第14話 九秘の真言

「 柳 瑛 瑶 」は部屋の 床 にあぐらをかいた。 彼女 の 前 には 三 つの 品物 が置かれていた。 黒い 剣 の生地、『 天 欠け』の 残 頁 、そして『 太初 』の 半 巻 。「このページは欠けている。あの 時 、あの 地底 洞窟 の 中 でざっと読んだ」

「いくつかの 法術 を 除け ば、 一方 には 元 嬰 期の 功法 が 一 篇 、もう 一方 には 結 丹 期の 功法 が 半 篇 記さ れている」

「 太初 は 筑 基期から 結 丹 期までの 二 つの 境地 の 功法 を 記し ている」

「この 二 つの 功法 をつなぎ合わせると、ちょうど 完成 していて、それが・・・」

「そんなことがあるのか」

両部 の欠けた 功法 を 寄せ集め て、 本当 に 修練 できるものか。しかも 道 と魔を 同時 に 修練 した 者 はこの世に 一人 もおらず、 柳 瑛 瑶 は 咄嗟 に 決断 できなかった。

「 分 魂 種 体 の 術 は、 結 丹 期の 法力 がなければ 使え ません。 今 の 私 の 法力 で 支え られるかどうかはわかりません。」

「 結 丹 の 時 まで待てば、 申年 馬 月 の 事 は 分り ません」

「下手に 動け ば 命 を落とすかもしれないが・・・」

柳 瑛 瑶 は立ち上がって 窓辺 に行ってそれを押しのけた。 窓 の 外 では 徐々 に 風 が吹き 始め 、孤 蝉 がしきりに鳴いていた。カエデの 花 が 一 輪 、 梢 から 池 に落ちて さざ波 を立てている。

分 魂 を 考え て、「 柳 瑛 瑶 」は 思わ ずこの 体 の 元 の 持ち主 を 思い出し た。

「あのときは 洞窟 の 中 で 考え ていましたが、いまになって 考え てみると 問題 だらけです」

「あの 二人 が、 数千 年 のあいだ、 法 陣 を 制圧 しても生きていたとは、その 境地 の 高 さは 察する に 余り ある、 凡人 の 魂 を 温存 するのにどれほどの 苦労 があったか。」

そう 思う と、 深い 荒々し さが 胸 にこみ上げてくる。

「 万 炎 め、おれは 水霊 根をもっている、この 同じ 水霊 根をもった 女 の 中 にしか 融合 できない、といっているが、それが 本当 かどうかはわからない」

「いつか 機会 があれば、わしのからだを 調べ てみてくれ、それが 噓 であったならば、わしの 恨み は晴らせまい」

『 柳 瑛 瑶 』は 指 を 握っ てぱちぱちと 音 を立てて、 長い 間 恨ん で、 深く 息 を吸ってやっと 心 の 中 の 怒り を 抑え て 下 に 抑え ます。それから 天 欠 頁 を 物入れ にしまい、 太初 を取り上げて 悟り を 開い た。

月 が 西 に 傾く まで、ゆっくりと目を開けた。

「なるほど、 太初 は 奥深い 」

「まだ 前半 だけだし、 錬 気期の 経 引 もないし、 雲散 霧散 だ」

考え込ん でいた 柳 瑛 瑶 は、 先日 自分 がある 山奥 で、 一人 の 道士 の 説教 を聞いた 時 のことを 思い出し た。

「世は 万 道 、 道 は 共 に 帰し 、 道 は 簡 に 至る と聞いたことがある」

「決めたからには、 案内 されなくてもやってみる!」

数 日間 の 苦労 を経て、 柳 瑛 瑶 は 筑 基 編 を 一応 理解 した。

全 篇 の 功法 は 主に 筑 基期の 修練 の 法門 、 本 命法 宝 の 練 練 の 方式 、そして 九 秘 真言 決 を説きます。

「 九 秘 真言 決 といっても、 筑 基 編 には『 霊 』と『ダーツ』の二字しか出てこない」

柳 瑛 瑶 はこわばった四肢を伸ばし、 唸る ような 顔 で部屋の 中 を 歩き回っ た。

「 霊 、ダーツ?」

「もしかして、九字 真言 !」

「しかし、九字 真言 ならば、その『 霊 とダーツ』とは 何 か」

彼女 は 首 を 横 に振った。

「この 九 秘 真言 決 が 道家 の九字 真言 と 関係 があるかどうかは、 今 の 私 の 関心 事ではありません」

心 の 雑念 を捨てて、「 柳 瑛 瑶 」は 経文 に 浸り 続け た。

あぐらをかいて、 両手 を 膝 の 上 にのせ、 手の甲 を 膝 にあて、 両掌 を 上 にして、 二 つの 印 訣 をつまんでいる。

功 を 奏し た「 柳 瑛 瑶 」は、 自分 の 中 の 全身 の 法力 が、引きずられた 竜 のように、 全身 の 経脈 の 中 を 動き回り ながら、ついには 丹田 の位置に 沈ん でいく。

錬 気期の 法力 は 体内 の 経絡 に 散在 するが、 筑 基期からは 体内 の 周囲 に 散在 する 法力 が 丹田 に 集まる 。

このとき 功法 の善し悪しが 表れる が、 普通 あるいは 低級 の 功法 であれば、 全身 の 法力 の 半分 が 丹田 に 集まる だけで 容易 ではなく、あとは 勝手 に散ってしまう。

高階 、ひいては 頂 階 功法 は、 錬 気期に得た 法力 をほぼ 完全 に 丹田 の 中 に 収める ことができ、 将来 の 法力 が丹になり、ひいては 階 元 嬰 になるための基礎を 筑 くことができる。

「身の 法力 を 丹田 に 納め 、いよいよ 筑 基期に 入っ た」

内視 修練 中 の「 柳 瑛 瑶 」の 体表 は 水色 に 点滅 し、 波 が 岸 に打ち寄せる 音 が絶えない。

そのころ、 天極 宗 の 裏山 の 一 禁 地に、

裴 鴻 涛 は、 小さな 聚 霊 法 陣 の 中 に、 厳粛 な 顔 をして 坐っ ていたが、聚 霊 法 陣 の 法 には、さらに 大きな 奇異な 陣 法 があって、まるで 陣中 の 陣 であった。

百里 文 濱 は、 法 陣 の 外 から、 緊張 したように 裴 鴻 涛 を見ていたが、「 兄弟 子、よく 考え たな」

「 司祭 、 数 年 前 に 太上 長老 が 坐り ましたが、 今 、 私 はせいぜいあと 二百 余 年 で 後塵 を 拝する ことになりました。 今 、 烈 陽 宗 は 一歩 一歩 追いつめられています。 私 はこのように 真剣 に 構え なければなりません」

「わが 天極 宗 の 千 年 の 基業 を、わが手に 落し てはならぬ」

「 先輩 、 俺 は・・・」

裴 鴻 涛 は 溜息 をついて、「 弟 よ、もし 私 が 失敗 したら、 宗門 の 諸 境地 の弟子の 中 から 一群 の 人 を 選ん で、 僻地 を 探し て、 休 生して 息 を 養え 。」

説得 しても無駄だと知り、やむなく 外郭 の 周天 困 魔 大 陣 を起 働 させる。

「 諸宗 の御 先祖 様 がお在りになりましたが、 今 、我が 天 の 極 宗 を 強敵 に 見廻さ れて、 薄氷 を踏むような日々を 送っ ております」

「 今 の弟子は 喜ん で魔の 道 に墜ちて、ただ 私 の 天極 宗 の 一縷 の 生気 を 求める ためです!」

大 陣 が 動く にしたがって、 霊 脈 の 中 にあるはずの 禁 地、聚 霊 法 陣 の 働き でさらに 霊気 が 暴騰 する。

気の 密度 が 液化 寸前 に 達し たところで、 裴 鴻 涛 はただちに 天極 宗 の 極秘 功法 『 混沌 青 冥 経 』を 運転 した。

「ご 先祖 様 のご庇護を」

四方 の 霊力 は絶えず 裴 鴻 涛 の 体内 に 向っ て 集まっ て行く 同時 に、 彼 は 更に あの2 粒 の魔の気の 充満 する 晶 石 を取り出して、 彼 が 秘法 で2 粒 の 晶 石 を 打ち砕い て、なんとその 中 の魔の気を 自分 の 体内 に 吸入 するのです!

裴 鴻 涛 の 体 の 中 には、 正 魔の 二 つの 息 が、絶え間なく衝き、その眼は、 時 に 緋色 に、 時 に 清明 に。

裴 鴻 涛 の 停滞 して 進ま ない 修為 の 境界 は 意外 にも 少し の 緩み が 現れ 始め て、とっくに 存在 している 長年 のボトルネック、 今 はまるで 糸 を引いて 繭 をはねるように 次第 に消えて、その 修為 は 意外 にも 化 神 期に向かっています!

「 域外 の魔は、おれを 欺し てはいない。この 正 魔の 激突 が、 本当 に 功 を 奏し たのか!」

ボトルネックが 完全 に消えた 刹那 、なんと 裴 鴻 涛 は 心 魔 幻 境 に 陥っ た!

眉間 に 汗 を 流し 、 誇らし げになったり、 苦し そうになったり、 大笑い したり、泣きべそをかいたりしている。

一方 、 竹林 別院 内 。

太初 の 功法 を 周天 を終えた「 柳 瑛 瑶 」は、 自分 の 体内 を 内視 している。

「なぜ 丹田 に溜まる 法力 が、 池 ほどしかないのか!」

『 柳 瑛 瑶 』は 全身 の 法力 を 働かし てみたが、 明らか に 自分 の 法力 は 以前 よりもずっと 強く 、 太く なっている。

「 圧縮 されているのかもしれない」

法力 が 衰え ていないことに 安堵 した『 柳 瑛 瑶 』は、それが終わると、 黒い 奇異な 剣 の 塊 を手に取った。

剣 から 伝わっ てくる 奇妙 な 親近 感 を、 柳 瑛 瑶 は 少し も 驚か なかった。

「その日、 何 の気なしに、この 剣 胚 を、 本 命法 のようなものにしてしまったのです。いいのか 悪い のか」

「しかし 今 は、それをもう 一 度、 精錬 しよう」

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