閑話2【実家】
「前からずっと気になってたんだが」
パシリから帰還した俺は、ある素朴な疑問を訊ねてみることに。
「何かしら? 言っておくけど、いくら食糧庫のあなたとはいえスリーサイズまでは教えられないわよ」
「興味ねぇな」
「売れるわよ?」
「......食糧のことだ」
「
「......続けるぞ? いつもこれくらいの量、学校にパンを持って来てるよな」
「ええ」
「だとしたら準備する親御さんも大変だろ。金だって馬鹿にならないだろうし」
俺の問いに一色の顔が曇る。
しまった......両親の話は地雷だったか?
「――家族は弟以外、私が人よりほんの少しだけ多く食べることを知らないわ」
俺の不安をよそに、一色は変に誤魔化すことなく正直に語り始めた。
しかもこいつ、さり気なく遠回しに自分は大食いじゃない発言まで混ぜ込んで。
「私の家ね、地元では結構有名なパン専門店なの。これは、そこで出た余り物たち」
なるほどな。
毎日やたらと専門店のパンばかり食べているのにはそういう理由があったのか。
「親には養護施設の子供たちに寄付していますっていう名目で通して、本来食品ロスであるこれらを、私にもほんの少しだけ拝借させてもらってるの」
「大食いも苦労するな」
「あら、私は別に自分を大食いだと思ったことは一度もないわ。あなたたちが全然食べないだけよ」
否定しつつ先ほど俺が売店で買ってきたバナナオレにストローを差し込み、気品良くチューと口の中に吸い込む。
一色基準とやらで考えればそうなのかもしれないが、俺たち普通の一般人視点からしてみたらコイツは間違いなく大食いの
芸能事務所にスカウトされて美人大食いタレントとして売り出せば確実に人気が出るだろうさ。
「俺たちの食べる量はともかく、一色のこと見直したよ。伊達にウチの生徒会長をやってるだけはあるな」
「......如月君、何か勘違いしてない?」
『わかってないわね』というような呆れた表情で小さく嘆息し、
「本当ならクソガキ共なんかに一色家自慢のパンをタダで渡したくないわ。でもね、パン...特に総菜パンは日持ちしないの。冷蔵庫に入れて置いたって、美味しさを保てて精々一日が限界。いくら私でも総菜パンだけじゃ飽きるもの」
......前言撤回。
やっぱりコイツはとんでもなく最低な主様だわ。
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