第15話 獣人族、合流?

 俺は死んでは体が燃えて、生き返っていたらしい。

 聖国との争いにそなえ、嫌がるラミに特訓してもらっていた。


「よし!ニック完璧じゃん!」


 ラミが嬉しそうに俺をなでる。

 ようやく俺は、ラミの攻撃をすべて避けることができたのだ。


「ようやくだ……。ラミは素早いから大変だった」


 ぜーぜーと息を切らす俺をいたわるラミ。

 ぎゅむっと頭を抱きとめられる。

 汗をかいているのに、いい香りがする。

 鍛えられ、引き締まった身体は、それでいて柔らかな安らぎをくれた。


「それだけ避けられたら致命傷とか、痛い思いはしないと思うよ。

 聖国の兵士は、鎧を着ているぶん動きが鈍いからね」

「よし、じゃあ次は矢の避け方と空中戦のやり方だな!

 賢者が考えてくれたんだ。俺が鍛えよう」


 空気を読まずにヴォルフがやってきた。

 ラミに抱きしめられてポヤポヤしていた俺を、ヴォルフは天国から地獄へたたき落とす。


「ニックならできるよ!頑張れ!」


 ラミもあっさりと俺を解放して、えいえいおーとこぶしを上げる。


「全力でラミと特訓したから、もう少し休ませてくれ」


 俺はそう答えるのが精いっぱいだった。





「そろそろ、聖国がくるようだ」


 朝ごはんを食べているとき、ヴォルフが鼻をひくつかせながら言い出した。


「なんで分かる?」


 俺が聞くと当たり前の顔をしてヴォルフが返事をする。


「火薬の匂いだ。まだ森のむこうだが、昨日より濃くなった」

「さすが!鼻が利くねぇ」


 ラミがお茶を飲みながら感心している。


「この数日で投石機も設置したし、家財道具の避難も終わった。

 もう迎え撃つだけだな」

「あぁ。フェニックスがいるから士気も高い。

 絶対に滅ぼされてたまるか」


 俺の言葉にヴォルフが力強くうなずいた。

 聖国の聖女による、人獣族の里を滅ぼすというお告げ。

 それに俺たちは立ち向かうのだ。


「腕がなるね!」


 ラミが胸の前でこぶしを作る。

 賢者のもとへ移動していると、何やら人だかりができていた。


「おい!人獣ども、てめぇらがお家で震えてる間に、オレらがどんだけ武勲ぶくんをたてたと思ってんだ!?」

「おかげで聖国の連中を半分くらい潰してやったぜ!」


 ガッハッハと豪快に笑いながら、人の姿にケモミミがついた獣人族が、人獣族に絡んでいる。


「あーはいはい。助かってるよ。さすが大陸一勇ましい種族だ」


 ヴォルフが近づいて適当にいなす。

 他の人獣族の態度もみていると、同じような感じなのでいつものことらしい。


「だろ?」

「やっぱすげぇんだぜ、オレたちって、うぇぇぇ!」


 調子に乗っていた獣人族だが、俺を見ていきなり叫んだ。


「お前……!フェニックスじゃないか!」

「まさか本当にいたとは!」

「なんだよ、人獣族ばっかりいい思いをしやがって!」


 口々に、獣人族が話し出す。


「賢者が知らせを出していただろう。長に聞かなかったか?」


 ヴォルフが腕組みをして答えた。

 ヴォルフは賢者の右腕として働いている。

 人獣族のなかでは結構偉いやつだった。


「うーん、聞いたような?」

「聞かなかったような?」


 すっとぼける獣人族たち。


「なんか、ノリがウビと一緒だ」

「わかるっ!」


 俺のボヤキにラミが力強く同意した。


「誇り高き獣人族よ。よくぞ来てくれた」


 賢者が獣人族を出迎える。


「ここからは我ら人獣族もともに戦おう。後方支援は任せてくれ」

「さすが賢者。よく分かっているじゃないか」


 大きな身体の、ひと目で獣人族のボスだとわかる人物が、賢者とむかい合う。


「ここはお前たちのナワバリだ。お前たちが戦い、守るのは当然。

 だがこれは俺たちが先に売られたケンカだ。

 俺たちの顔を汚すなよ?」

「わかっているよ」


 獣人族のボスの言葉に、賢者はうなずいた。

 次に獣人族のボスは俺をみた。


「フェニックス、お前もだ。

 偉大な炎の王よ、下っ端の争いにみすみす首をつっこむなよ?」

「わかった」


 聖刻との戦いに参加するなと、釘を差されてしまった。

 ラミが、いまにも獣人族のボスを殴りかかろうとしているが、人獣族が羽交い締めにして止めている。

 ヴォルフが俺の背中を軽く叩く。

 俺が見ると、ヴォルフは何も言わずにうなずいた。


「話がわかる奴らで助かった。

 聖国と人獣族、同時に相手するのは俺たちでも、さすがに手間だ」


 以前、ヴォルフが言っていた、“獣人は人の身体にけものの心をもつ”の意味がわかった気がした。

 自分たちに歯向かうものはみんな倒すという雰囲気。

 とにかく好戦的なのだ。


「疲れただろう?食事を用意しているよ。

 あまり採集に行けなくなったから粗末なものだけどねぇ」


 賢者が獣人族を案内する。

 俺たちはようやく一息ついた。


「なにあれ!エラそうにニックに指図するんじゃないよ!」


 まだ羽交い締めされているラミがほえた。


「まあまあ。

 しばらく勝手にさせて、獣人族が聖国を撤退させられたらラッキー、ダメだったら俺たちの出番。

 いつものことだ」


 ヴォルフがラミに苦笑しつつ補足した。


「あの獣人族のボス、めっちゃ俺をにらんてきた」

「力を計りかねているんだろう。

 強いやつにしたがうのが獣人族のルールだからな」

「じゃあ、ニックがかっこよく聖国をやっつけたらいいじゃん!」

「ヴォルフの方法がいいと思う。

 2つの種族を相手にするんだ、聖国も援軍がくるだろう」

「つまんない!ニックは本当にすごいのに……もったいない!」


 嘆くラミを落ち着かせつつ、獣人族とのファーストコンタクトは終了した。


 ◆◆◆

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