クリスマスデビューイベント2【凛】

♪(想像された世界で)音楽が流れ始めた。その瞬間、周りの言葉が一斉に歓声に変わる。


「皆さん、こんばんは。智天使ケルビムです」


「キャー、キャー」


文句を話す人は、一人もいなくなった。


「はやとー、はやと」


「かっこいいよー」


智天使ケルビムは、何故か、顔以外が見えるようになっている。みんなそんな事は気にしていない。


智天使ケルビムは、シークレットバンドだったんです。でも、ある事がきっかけでこうして舞台に立ってるんですよ」


隣にいたスタッフの一人の方が、私にそう言った。


「皆さんは、顔は?」


「見えません。でも、誰かは想像がついてます。それでも、智天使ケルビムは顔を見せないってスタイルを貫いてます」


「そうなんですね」


私は、そう言って舞台を見つめる。光とスモークと呼ばれる煙で、智天使ケルビムのメンバーの顔は全く見えない。


智天使ケルビムが、話をするとさっきまでSNOWROSEを嫌っていた人達が、口々に「応援する」と言い出した。

私は、はやとさんの凄さを目の当たりにしていた。


「凛、やっぱりはやては凄いね」


私は、その声に振り返った。後ろにいたのは、吉宮凛だと今気づいた。しんの映画に出てるって事は、鴨池はやてってあの?

私は、驚いて龍ちゃんにそれを耳元で話した。


「えっ!そうだったんだ」


しんの作品が好きな私達夫婦は、驚いていた。それでも、気にしないふりをしてステージだけを見つめていた。


「みんながSNOWROSEを応援してくれるって言ってくれて嬉しいよ。じゃあ、これを歌うよ」


そう言って、はやとさんはバンドメンバーに指示を出して歌い始める。


「♪許されぬ日々の中を…♪」


そう言って歌い始めた曲に私は泣いていた。

歌が終わるとはやとさんは、こう言った。


「これは、SNOWROSEの二曲目です」


「何で、二曲目歌うんだよ!」


「はや、やっちゃったな」


「だって、これ凄くいい歌だったから…」


そう言って、智天使ケルビムは楽しそうに話している。


「ちょっと暖まったかな?じゃあ、呼ぼうかな?」


一時間程、智天使ケルビムは話していた。その言葉、一つ一つに嘘がないのがわかった。


「SNOWROSEってみんなで呼ぶよ!せーの」


『SNOWROSE』


会場にいるみんなが呼ぶと拓夢達が現れた。


「皆さん、こんばんは。SNOWROSEです」  


その言葉に会場は色めき立った。


「聞いて下さい」


そう言って、SNOWROSEはデビュー曲を歌い上げた。


「キャー、キャー」


たくさんの歓声を浴びながら、無事にデビューイベントは幕を閉じた。


「よかったな!凛」


龍ちゃんは、私を見つめて笑ってくれていた。


「本当によかった」


私は、鞄からハンカチを取って涙を拭った。


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