怒らないで、拓夢

俺は、目覚ましをセットしてベッドにゴロリと横になった。すぐ後ろをついてきてた凛も横になった。


「怒らないで…拓夢」


そう言って、凛は俺にくっついてくる。


「龍ちゃんの方が、俺より大事なのわかってるから。それに、優しい人なのもわかってるから…。おやすみ」


俺は、少し乱暴に言っていた。


「ごめんね。もう、龍ちゃんの話はしないから」


凛は、そう言って俺に背を向ける。あー、またやった。俺は、何でこんなに余裕ないんだよ。おでこに手を当てながら考える。凛が旦那さんを愛してる気持ちごと好きなんだろ、俺。


「ごめん。話していい。俺、凛が旦那さんを愛してるのわかってるから…。龍ちゃんの話を聞かせてくれていい」


俺は、凛を後ろから抱き締める。


「ごめんね。私、やっぱり酷いよね…。拓夢を傷つけてるよね」


凛が泣いてるのがわかる。


「傷つけていいんだよ。俺は、凛にならいくらだって傷つけられていい。大丈夫だから、泣かないで」


俺は、凛の手を探して握りしめる。


「優しくされるから、甘えちゃうんだよ」


「いくらでも、甘えればいいんだよ」


「拓夢、ありがとう。私、拓夢に出会えて本当によかったって思ってる」


「俺もだよ、凛」


出会った事が、間違いだなんて思いたくなかった。俺は、凛と出会えた事に感謝しかしていない。


「おやすみ、凛」


「おやすみ、拓夢」


俺は、凛を抱き締めながら眠った。



ピピピ、ピピピー


「うーん、はぁー」


伸びをしてから、起き上がる。隣に眠っていた凛は、いなかった。俺は、慌てて目覚まし時計を止めて、急いでキッチンに行った。


「おはよう!時間遅れそう?」


俺は、凛を見た瞬間、抱き締めていた。


「どうしたの?拓夢」


「いなくなったかと思った」


「いなくならないよ」


「帰るなら、ちゃんと帰るって言ってからにして」


「わかった」


凛は、そう言って俺を抱き締めてくれる。


「朝御飯作ったから、顔洗ってきて」


「うん」


俺は、凛から離れて洗面所に向かった。凛がいない事に、凄く動揺していた。顔を洗って、歯を磨く。俺は、キッチンに戻る。


「トレー、買ってきてもいいかな?」


ご飯を往復しながら、テーブルに運んでる凛は、そう言ってくる。


「いいよ!買ってきて」


「ごめんね。持ってくの大変だから」


「確かに、そうだよな」


凛は、コップに入れた水を俺に差し出してくれる。


「じゃあ、洗濯したら買い物に行くね!食材も買いたいから」


「駅前なら、何でもそろうし…。気をつけて行っておいで」


「ありがとう」


テーブルに朝御飯が並べられる。俺と凛は、向かい合った。


『いただきます』そう言って、俺は凛の作った朝御飯を食べ始める。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る