第一話 ⑤ ~努力が身を結んだ瞬間と新しい決意~
第一話 ⑤
ゆっくりと湯船に浸かるとバイトで溜まった疲れと、今日の告白での緊張がゆっくりと溶け出て行くような気がした。
「告白……成功したんだよなぁ……」
あの藤崎朱里が俺の彼女。なんか夢みたいだけど、夢じゃないんだよな。
「頑張って良かった……」
一年前はひょろひょろだった腕も少しは太くなり、うっすらとだが腹筋も割れてきた。
最初は1キロも走れなかったランニングも今では5キロ程は走れるようになった。
親が買ってきた服を着るだけの人間だったが、ファッション雑誌を片手にマネキン買いを繰り返しながら、センスを磨いた。
髪型や身だしなみにも気を使い、清潔感のある状態をしっかりと保てるようにもした。
外見に少しだけ自信が持てるようになると、苦手だった人付き合いも出来るようになってきた。
どもってぼかりだった言葉も、相手にしっかりと伝わる発音で言えるように努力した。
全部、全部、全部。
彼女告白するに値するような自分になるために。
告白ハラスメント
という言葉を聞いたことがある。
脈も無いのに告白してくる奴に使うらしい。
せめて、そんな風には言われないように、あいつの分際で告白するなんて生意気だ。
なんて言われないように。
半年間努力してきた。
「……よし」
司さんも言ってたけど、ここがゴールじゃない。スタートラインなんだ。
これからは、藤崎朱里の隣に立つに相応しい自分にならないといけない。
魅力的な彼女に恥じない自分でなければならない。
でなければ、彼女に恥をかかせてしまう。
そんなのは絶対に嫌だ。
頭を洗い、身体を洗い、もう一度湯船に浸かる。
明日から春休み。
いつもよりトレーニングは増やしていこう。
勉強は比較的得意だが、宿題も計画的に終わらせて、彼女とデート出来る機会を減らさないようにしよう。
バイト代は洋服とガチャとラノベと漫画と……いや、ガチャは少し控え……られるかなぁ……
あんまりバイト増やしても彼女との時間が減ったら元も子もない。
よし、無駄遣いはなるべく減らす方向で!!
俺は湯船出ると、身体をしっかり拭き、日課にしてる風呂上がりの柔軟と体幹トレーニングを行い、程よい疲れを感じながらベッドへと潜り込む。
明日からまたしっかり頑張っていこう。
気持ちを新たにした俺は、ゆっくりと目を閉じ夢の中へと旅立っていった。
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