僕たちは《元》恋人だった
大和あき
家、僕と君
蒼太「ねぇ、こんな話知ってる?」
優里奈「どんな話?」
蒼太「僕の好きな人が、前アルバイト先でコケたっていう話。」
優里奈「え、何それ笑」
蒼太「もーほんとに聞いてて面白かったんだよ?足引っ掛けて、小指に2トンくらい負荷かかったってさ」
優里奈「やばすぎ笑」
蒼太「やばいよね笑」
優里奈「あ、やばいって言ったら、昨日の佐野さんの事聞いた?」
蒼太「え、佐野さんってあの看護師の?」
優里奈「そうそう、お隣さんの」
蒼太「その人がどうかしたの?」
優里奈「夜勤で頑張って働いてたんだけど、この間同棲してる彼氏に浮気されたらしいよ」
蒼太「うわまじかぁ…それは気の毒だな」
優里奈「でしょ?あたしもそう思ってさ、これから絶対いい人見つけましょうね!って言っちゃった」
蒼太「やっぱ夜勤だと浮気されやすいんだろうなあ ...」
優里奈「まーその分時間ができるわけだしね」
蒼太「...どう?退院してから学校には慣れた?」
優里奈「うん、だいぶね」
蒼太「そっか、よかった。クラス違うから、どうしても心配しちゃうんだよね」
優里奈「家であってんじゃん」
蒼太「まーそーだけど。記憶無くなる前とは随分違うからさ」
優里奈「それ前も言ってたよね、そんなに?」
蒼太「そんなに。前はもっと大人しくておどおどしてたのに、いきなり髪も染めちゃっていつの間にかクラスの一軍的な見た目になったじゃん」
優里奈「えー、あたしとしてはいきなりじゃないんだけどなぁ。でも、記憶が無くなって可哀想っていう目で見られたくなかったのは確かかも」
蒼太「ふーん..強くなったものだねぇ…」
優里奈「その反応お父さんかよ笑」
蒼太「ははっ、お父さんはいつでも心配しているぞお?」
優里奈「真似すんなって笑笑」
蒼太「...どこ行くの?あ、ずるい、僕にもアイスちょうだい」
優里奈「しょうがないなあ、お姉さんがアイスを分けて差し上げよう」
蒼太「あざーす。たった2ヶ月の差だけどね」
優里奈「びっくりだよねー、義理の弟があたしに居たなんて。」
蒼太「まだ現実味ない感じ?」
優里奈「脳が追いついていかない」
蒼太「お姉ちゃんって呼んでやろうか」
優里奈「絶っっったい嫌だ」
蒼太「え」
優里奈「あ!!」
蒼太「...ビビったあ..いきなり大声だすなよ」
優里奈「見て、あたり!!」
蒼太「お、いいじゃん。もう一本貰える」
優里奈「えー、どうしよ、今からコンビニ行こうかな」
蒼太「やめな、もう11時回ってる」
優里奈「ばれないって」
蒼太「はぁ...女の子なんだから自覚持てよ」
優里奈「でた、女なんだからってすーぐ言う奴」
蒼太「ほんとだろ。だいたいそのパジャマで行く気じゃないだろうな?」
優里奈「過保護だなぁ、そんなんだと彼女できないぞー」
蒼太「馬鹿、少しくらい心配する方がモテるんだよ」
優里奈「根拠は?」
蒼太「母さんがそう言ってた。あ、僕ハズレだ」
優里奈「じゃあ..許す」
蒼太「...その、優里奈は、好きな人とかいるわけ?」
優里奈「え、記憶喪失だった人にそれ聞くー?いたら歴代最速で恋に落ちるスピード早いって」
蒼太「そっか」
優里奈「納得するスピードはや」
蒼太「でも、いうて退院して1ヶ月だろ?」
優里奈「んー、やっぱ今は元の生活を思い出すのに精一杯っしょ。事故に遭う前どんな生活だったかなんて未だに思い出せないもん」
蒼太「あー..まぁそうだよな」
優里奈「うん」
蒼太「思い出すのって、そう簡単にできないよな」
優里奈「うん」
蒼太「自転車の乗り方も、思い出すのに1週間かかったもんな」
優里奈「...その話は思い出さないでほしいな」
蒼太「人間関係とか、もっと思い出せないよな」
優里奈「そうだね」
蒼太「実際さ、僕とか、それこそ父さんと母さんとか、家族って実感無いなって思う時やっぱりある?」
優里奈「んーー...不思議だなって思うかな。記憶としては無いんだけど、昔から家族なんだなって少し懐かしく感じる時があるんだよね」
蒼太「そうなんだ」
優里奈「こうやって蒼太と2人で居るのが、ちょっとあったかく感じたりとかね」
蒼太「....そっ..か」
優里奈「ん。」
蒼太「ん?」
優里奈「ごみ。」
蒼太「ああ、はい」
優里奈「お礼」
蒼太「...あざまる」
優里奈「さて、そろそろ寝ようかな。あ、やば、歯磨かないと。あ、やば、顔面の保湿してない。蒼太も早く寝ないと明日起きれないぞー、あと電気消すのよろしくー」
蒼太「...忙しないなぁ」
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