帰り道
私の視界には、俯いてる凛君がいた。
「もう、買うものない?」
「大丈夫」
「じゃあ、帰ろうか」
「うん」
私は、凛君を見ないようにする。16歳の子供には、私の事などわからないんだよ。龍ちゃんとレジに並ぶ。何故か急に体外受精をして妊娠した友人が、私と友人に言った言葉を思い出した。
【みんなにはわからないわよ!これはね、こっち側にしかわからないの!タイミングで妊娠した葉子には絶対にわからない。私の悲しみなんて!人工受精で出来た恵にもわからないわ!私の苦しみなんて。いつまでも、自然に妊娠しようと考えてる凛に何か絶対わからないから】
どうしてこの発言を彼女がしてきたのかは、わからなかった。ただ、急に怒り出して泣き出した。私達は、もう彼女と会う事はなくなった。分かり合えるはずないときっぱりと線をひいた彼女と友人ではいれなかった。
順番がやってきて、お会計をした。袋につめて、龍ちゃんと並んで歩き出す。
「龍ちゃん、由美覚えてる?」
龍ちゃんは、私の手をギュッと握りしめた。
「凛には、絶対わからないって言った人だろ?」
「そう」
「その人がどうしたの?」
「何か久しぶりにあの強烈なお茶会思い出しちゃった」
「もう、子供大きくなったんじゃない?」
「真理恵が、SNSで友達だったから覗いたら大きくなってた!同じ体外受精で出来たママ友さんといたよ」
「やっぱり、人間なんて同じ人としかいれないのかもな」
龍ちゃんは、そう言いながら前を見つめている。
「結局、治療した人達の中でもランク付けされるわけでしょ?だったら、私は圏外だよね」
「でもさ、凛の気持ち何か一生わからないよ!その人達は…。分かり合うなんて不可能なのにな」
「でも、妊活スレは賑わってるよ」
「女性は、他人より自分が幸せな方が嬉しい生き物だって!昔、先輩に聞いたけど」
そう言って、龍ちゃんは笑って私を見つめる。
「それって、結局。妊活スレの住人達は、自分が一番先に妊娠してやるって思ってるって事?」
「そうなんじゃない」
「それって、何かショック」
「何で?」
「少しは、優しさがあるって信じたかったから…。結局、顔が見えなくてもリアルな友達と変わらないんだって思って」
「どういう意味?」
「私の方が幸せだからってアピールするし、自分がよかったらこれしなきゃとかって上から言われるし…。それと変わらないんだなって思ったらショックだった」
龍ちゃんは、私の手をさらに握りしめてくれる。
「マウントとりたがるのが人間なんじゃないか?男だってあるよ!そんなの…」
そう言って私の顔を見つめる。
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