第9話……ブタの惑星

 ちゅんちゅん♪

 ――雀たちの声で起きる。



 私がすむアパートの裏側は畑だ。

 ここの大家さんは農家なのだ。

 ウチは小さな畑に付属する、更に小さなボロアパートといった具合だった。



 『惑星リーリヤには先住民がいます』

 これは大きな難問だった。


――ゲームの世界じゃないか?


 そういった意見もある。

 しかし私がお金を貰えるのは、今がゲームの中の住人でもあるからだ。

 なんでもリセットできるという発想は好きじゃない。



 近所の本屋に行き、先住民に関する逸話を買ってみた。

 碌な話じゃない。

 読む気が失せて、投げてしまった。


――こういうときに、ふと思う。

 有名な英雄や偉人なんて、本当に立派な人だったのかと……。




☆★☆★☆


 それから数日、小惑星破壊の仕事をしながら惑星リーリヤのデータを集めた。



 惑星リーリヤ。緑と水に恵まれた惑星。

 住民は二足歩行型のブタ民族。

 科学文明レベルは低く、我々の世界の中世レベルといったくらい。

 人口はかなり多め。


 この星を実質的に統治するのは、蛮王ブルー。カリバーン帝国に所属。しかし、条件次第でカリバーン帝国に敵対する勢力に寝返る者は多いと聞く。


 実際はおいといて、形式的な統治者はころころと変わっている。少し前まではシェリオ伯爵だった。彼らは皆、統治者としての支配に失敗していた。



 ……で、現在の統治者は私という訳だ。

 多分これは不良債権だな……。

 惑星権利書を眺め呟いてみた。



 結局というもの、惑星リーリヤに降下してみることにした。

 考えても分からない、といった境地になったからだ。


 大気圏に突入後、雲の隙間から海辺に大きなお城が見えた。石造りの城下町も見える。

 地図データ通りなら、蛮王様の居城だ。


 彼等を驚かせないように遠くに着水し、夜間に港湾施設に入った。

 木造の船もあるし、近代的な風貌の船もある不思議な港だった。



 しばらくすると、港湾内で小さなタグボートが近づいてきた。

 レトロな感じのする外輪船だった。



「いつまで停泊ですか?」


 その船を操る恰幅の良いブタに聞かれる。ちなみに今の私の姿は一つ目の巨人族だ。



「3日くらいかなぁ?」


「では、大型艦3日で400帝国ドル頂きます」


 港湾停泊料としてお金を支払った。

 ハンニバルと私はそのタグボートに曳かれ港湾の奥に進んだ。

 ちなみに1帝国ドルは100円位だ。露天係留なので安いのか高いのか分からないが……。



 その日は宿に泊まり、翌朝に蛮王様に会いに行くことにした。




――翌朝


 ここにはタクシーが存在しなかった。

 自動車があると言っても、石炭を燃料にしているようなレトロなものしか走っていない。


 しかたなく乗合馬車を利用して、官庁街まで出向く。

 しかし、石畳だとお尻が痛いね……。



 その後、それらしき役所に入った。

 追い返されるかと思ったが、惑星の支配権の件と伝えるとすんなり通った。


 ……彼らにとっても形式的な支配権が懸案事項なのだろう。



 その後、役人に案内されて、まさに玉座の間といったところに案内された。




☆★☆★☆


「ようこそ、よそ者!」



 列席する家臣の上座に座る意外とフレンドリーなブタがいた。

 このブタこそ蛮王ブルーだった。


――一通り挨拶がすむと、彼から要件を述べてきた。



「この惑星の支配権の正統性についての話だとか?」


「はい、ですがその前にコチラをどうぞ」


 私はトランクを開け、過剰包装された品を献上した。





 ……酒だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る