第89話.『明而陸軍装備紹介』

・皇壱式(スメラギイチシキ)小銃

装弾数五発

作動方式、ボルトアクション方式

1280ミリメートル、3980グラム

銃剣着剣時にはプラス400ミリメートル。

明而陸軍が作り上げた国産小銃である。初めて国産の陸軍の小銃として量産化を成功させた。本小銃を他の小銃と区別して呼ぶ場合は、皇壱式(スメラギイチシキ)や単に壱式(イチシキ)と呼ばれる。

大きく重いが、堅牢に作られており、銃剣の着剣時は穂高の身長よりもずっと大きく、いわゆる槍として使う事が可能である。穂高の身長が低いだけというのもあるが、悪口になるので深くは掘り下げない。

また長い銃身のお陰で、遠距離での精度に長ける。習熟した者が取り扱った場合、その有効射程は500mとされる。

穂高ら歩兵隊が普段使っているのはこの銃。



・皇壱式(スメラギイチシキ)短小銃

装弾数五発

作動方式、ボルトアクション方式

990ミリメートル、3020グラム

長大な壱式を、騎乗での取り扱いが容易なように全長を短くしたもの。銃身が切り詰められているために命中精度は壱式に劣る。

しかし取り回しの便利さゆえに騎兵、砲兵、輜重兵などに使用されている。



・皇式(スメラギシキ)機関銃

装弾数、ベルト給弾

作動方式、反動利用による自動装填式

全長1020ミリメートル、38000グラム

弾丸を連続で毎分450発もの連射速度で発射できる兵器。三脚架で地面に固定して射撃を行う。本銃は、一挺で皇壱式小銃の五十挺分の火力があるとされている。

壕を掘るという発想はあったが、実際に機関銃と塹壕の組み合わせが国家間の戦争で用いられたのはこの戦争が初めてである。その圧倒的な火力により、次世代の戦争の形が決まりそうだ。各国の注目も大きい。

射撃は四名一組で行い、指揮官、観測員、射撃員、給弾員で一挺の機関銃を扱う。

配備が始まったばかりの新兵器であり、まだ前線部隊に少数が配備されるにとどまっている。

皇式と謳っているが、実は部品の殆どが清国からの輸入である。設計から全て国産の機関銃の登場は、まだ時間がかかるだろう。

本体の価格もさることながら、銃身の交換に弾丸の消費にと運用にはかなりお金が必要。



・試作型狙撃銃

通称「雪兎(ユキウサギ)」

装弾数一発

全長1560ミリメートル、15800グラム

敵陣地を長距離から排除できないか、という経緯で開発された。長距離狙撃用のライフル。

土嚢、コンクリート陣地は貫通し、騎馬や馬車は馬ごと乗員を吹き飛ばす。本銃に破壊できない目標は無いとされる。

日本軍内の識者、刀鍛冶の職人達による科学力と職人芸の融合。狙撃眼鏡と呼ばれる高精度のスコープを搭載している上、圧倒的重量の弾丸の直進性によりその有効射程は2000メートル。明而の時代において、個人で扱える兵器の中では最長射程、最高威力と言えるだろう。

だが問題がないわけではない。穂高は初回から上手く射撃をせしめたが、本銃の取り扱いは非常に難しい。つまり扱う方にも職人芸を要求されるのだ。

砕けた言葉で表現するならば、達人しか取り扱えない超兵器。

こんなシロモノを何梃か増産したとしても、使える者が居ない。専用に訓練を積まねば全く使いものにならないだろう。そもそも機関銃を増産する資金がない、なんとか工夫して敵機関銃陣地を安価で無力化しようという努力のあらわれでもある。明而陸軍がというより日本国自体、資金繰りが厳しいのである。

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