許せない自分の小ささ
「食べすぎて、飲みすぎたわー。凛、辛くない?大丈夫か?」
「無理かも」
「俺も…」
龍ちゃんは、鍵を閉めてくれる。私は、フラフラとする。
「大丈夫?」
「触らないで」
「ごめん」
「あっ」
自分の言った言葉に驚いていた。
「私、暫く二階で寝るから」
玄関の靴を放り投げるように脱いで上がる。
「ま、待って」
リビングに急ぐ私を龍ちゃんは、追いかけてくる。
「どうしたんだよ!凛」
「何でもないの」
「もしかして、俺より好きな人が出来た?」
「そんなわけない」
「じゃあ、どうした?」
「今は、少しだけ冷静になりたいだけ…」
「俺とは、一緒にいたくないって事?」
「違う、そうじゃない。ただ、今は色々考えすぎちゃってて」
龍ちゃんを傷つけたくなかった…。こんな事、言うつもりじゃなかった。年を重ねて、大人でありながらうまく出来ない自分を感じる。
「わかった。二階には、俺が行くよ」
「駄目。龍ちゃんは、仕事あるから…。ちゃんとベッドで寝て。私は、お客さん用の布団で大丈夫だから」
「じゃあ、そうさせてもらう」
「ごめんなさい」
「落ち着いたら、また朝御飯作って!じゃあ、明日から晩御飯、外で食べるようにするから」
「龍ちゃん」
「顔合わせるの嫌だろうから…。じゃあ、先、歯磨きする。おやすみ」
龍ちゃんがいなくなっちゃうかもしれない。若い女の元に行っちゃうかもしれない。なのに、私の口からは「おやすみ」ってでただけだった。私は、二階に上がるとお客さん用の布団を取り出してひいていく。子供部屋になる予定だった部屋。カラフルな壁紙。何もないがらんとした空間。掃除以外で稼働されないエアコンがついてるだけの部屋。悲しみが
私は、自分の心の小ささを知った。歯磨きを終えて部屋着に着替えるとキッチンのガラスのポットに水を入れて、コップを持ってから二階に上がった。明日、パジャマを寝室に取りに行こう。
二階に上がると、それを置いて私はすぐに布団に横になった。ショルダーバッグから、スマホを取り出す。理沙ちゃんに伝えるのも、明日以降でいいかな…。理沙ちゃんから楽しかったメッセージが入っていて私はそれにだけ返信していた。
私と龍ちゃんは、この日から家庭内別居生活を始める事になってしまった。
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