第15話

 あの後、俺と未来みらいは帰路を辿っていた。本来なら光輝いた遊園地を回りたかったが、父親が門限に厳しくて大学生になってから来ようと約束した。


 手を繋ぎ、共に最寄り駅までの道のりを歩く。


 今回も未来みらいは楽しそうにしてたし、俺からキスもできた。満足のいくデートで本当によかった。


「ねぇ、トモ君。今回はありがと。今回のデートプランもだし、最後のキスだって……。いつもは私から始めてたからさ」

「この前のお泊りには俺からやろうとしたんだけどな」

「知ってる。けど、ちょっと不安だったんだ。いつも私からだから愛が重いのかなぁとか、もう私のこと……冷めちゃったのかなぁ……とか……」


 気付けば未来みらいの声が震えていた。


「あれ、なんでだろ……あはは……。今日のこと思い出したらさ、楽しくて、安心して、嬉しくて……ごめんね。涙なんて流す予定なかった……のに」

未来みらい!」


 俺は未来みらいを正面から抱きしめる。未来みらいも腕を俺に回し顔を埋めた。


 優しくその頭を撫でる。


「ごめん、ずっと独りで悩ませてたんだな。ほんとごめん」

「違うの、トモ君は何も悪くない。勝手に私が悩んでただけなんだから」

「それでも、不安にさせたのは俺だ。大丈夫、俺はずっと未来みらいが好きだしこれからも傍にいるから」


 ほんと、彼女を不安にさせるなんて彼氏失格だ。


 何か言葉をかけようとして──思わず言葉を飲み込んだ。


 目の前から歩道を無視して車が突っ込んできていた。横に動く気も停止する素振りも見せない。


 これが『予知夢』の再現なのか? このままだと俺と未来みらいが……


 夢での痛みを思い出し体が強張る。逃げようにも足が震えて動かない。


 あんな苦しみは二度とごめんだ。


 ――動け、動け、動け!


 必死に訴えかけるが足が動く気配を感じない。死が怖くなり腕に力が加わる。そこで腕の中に未来みらいがいることを思い出した。


 もし、このまま俺が動けなかったら未来みらいはどうなるんだ?


 脳裏に過るのは倒れている未来みらい。俺はこのまま『予知夢』に抗えず未来みらいを殺してしまうのか?


 違う! 今度こそ抗うと決めただろ!


 ──助けろ、なんとしても未来みらいを助けるんだ。『予知夢』の好きにさせてたまるか。


 徐々に近づいてくる車、何か違和感を覚えたのか未来みらいが顔を上げる。


 俺は未来みらいを安心させるために微笑んだ。


「――ごめん」


 約束……守れそうにないかも。


 俺は思い切り未来みらいを横に突き飛ばした。

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