墓場まで持ってくよ【カクヨム版】

拓夢は、私の頬に流れる涙を拭って柔らかく笑った。


「凛、その荷物を俺に渡して」


「拓夢」


「墓場まで、俺が持って行ってやるから!もう、二度と思い出すな!これが、最後だ」


そう言って、拓夢は私の唇を指でなぞった。深呼吸をして、私は話し始める。あの日を思い出しながら…。


「蓮見君に腕を掴まれて、男子トイレの個室にいれられた」


「うん」


「すぐに蓮見君は、私に抱きついてきた。やめてって言ったら、全部旦那になるやつに話すからって言われた。話せばって言ったら、これ全部見せていいんだーって画像は荒いけど紛れもなく私だった。蓮見君としてる私」


拓夢は、私の震える手を包み込むように握りしめてくれる。


「一度だけにしてってお願いしたの。そしたら、同窓会が終わったらあの公園に来いって言われた。同窓会が終わって、あの公園に行った。蓮見君は、待っていた。私の腕を掴んで引っ張って…。近くにあった、ラブホテルに連れて来られた」


「うん」


「シャワーに一緒に入った。上がるとすぐに、それをね。それで、あの時みたいに抱かれたの」


「うん」


「朝が来るまでされ続け

た」


「うん」


「蓮見君にもうやめてってお願いしたの。そしたら、相性がいいから無理だって言われた。私は、嫌だって何度も言ったの。結婚するからって…。だったら、結婚するまでの間なって言われた」


「凛……」


「それから、3ヶ月続いたの。毎日、蓮見君の家に呼ばれた。蓮見君を嫌いになりたくなかった。だから、私、言ったの。お願いだから、嫌いにさせないでって」


「うん」


「そしたら、蓮見君。嫌いになられなきゃ!また、会ったらこうするって」


「うん」


「私、最低だよね。本当なら、言わなきゃいけないよね。なのに、結婚した。私、毎日夫に会いに行って…。蓮見君としたのを上書きした。そうしなきゃ!ここがもたなかった。私、夫と結婚したかったから…。彼を愛してるから…。だから、絶対墓場まで持っていこうって決めてたの」


拓夢は、私を抱き締めてくれる。


「俺が、代わりに持って行ってやるから!凛は、もうこの事忘れろ」


「拓夢」


「凛は、忘れろ!二度と思い出すな!」


本当は、何度も龍ちゃんに話して婚約を破棄しようとした。なのに、出来なかった。私の心の闇を晴らしてくれた龍ちゃんを私は手放せなかった。


「大丈夫!凛は、蓮見とは何もなかった。高校卒業して終わったんだ」


「拓夢、ありがとう」


岩石のような荷物を私は、拓夢に渡した。

拓夢は、それをしっかり受け止めるように私を抱き締めてくれる。もう、これで私、楽になれるよ。

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