転生者大戦~ウィナー・アンド・ルーザー~

七四六明

開幕

開戦経緯

Winner vs Loser

 チームレジェンズ勝利会見会場。

「ポラリス監督。今回も安定の試合運びでしたね! 七戦七勝! 素晴らしい試合でした!」

「ありがとうございます。今回も安定した試合運びが出来て――」

 端麗な容姿のアルビノ質な女性が、淡々と記者の質問に答えていく。

 だがどの質問も、前以て用意されたものばかり。故に答えも、前以て用意していた物で事足りる。

 記者個人が勝手に用意した質問など、会社が許さないだろうけれど、それにしたって発想力が乏しいと言わざるを得ない。

 誰もかれも、何処もかしこも、同じ質問ばかり。同じ返事ばかりでつまらない。退屈の域を超えて来ない。

 それもまた、仕方ない。

 自分は勝率九割九分を誇るチームの代表で、試合を終えた彼らの代わりに雑誌記者を相手するのが、監督である自分の役割なのだから。

「最後に、次の試合に向けて一言お願いします」

「……今回と同じように、安定性を重視した試合運びが出来れば――」

「必ず勝てるって? 舐めた事言ってくれるじゃねぇか」

 記者は全員振り返り、監督ポラリスも声の方を見やる。

 記者とは思えぬ緩み切ったスーツ姿。前の座席に足を乗せて話す若い男が、何処からか奪い取って来たのだろうマイクを手に話していた。

「次の試合。うちがそう簡単に倒せると、思わないで欲しいもんだな」

「……どちら様でしょうか。チーム三国志の関係者、ではないとお見受け致しますが」

「ケッケケ! 正解! 俺ぁ、チーム三国志の人間じゃあねぇ」

「関係者じゃないなら、即刻この場から立ち去って頂きましょうか!」

 大手出版会社の記者が吠える。

 部屋に突入した警備員が取り押さえようとすると、男は猿のような身軽さでパイプ椅子の上を跳び移って、最後にはポラリスの座る席の長テーブルに跳び乗った。

 真っ二つに折れそうになるくらい歪む机の上で、男は美人で有名な女性の顔に鼻頭がくっ付きそうになるくらい自身の顔を近付ける。

「次の相手は俺達、チームルーザーだ。無戦無勝、無敗の新チームのデビュー戦。受けてくれるよな?」

「……すみませんが、未だ無名のルーキーを相手するには私達では――」

「ビビッてんのか? なぁ、ビビッてんのかって聞いてんだけど。勝率九割九分、最強の異世界転生者が集まったチームレジェンズが、無名のルーキー相手にビビってんの? 何だよ残念だなあ。チームレジェンズの監督がそんな弱気だなんて、ガッカリだぜ。じゃあこの勝負は、俺達のって事で良いよなぁ?!」

 分不相応。

 立場を弁えろと、全ての視線が威圧する。

 だが他でもないポラリス当人が、分不相応な男への視線全てを一蹴した。

「あなた、お名前は?」

南條なんじょう利人りひと。チームルーザーの監督だ」

「そう。本当はもっと段階を経て契約するものですけど、その挑戦状、受けて立ちますよ。チームレジェンズの総力を挙げて、徹底的に叩きのめしてあげますよ」

「ケッケッケ! 本物の勝者がどういう奴を言うのか、教えてやるよ! 凡々人!」

 誰も思わぬ展開に、カメラというカメラがフラッシュを焚く。

 机に乗った男が上から手を差し出し、その手を取る絶対的勝者の構図は、翌日の新聞の一面を大きく飾った。

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