41.笑う蛇②

蝙蝠にシュルトから聞いた笑う蛇の特徴を伝えて探させる。

笑う蛇の特徴は別段派手というわけでもなかった。だけど、目立つ。服などは普通の物らしいが。蛇を首に巻いているらしい。何故蛇を連れているのかはわからないが、大した情報がないのは《光魔法》か固有魔法だろう。《光魔法》だと見つけるのに苦労しそうだが…


「あ、いた。やっぱり固有魔法だったのか」


笑う蛇は意外と簡単に見つかった。

固有魔法は普通の魔法比べて使い道は減るが、その分効果は高い。そのため隠蔽系の物はほとんど見つからない。だが、俺の場合は身近に固有魔法を使うセラがいる。しかも、それを乱用しているのだからある程度は理解する。そして蝙蝠は俺の眷属だ。俺ほど鋭くなくても違和感位は覚える。そこを俺が直接見るのだ。


「流石に《転移》はだめだから走っていくか。オロチ、行くぞ」

『はい』


姿はわかっても性格がわからないのでオロチを連れていく。戦闘になった場合に、魔法は目立ちすぎるのだ。

笑う蛇がいるのは路地裏的なところだ。何故かはわからないが、ずっとそこにとどまっているらしい。


「えーと、お前が笑う蛇でいいのか?」

「・・・うん、そうだよ。誰かの紹介かな?」

「いや、違うな」

「そうなると僕は逃げたほうがいいのかな?」

「なんでだ?それはそれで困るんだが」

「国が僕を捕まえようとしてるんじゃないの」


やたら警戒していると思ったら、国に捕まるかと思ったからのようだ。

あえて肯定してみてもいいが、本当に逃げられても困るからやめておこう。


「いや、違う。お前の噂をを聞いて、探してみただけだ。知りたい情報が無いわけでもないしな」

「なんだー。正直君からは逃げられないと思うからよかったよ」


やたら砕けた感じになったな。というかこれが素なんだろうな。

で・・・


「色々話したいことはあるんだが、その前に聞きたいことがある。なんで笑う蛇なんて2つ名がついたんだ?」

「・・・もっとやばそうな質問をされるかと思ってたんだけど。まあいいか。そのことだけど笑うっていうか、笑う風に鳴く蛇と一緒にいるからそう呼ばれているだけ」

「鳴かないどころか身動き1つしないぞ?」


最初に対面した時、あまりに動かないため飾りかと思ったほどだ。


「そうなんだよね・・・。あ、なんか強い蛇の魔物連れてたりしない?蛇系って本能的に固まることがあるらしいんだ」

「・・・いや、心当たりはないな」

「そうか。どうしたんだろうな」


『オロチは蛇らしいぞ』

『私はれっきとした龍です』


念話でオロチをからかってみたが、そんなに響かなかったようだ。

なにかオロチに弱点はないのだろうか。動揺したようなところを見たことがない。

まあいいか。とりあえず話を進めたほうがいいだろう。


「で、欲しい情報を聞く前に1つ。魔王関係のことを聞きたいんだが、お前は知ってるのか?」


魔王などは数人いる。最低でもこの情報を持っていない限り、魔王関係のことを聞くことができない。


「当然。というか君が知っていたことが驚きだよ」

「そうなのか?結構知ってる奴とは会ったけどな」


レーガンやゲルド、レーネ。様子を見る限りシュルトも知っているだろう。他にもアースフェルやアベルなども知っていた。

ん?冒険者ギルドのマスターに商会長、一国の王女。探索者ギルドのマスター。神獣に精霊王。

…なんでこんな奴らとばかり知り合いなのだろうか。まあ、やばい性格の奴と知り合いになるよりかはましか。


「まあ、知ってるならいいんだ。俺が聞きたいのは魔王の居場所だ」

「魔王の居場所は今のところ見つかってないよ。僕も頑張って探してるんだけどね。一向に見つからないんだ。代わりと言ってはなんだけど、悪魔王を名乗る者の場所なら知ってるよ」

「…俺的にはありがたいんだが、値段の話もせずにそんなに喋ってもいいのか?」

「大丈夫でしょ。僕が教えなくてもいずれ君は見つける。だったらその前に儲けたほうがいいでしょ?」


思ったよりも強かな奴だったらしい。

…少し気が変わった。


「なあ、俺に雇われないか?」

「できるならいいけど、高いよ?」

「多分問題ないと思うぞ」


俺たちは相当稼いでいる。ハラルでは長期間に渡って森の見回り的なものをやっていた。それの報酬もあるし、他にも学園の警備や討伐隊参加の報酬。他にもたくさんだ。こんなに稼いでいるにも関わらず、ほとんど高い物を買わないので貯まっていく一方なのだ。


「そう?今までいろんな貴族から勧誘を受けたけど、皆報酬を聞いてやめたんだけどな。ざっと金貨300枚!」

「余裕だな」

「…どんなことしたらそんなに稼げるの?」


思った通り余裕だったな。《空間魔法》の《収納》に全部入ってるから詳しい数字はわからないが、300枚減ったところで数百枚残るだろう。

…そういえばこっちの通貨の価値を考えたことがなかったな。帰ったら南と調べてみよう。


「で、どうするんだ?」

「…やらせてもらうよ。だけど、僕はどう活動すればいいのかな?君に張り付いていたら情報収集もできないけど」

「これを使え」


そう言って蝙蝠瓶を2つ渡す。片方はいつもの緊急時に開けろ物だ。もう片方は手紙を手紙を持たせたら、俺のところまで持ってくる物だ。

とりあえず使い方を説明しておいた。


「君って本当になんなの?」

「さあな。いずれ教えてやるよ。そういえば名前は?」

「ルークだよ」

「俺はクロトだ。じゃあ頼んだぞルーク」

「了解」


ついでに悪魔王を名乗る者の居場所も聞いておいた。

さて、そろそろウィーン帝国を出るか。 

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