第21話 コミカライズ7話 公開予告SS



 今日のユンボは朝からとても忙しそうにしている。

 イルク村の中を北へ駆けて南に駆けて、駆け回って、そうやって村の皆に聞き込みをしているのだ。

 

 一体何についての聞き込みをしているかと言えば、その答えは『ペイジンについて』だ。


 コミックの中で、今度ペイジンについての話を書かなければならないそうなのだが、しかしユンボはペイジンを、フロッグマンをその目で見たことが一度も無かったのだ。


 そういう訳でユンボは、ペイジンを見たことのある人物に、ペイジンについての話を聞くことでそのイメージを膨らませようとしているらしい。



 ペイジンのことをよく知っている者というと、イルク村に来る以前から交流のあったアルナーか、ペイジンの下で暮らしていたセナイとアイハンになるのだが……セナイとアイハンはその時のことをぼんやりとしか覚えておらず、アルナーはアルナーでペイジンのことを『歩くカエル』程度にしか認識していなかったようで、あまり良い話は聞けなかったようだ。


 そうなると残るは、私やクラウス、それとマヤ婆さん達と、ペイジン・レを出迎えた時にいた犬人族達になる訳で……村中のあちこちに居るそれらの人物に話を聞く為に、ユンボは忙しく駆け回っていると、そういう訳だ。


 しかしそれらの人物に話を聞いてみても上手くイメージは膨らんでくれなかったようで、ユンボは広場へとやってくるなり、頭を抱え込んでどうしたら良いのかと苦悩し始めてしまう。


 そんなユンボを見て……マヤ婆さん達がぞろぞろと広場へと集まってくる。


 そうやって集まってきたマヤ婆さん達は、口でもってペイジンについての話をするのでは無く、それぞれに木の棒を手にして『それぞれの目で見たペイジン』を地面へと描き始める。


 すると、それを面白がったセナイとアイハンがそこに加わり……アルナーとクラウスが続いて……そうして私もユンボの為にとその絵描き大会に参加する。


 広場に描かれた数々の絵達は、そのどれもこれもがユンボの絵とは比べ物にならない下手なものだったが……それでもユンボには、その方が、絵で描いて見せる方が良かったようで、良い感じにイメージが膨らんだのか、良い笑顔となってくれる。



 そうして夕刻頃。


 広場中に出来上がったペイジンの絵を一つ一つじっくりと眺めたユンボは、大きな声で皆への礼をいって……そうして膨らんだイメージをコミックにするべく、自らのユルトへと元気いっぱいに駆け込んでいく。


 そんなユンボを見送った私達は、それぞれの絵を見合いながら、ユンボがどんなペイジンを描くか楽しみだと、そんなことを語り合い続けるのだった。


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