット…影だけで分かる、絶対強い…素人でも分かる…まさに強者の風格、そして圧…タツさんで間違いない。
そしてもう一人は…見た事ある…それはテレビや雑誌で、見たことあるとても格好良く、キレイな人。
スタイル良く、陸上で高校記録を出し、成績も優秀であるという噂、そして今や人気絶頂の芸能人。
俺はこの人を知っている、知っている筈だった。
確かに愛情はあった、いつも少し不安げで、だけど明るく振る舞う女の子…瞬く間にスターになり、俺の知らない何かに変わっていくのが辛かった。
その人の名はシア…子供の時からの幼馴染。
そしてカーテンを避けて部屋に入ってくる。
決意に満ちた凛々しい顔付きでこちらを見てくる翠色の眼。
その姿は、まるで映画のワンシーン
目の前にいるのは…世間の期待と尊敬を一身に浴び、様々な経験をし苦難を乗り越え、それでも揺るぎない心を持つ、自分にとって遥か遠くにいるモデルであり女優の、シアラだった。
「タロァ…久しぶり…かな?この間のアレは…フフ…ゴメンね」
この一年間でどんな経験をすればここまでかわれるのか?
舌をチロっと出して屈む、その佇まい全てが美し…「見ろよタロァマ○コ!この芸能人を用意出来るオレ、道場一のコネクションを持つ女!小僧共の流行の女を弟子に持つ、師とは弟子の全てを越える!つまり!このオレが!うお、なんだよ…」
シアがタツさんを外に押し出しながら耳打ちしている。
「お願いします!ホントに今回だけは!タロァと!タロァとの時間なので!勘弁してください!外で待ってて下さい!マジで!」
シアも…会いたがってくれていたで…良いのかな?
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