まだ、いるなら【拓夢】
「わかりました。相沢さん、皆月さん夫婦がまだいるなら、俺」
相沢さんは、俺の顔を見て首を横に振った。
「どうしてですか?」
「もう、星村君は芸能人になったんだよ!皆月さん夫婦に迷惑をかけちゃ駄目だ!お礼なら、俺から伝えておくから」
そう言われて、俺は心底がっかりした「はい」を出していた。
「SNOWROSE、これから忙しくなるから、覚悟しときな!じゃあ、相沢さん帰るわ」
「お疲れ様」
「お疲れ様です」
ジュンさんが、部屋を出て行った。
「失礼しました」
俺は、他の皆さんに頭を下げた。
「頑張ってね!拓夢」
「はい、ありがとうございます」
はやてさんの言葉に俺は深々と頭を下げて部屋を後にした。
「拓夢、お疲れ」
まっつんが待っていてくれた。
「しゅんとかねやんは?」
「帰ったよ」
「そっか」
「俺等も帰るだろ?」
「うん」
俺は、まっつんと並んで歩く。
「電車だよな」
「当たり前だろ!電車に決まってるだろ」
「だよな」
俺は、まっつんにそう言って俯いて歩き出した。
「拓夢何かあった?」
「ううん」
何も変わらないのに、凛に会えない何ておかしいよな。俺、まだ何も変わってない。
「拓夢、危ないって」
俺は、まっつんに腕を引っ張られた。
「ごめん」
「轢かれたら困るって」
「ごめん」
「何だよ!さっきから」
まっつんは、少し怒って俺に言った。
「ごめんって言ってるだろ!」
「拓夢どうしたんだよ」
「もう、凛に会えないんだよ」
俺は、そう言ってまっつんを見た。
「それは、デビューしたからだろ?」
まっつんは、俺を見つめてそう言った。
「凛達、夫婦がSNOWROSEをデビューさせてくれたんだよ。なのに、もう会う事も許されないんだよ」
俺は、涙を溜めた目でまっつんを見つめた。
「拓夢、凛さんにもう一度会いたいんだな」
まっつんの言葉に俺は頷いていた。
「ちゃんとお別れしたいのか?それとも…」
「もう一度、どうにかなりたい訳じゃない。ただ俺は、凛と生きていたいんだよ。どんな形でもいいから傍にいたいんだよ」
「拓夢」
涙が止められなくて、まっつんは俺にハンカチを渡してきた。
「PV撮影する時には、もう一回凛さん呼んでもらおう。それで、話ししたらいいんじゃないか?」
「うん、そうだよな。そうだよな」
俺は、まっつんから渡されたハンカチで涙を拭いながら泣いていた。
「大丈夫だよ!拓夢と凛さんなら別の形を見つけられるから」
まっつんは、そう言って俺の背中を擦ってくれる。
「俺も理沙とは、会わないんだ」
「そうなのか?」
「相沢さんが火消ししてくれたけど…。やっぱり、まだ未成年に手を出したっての拡散されてるから」
「理沙ちゃん、悲しむよな」
俺の言葉にまっつんは、「まあな」って言った。
「まっつんは、不倫じゃないのにな」
「人間って、誰かを叩きたい生き物だろ?」
そう言って、まっつんは笑った。
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