第13話 それはヤバい

 

 とある4限終りの昼休み。

 昼食を済ませた俺は、隣に座るオッドアイの少女といつもながらに雑談を楽しんでいた。


「今日は予定も無いし、久しぶりにゲームセンターでも行くか?」


「うむ......。我も行きたいのは山々なのだが......」


 いつも通りの神宮寺なら「行こう!今すぐ行こう!」と俺の腕を引っ張りそうなものだが、何やら元気がないように見える。


「何かあったのか?」


「何かあったというか......明人はこの前の数学の小テスト何点であったか?」


「俺か?俺は確か92点だったと思うぞ」


「ふむ......明人はこれを見てどう思う?」


 ふとファイルの中から取り出されたのは数学の小テストだ。

 期末試験まで1ヶ月を切っているため、現状の学力を把握するために行われたテストだったはずだが......


「17点......?」


「うむ。17点だ」


「神宮寺だけ50点満点のテストだったとか......?」


「いや、100点満点であったぞ。というか明人も同じテストを受けたであろう!」


「それはヤバいな」


「うむ。ヤバい」


「国語と英語はどうだった?」


「国語は89点、英語は67点であったな」


「数学だけか......」


 この前、中間テストの合計点を聞いた時は悪くない点数だったので、神宮寺は勉強が出来る奴だと思い込んでいたが、どうやら数学は苦手だったらしい。

 このままでは夏休み前の期末テストで赤点を取ってしまう可能性もある。

 早急に対策する必要があるな。


「どうしよう明人。我はこのままだと灼熱の檻まなつのきょうしつの中で拷問ほしゅうを受ける事になってしまう!」


「あぁ、早急に手を打つ必要があるぞ」


「明人!我が盟友よ!頼む!我に知恵を授けてくれ!」


 彼女の悲痛な叫びが俺に響く。

 神宮寺だって夏休みは欲しいよな?

 俺だって夏休み中、熱い教室の中で勉強なんてしたくないし、せっかくの休みを無駄にしたくない。

 唯一の友達が困っているんだ。俺が助けるしかないだろう!


「任せろ神宮寺。俺はお前を見捨てたりしない」


「あ、明人~~!」


「今日から毎日放課後勉強会だ!」


「お、おぉ~!......毎日?」


「あぁ毎日だ」


「月曜日から金曜日まで毎日......?」


「勿論だ。神宮寺」


「息抜きに出掛けたりする日とか......」


「ないな!みっちり勉強するぞ」


「ひ~~!」


 こうして放課後神宮寺と一緒に勉強会を開く事になった。


 17点を取っておきながら、息抜きが欲しいなどと宣っていた神宮寺だが、さすがに毎日は可哀想なのと、彼女の熱い要望により息抜きの日を設ける事にした。


 彼女自身もどうやら勉強はしていたらしく、数学だけが息詰まってしまったらしい。

 俺も人に勉強を教えた経験は少ないが、大切な友人の為、人肌脱ごうじゃないか。


 心なしか先ほどよりも元気がない神宮寺を尻目に、俺は数学のテキストに手を伸ばすのだった。




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