しゅんとの時間【拓夢】
「おはよう、拓夢」
俺は、その声に目を覚ました。
「あー、おはよ」
そっか…。俺は、しゅんが気になって、ソファーで寝てたんだった。
「ごめん。俺、何か言ったよな?」
しゅんは、そう言いながら申し訳ない顔をしていた。
「姉ちゃんの事」
俺の言葉に、しゅんはハッとした顔をした。
「あー、そうだった。姉貴が、SNOWROSE のジャケット変態だって言った話だよな?」
「そう。そっから、エロを語られたわ!俺」
その言葉にしゅんは、
朝から笑っていた。
「ハハハ、何を語るんだよな」
しゅんは、そう言いながら頬をポリポリと掻いた。
「抱き合うのも駄目だとか、従姉妹の子供が見てる漫画で胸が出てるやら、キスぐらいしてるとか…。な?」
しゅんは、俺の言葉にさっきより大きな声で笑った。
「昔、何か変身するアニメでさ。服を脱ぐシーンがあるから見たら駄目って言われたとか言ってるやついなかった?俺、そのての話してた?」
「いたいた。同級生のやつな」
俺の言葉にしゅんは、頷いていた。
「姉貴がそういうの嫌いなのわかってんだけどな…。今の姿になるまで、色々さ」
「わかってる」
しゅんは、そう言いながら悲しそうに目を伏せていた。しゅんの兄ちゃんは、性別を否定されたり、性的関心を向けられたりと…。色々あったのを俺達は知っていた。そこから、嫌悪感を募らせていたのも知っている。
「まあ、しゃーないよな!そういう色々あった人に理解されようなんて難しいよな」
しゅんは、そう言いながら苦笑いを浮かべていた。
「そうだな」
俺は、起き上がってキッチンに行く。
「水、飲む?」
「うん」
水道の蛇口を捻って、コップに水を入れてしゅんに手渡した。
「ありがとう」
「うん」
自分の分も入れて飲んだ。
「拓夢、今日は仕事は?」
「ああ、休み」
「何かあった?」
しゅんは、そう言って俺を見つめている。
「美沙とやり直した」
俺は、しゅんの目を避けるように呟いた。
「脅されてるのか?」
しゅんは、まっつんと同じ事を聞いてきた。
「まさか」
俺は、そう言ってヤカンに水を注いだ。
「拓夢は、誰の為に美沙ちゃんと付き合ったわけ?」
しゅんの言葉を無視するように火をつける。
「拓夢、凛さんとの事でなんかあった?」
「何もないよ」
俺は、マグカップを二つ取り出してインスタント珈琲を入れる。
「凛さん、赤ちゃん欲しいって望んでるんだよな」
しゅんの言葉にうんと俺は頷いた。
「拓夢、凛さんとこのまま一緒にいたかったんじゃない?」
お湯が沸いて火を止めた。
「拓夢、何でなんも言わないの?」
俺は、しゅんの言葉を聞きながらマグカップにお湯を注いだ。
「拓夢」
「凛の旦那さんに俺が敵う可能性なんて1%もないよ」
俺は、しゅんに珈琲を渡した。
「凛さんの旦那さんに会ったのか?」
そう言って、しゅんは俺の顔を見つめていた。
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