ヘヴィ・メタル
高丘真介
序 1995年 ~新聞記事
八月二十一日の現地時間午後七時半頃、スウェーデン第二の都市イエテボリにて警官数十人が出動する騒ぎが発生した。場所はある中堅のライブハウスの模様。この日のヘッドライナーは〈カオス〉と呼ばれるヘヴィメタルバンドとのこと。その演奏中、観客数百人が一斉に身悶え始め、中には失神する者が出たとの通報が当局にあり今回の騒動に至る。そのうち、消息が不明となっている若者は、いずれも十代の少女や二十代の女性とのことで、人身売買組織が絡んでいる可能性もあるとして、スウェーデン警察としても慎重に調べを進めている。また、今回の若者たちの症状が、一九九〇年に東欧の数カ所で発生した金属の雨による集団中毒症状、いわゆる『ヘヴィメタル症候群』(*①)に酷似していると指摘する識者もおり、それらの関連性についても調べを進めている模様。
(*①)『ヘヴィメタル症候群』
一九九〇年、東欧の各地で、『金属の雨が降る』という前代未聞の事件が起こった。そして、雨音を聴いた周辺地域の住民たちの中の多くが身悶えて発狂し、中には失踪して、現在まで行方がわからない者もいる。そのほとんどが、十代から二十代の女性とのこと。なぜ金属が雨となり降り注いだのか、その原因は今もって不明だ。一部の関係者に、金属の雨が地面に打ち付ける連打音が、ヘヴィメタルのドラム音に似ているという指摘がなされ、その症状は『ヘヴィメタル症候群』と命名された。
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