朝日で火傷をするのです
あなたを見ていると惨めになってくる。
私には到底なれやしないのだと、あなたに思い知らされる。あなたにはそんな気がなくとも、いや、そんな気ないから私はこんなに惨めなのだ。
私が欲しいものは手に入らないが、あなたは手に入る。まるでそうなるべくして世界が作られているかのように、あなたは全てがうまくいく。
いつだかあなたは私を天才と言った。そして自分を凡人と言った。私もそう振る舞った。あなたは凡人だった。しかし凡人のくせになんてあなたは眩しいのだろうか。腹が立ったんです。決して手の届かない凡人でした。
私に笑いかけるあなたを見ると、憎くて、妬ましくて、どうしようもなくなった。胸のあたりからモゾモゾと、小さな幼虫たちが蠢いて、ざわめいて、掻きむしりたくなるような、気持ちになった。どうしてこんなに腹が立つのか、考えたくありません。
あなたは私を才能で満たされていると考えたけれども、何よりもその才能というものこそが張りぼてなのですよ。私だけじゃない、全ての者の才能は張りぼてなのだ。張子の虎だ。だからそれで満たされていたって、なんにも、はじまりやしない。
地に足がつかない。吹けば飛ばされてしまう。凡人のあなたはきちんと足がつくんだね、腹が立つ、煮え繰り返る。
ままならないとは、こういうことか。持ち主にさえ制御できないこのからだの、不便さ。憎い。それでも、世界が味方するあなたに、与えられた役割に、すがって生きるしかない。それが、私の全てなのだ。
厚顔無恥も甚だしく、この愚かさでもって、生き抜けばこそ、凡人も眩しがる天才にならまいか、と祈りつつ、願いつつ、ああそれでも、今からでも私は凡人になれないものか。
やっぱり、私はそちら側へ、行きたい。西のどこか遠いところにあるという、極楽浄土、それはそちらです。今泳いで、そちらへ、向かいます。さあ、今、今こそ、私はこのからだを脱ぎ捨てて、ああ、ああ、くそ、この野郎、溶ける、からだが、とけていく。溶けたら私には何もない、脱ぎ捨てたら、何も残らない。
はじめから知っていました。気まぐれに言ってみただけです。だからもうやめて。あなたは眩しいんだよ。目が潰れる。私を惨めにさせて、さらにはこの目まで潰そうってのか。なんて傲慢なんだ、傲慢で無神経で、それでいてどこまでも善人なのが、苦しい。
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