二人で食べるご飯【拓夢】

「あっ、ご飯炊いてなかった」


「俺は、いらないよ。餃子だし」


凛の言葉に俺は、そう言った。


「だよね。炭水化物だもんね」


「そうだな。太るのは、プロとしてね」


俺の言葉に凛は、「そうだよね」って言いながら頷いていた。


「入れ替わったりしたりする映画あっただろ?」


俺の突然の言葉に凛は不思議そうな顔をしてる。パチパチと蓋を閉めたフライパンが音を立てている。


「入れ替わったり出来るなら、俺、そっちがよかったな」


意味わからない言葉を呟いた俺を凛は見ていた。


「ごめん、ごめん。ちょっと疲れてるわ」


そう言って、俺は笑った。


「結婚したっていい事なんかないよ。私は、拓夢と一緒になっても変わらないよ」


そう言って、凛はフライパンの方を見て蓋を開けた。


「赤ちゃんが欲しいから?」


「そうだね」


凛は、お皿を取って焼けた餃子をお皿にうつしている。


「サラダとかお味噌汁とか…」


「いいよ!餃子とビールで」


俺は、そう言って餃子を持って行く。


「怒ってる?」


凛は、そう言ってお箸とタレを作って持ってきてくれた。


「別に…」


俺は、キッチンに行って冷蔵庫からビールとグラスを取って戻ってきた。本当は、少しだけ怒っていた。嘘でも最後ぐらい。拓夢といたら違ったかもと言われたかったみたいだった。


「食べよう。冷めちゃうから…」


「うん」


俺は、二つのグラスにビールを注いだ。凛に一つ差し出した。


「ありがとう」


「うん」


「違うって言えたらよかったね」


そう言って、凛は乾杯しようと言うようにグラスを差し出してくる。


「拓夢となら、違う未来があるって思えたら幸せだったのにね」


カチンとグラスが重なる音が俺の代わりに返事をしていた。


「でもね、私が望む以上は、違う未来は選べないんだよね。だからって、私の体がかわるわけじゃないから…。私の体は、このままでしょ?だったら、変わらないんだと思うの。拓夢といても、私はまた別の誰かを見つけるよ」


「そんなのわかってるよ。俺と居たら、凛は平田さんを選ぶんだろ?」


俺の言葉に凛は、驚いた顔をする。


「そうだね。そうなのかもね…」


そう言った後、凛は「いただきます」と言って餃子を食べ始めた。


「いただきます」


俺も、そう言って餃子を食べた。


「うまい」


「よかった」


凛との時間が短くてもいいと思っていたのに…。また、こうやって会えると俺は欲しがってしまう。


「拓夢は、今、忙しいんだよね」


「うん」


凛が話を変えてくれた。


「楽しい?仕事」


「楽しくなかったら、絶対投げ出してるよ」


「ハハハ、それだけハードなんだね」


「そうそう」


そう言って、俺は凛に笑って答えていた。


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