第9話
それでは、ランクについて説明します。」
ギルドから転移してきた闘技場の客席でネロはランクとランクテストについて説明を
受けていた。長かったので要約すると、
・ランクとは冒険者の強さを表わす指標で、弱い順から、
F→F+→E→E+→D→D+→C→C+→B→B+→A→A+S→S+SS→SS+。人数比は、Cまでがおよそ七割で、Bが残りの二割、Aが一割強、Sは一厘にも満たない。なのでB以上になると、ギルド運営の宿の無料制度などのいろいろな福利厚生が受けられるそう。
・ランクテストとは、闘技場においてある魔獣の召喚の魔術が刻まれた石板によって、さまざまな強さの魔物(魔物も人間と同じ区分によって分類されているらしい。)を呼び出し、それを倒せるか、というテスト方法で、Bまで続けて受けられる。
・Aからの昇格は、倒した魔物の素材、ギルド本部の身で受けられるランクテスト、ギルド長(ランクA以上が大半)との模擬戦闘であげられる。
ここまで説明を受けたうえで、一つ、大事なことを伝えられた。
「ネロさん、ランクテストは危険も伴います。そもそも冒険者自体も命の危険が伴います。私自身も、命を落とした冒険者の方を見ています。本当にやるんですね?」
かなり真剣な表情で、そう問われたネロ。しかし、彼の答えは決まっていた。
「そりゃあ、やりますよ。警察いかれるの嫌なので。」
まさかの理由。受付のお姉さんは一瞬は?という顔をして、旧を見て、そして、アスを見る。見る見るうちにその顔が真っ赤に染まり・・・アスの方へ駆け寄り、アスのこめかみを笑顔でぐりぐりし始めた。
「痛い、痛いっしゅ!カタリナさんいきなり何をするんすか!?」
いきなりこめかみのところをぐりぐりされ、痛そうに叫ぶアス。受付のお姉さんは笑顔を崩さないまま、
「いきなり何をするんすか!?じゃないわよ!カツアゲはやめなさいって言ったでしょう!?」
と叫ぶ。どうやら、常習犯だったらしい。それより、かなり痛いのか、アスの尻尾がびくびくし始める。このまま放っておいてもいいのだが、さすがにかわいそうなので助けに入るネロ。
「すみません、もう気にしてないので、大丈夫です・・・」
実はかなりの絶望っぷりだったのだが、まあそこは置いていおいて、まずひとまず助けに入ったネロ。すると受付のお姉さんはグリグリするのをやめ、こちらの方を向いて、
「あの、アスに無理やりやらされるようだったらやらなくてもいいですからね・・・?こちらも死人を出したくないですし。」
気を使われたようだが、それでもネロの答えは変わらなかった。
「いや~。やりますよ。ここまで来たら。カードも作っちゃいましたし、なにしろせっかく異世kゴホンゴホン」
危うく異世界と言いかけ、全力でごまかすネロ。そんな彼を心配そうに見つめながら受付のお姉さんは、
「やる、で大丈夫ですよね?」
と聞いてくる。それに「やります」とネロが答えたのを見て、受付のお姉さんは、ピシッと姿勢を正し、最後のルール説明をはじめた。
「じゃあ、最後に、ルール説明をさせていただきます。基本武器の持ち込みはOK、強固な障壁が貼ってありますので、観客には被害が及ぶ心配はございません。テストを始めるときは左手を、やめるときは両手で×印を作ってください。そして、いま話に出てきた通り、観客がいます。観客たちは、自分たちのパーティーへの勧誘や、娯楽といった目的で観戦していますが、あなたの身が危なくなったとき救助してくれることもあります。そこのところも加味して、テストをお受けください。それでは、頑張ってきてください!」
そう説明を聞き終わり、準備を始めるネロ。インベントリからしまって大鎌を取り出し、肩に担ぐ。それで準備が終わったので、「もう終わったので始めてください~」と受付のお姉さんに声をかけると、何かを起動して、バリアのようなものの外へ出て行った。と、同時に、
「これから、スキルテストを始めさせていただきます。まずは、Fランクのテストから始めます。Fランクの課題は、ゴブリン5体です。それでは、はじめ!」
そう声がして、前からゴブリン5体が襲い掛かってくる。
『いや、雑魚じゃね?ちょっと【神魔の魔導書】使ってみるか~。』
「【ファイアーボール】ッ!」
と、前に火球を生み出し、ゴブリンに向けて連射する。すると、着弾地点で爆発が起き、あたりに砂埃が立ち込める。砂埃が晴れた後に残っていたのは、ガラス化した床と、ほぼ消し飛ばされたゴブリンの死体だけだった。途端にざわつく観客席。
「おい、なんだあいつ!無詠唱の挙句、連射だと!?」
「ほぼゴブリンのこってねぇじゃねーか!なんだあの威力・・・」
「あれ?【ファイアーボール】って中級魔法じゃなかったっけ?ゴブリン炭化してるんだけど…」
そんな感じで観客がざわざわしている中、アスは青ざめ、受付のお姉さんは平常心。営業スマイルを絶やしていなかった。そして———続きが始まる。
「対象の死亡を確認しました。さらに無詠唱での魔法の発動を確認したため、次のテストはCランクからの開始となります。Cランクの課題は、ハイ・オーク一頭です。それでは、始め!」
そう受付のお姉さんがそう叫ぶと同時、目の前にネロの身の丈の三倍ほどの巨体を持った醜悪な豚の面をした魔物が現れる。
『うわぁ・・・キモ・・・・』
感想がもろに出るほどキモイ。これはさっさと殺さなきゃアカン、と決意を決めたネロ
はまた「【ファイアーボール】ッ!」と心なしか強めに叫び、自分の体ほどまでに火球を肥大化させると、それをオークに向けて解き放った———刹那、ドンッと轟音がして、閃光とともに空気が爆ぜた。
閃光が収まり、観客たちが見たのは・・・目を血走らせたネロと・・・巨大なクレーター、それに灰と化したハイ・オークだった。どよめく観客たち。
「なんだ、ありゃぁ・・・」
「もう、人間じゃなくない?なんだよ!俺たちのパーティー全員でかかっても勝てるかどうか分からないようなハイ・オークだぞ!?」
「てか、あいつの背負ってるヤバそうな大鎌って飾りなん?一回も使わないけど・・・。」
「こいつ、実力明らかにB以上だよな?もうやる必要なくね?
そんな感じでざわつく観客。もはや全員何が起こっても驚かないぞという雰囲気まで漂い始める始末。全員ネロの化け物ぶりに圧倒されているのだ。アスは頭を抱え、受付のお姉さんは青ざめていた。そして、最後の———Bランクの試験が始まる。
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