異世界に来たようですが何も分かりません ~【買い物履歴】スキルでぼちぼち生活しています~

ぱつきんすきー

第1話 プロローグは突然に


突然仄暗い空間に集められた数十人の人間

その集団には何の統一感もなく、ただ単にランダムに選ばれた、そんな感じ

下は10代後半から、上は50代ぐらいまで、男女比は半々ぐらいだろうか


彼らの頭上には、自称「神」と名乗る存在

その形は人型なのかすらも分からない、たぶん認識阻害

その声は言語なのかすらも分からない、たぶんテレパシー

その「神」なる存在からもたらされた提案という名の命令は、集団異世界転移

『好きな能力をくれてやるから、異世界で生活せよ』ざっくりこんな感じ

行先の異世界は地球の平行世界で、魔物がいたり、魔法が存在したりするファンタジックな世界らしい


自分の周囲にいる人たちは、悲嘆にくれたり、叫んだり、ちょっとしたパニック

(急に拉致されて、危険かもしれない異世界へ行けと言われれば、普通はそうなるのかな)

(まあ、自分は今の人生にもう夢も希望も見いだせない状況だったので、渡りに船だと感じたのだが・・・)

天涯孤独とまではいかないが、生活を共にする家族もない中年男性としては、この世に何の未練もないようだった



「神」による異世界転移に伴う我々に対するご慈悲は3つあるらしい


異世界転移特典 その1

好きな能力(但し、過度なモノは調整)


異世界転移特典 その2

現在の記憶、またはスキル【インベントリ】(物質情報化管理)


異世界転移特典 その3

現在の知識、またはスキル【言語理解】(但し、人語に限る)



異世界転移特典 その1は個人の要望を聞いて調整してくれるらしい。

自分は

「現代の物品をネット通販的に何でも購入できる能力が欲しいっす!」

と、ちょっとへりくだる感じでお願いしてみました

すると、

『何でも購入できちゃうと、あっちの世界のバランス的にアウトだからダメ!』

即答だった


「ちょっと制限かけてもいいんで、何とかなりませんでしょうか!」

未知の異世界に行くのである

食べ物とか、色々不安があるので、必死になるアラフォーのオッサン

『う~ん、それじゃ、今まで購入したことがあるモノだけを通販できるようにしてあげる』

「やった! あざぁ~っす!」

こうして、【買い物履歴】なるスキルをゲットしたのであった



異世界転移特典 その2は、今の記憶か【インベントリ】の能力か、どちらかを選べということらしい

【インベントリ】とはアイテム収納のことらしく、アイテムをデータ化して保存できる能力らしい

(物質のデータ化保存だから、質量もなく時間経過もなくなるのかな?)

『その通りです』

考え事をしていたら、「神」からご丁寧なお返事をいただきました


今の記憶が異世界に引き継がれたとしても何のメリットも感じなかったため、ソッコーで【インベントリ】を選択したオッサン

(むしろ、ありがたいよ、だって記憶を消してくれるんでしょ?)

今までの人生に何ら喜びも楽しみもなかったオッサン的には、今の記憶など不要だった



異世界転移特典 その3は、今の知識か【言語理解】の能力か、どちらかを選べということらしい

【言語理解】はその名の通り、言葉を1から学習せずとも、すぐに理解できる能力らしい

これも何のためらいもなく【言語理解】を選択

(学者だとかすごい技術者だったら悩むかもだけど、フツーのオッサンの知識なんて、異世界で大して役立ちそうもないよね)

現代知識無双なんて夢のまた夢とばかりに、悩む素振りさえ見せないオッサンだった




そうこうしているうちに、自分以外の人たちも準備が整ったようだ

さすが「神」

全員に対して同時進行で作業を進めていた模様


「神」によると、集団異世界転移ではあるが、転移先はバラバラでかつランダム、とのこと

単身でどこかランダムに飛ばされる模様

つまり、転移先ですぐに周りの皆さんとチームを組むことはできないようだ

(それって、場合によっては、すぐに身の危険があるかもってこと?)


『即死レベルの危険地帯には行かぬから安心するように』

我が心の声に「神」からの返答


『一応、あちらの世界で不都合がないよう、お前たちの体を調整してから転移する』

(え? 体をいじられるの?)


『それでは皆、息災で』

その瞬間、仄暗かった視界が一変した

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