第48話 畏怖
ここは帝都の大関門から帝城を繋ぐ帝都のメインストリートである
石造りの道は貴族街では見られないものだ
貴族街の地面は薄く純度も低いが黒狼鋼が使用されているため滑らかであり並大抵の事では傷が付かないようになっている
実際、石造りの道を馬車で通ると馬車が激しく揺れる
しかし先ほどから私の乗っている乗り物は一度も揺れていない
もちろん魔導駆動車両でもある程度揺れを抑えることが出来る
だが私が今乗っているのは竜車だ
だが竜車が途方もない程重いから全く揺れていないわけではない
揺れていないのはこの竜車に搭載されているサスペンションと魔導具の効果だ
揺れないというのは当たり前であるためそこについてはなんとも思っていない
しかし私は今とても気分が良かった
もともと私はあまり魔導駆動車両を好まない
大貴族がゆえに小さい頃から広い部屋で暮らしていたため馬車よりは少し大きい程度では息苦しく感じてしまうのだ
だが竜車は魔導駆動車両より遥かに大きい
そして竜車の中央には吹き抜けの広いリビングがある
大貴族が使うものであるため景観を重視している
しかしそれは我々の帝都の城で見られたような下品な程、貴金属を使ったものではなく観葉植物等もあり全体的に落ち着いた上品な印象を与えるものだ
ちなみに城の内装を変えるのは基本的にその城主だ
つまり父上の書斎などの装飾は父上の趣味が出ているということだ
別に父上のセンスがないわけではない
父はもともと金や銀等の金属類を使った装飾が好きなのだ
しかし今回の竜車を考案したのは私だ
だから装飾なども私の考えを元に設計させたもの
だから全体的に木材を使った落ち着いた内装に仕上げた
私の趣味に合わせたものなだけあって内装はとても好みだ
正直城の私の部屋よりここの方が楽かもしれない
そんなことを考えているとふと窓の外が目に入った
限界まで安全に気を使ったこの竜車だが普通にガラス張りの壁が存在している
外からは中が視認できないようになっているためその点は気にならない
ガラス張りの壁は傍から見れば大きな弱点があるようにも見えるだろう
しかしある程度知識があるものであればこの窓が弱点にはなり得ないことを見抜けるはずだろう
平民の家で窓に使う素材となれば基本的にガラスが使用される
しかし我々が使っているのはガラスではなく外壁と同じ黒狼鋼だ
もちろん黒狼鋼には透過性は存在していない
しかし変性魔法を使えば光を通すように加工も出きるのだ
このような魔法による加工をしたとしても強度は対して変わらない
極論全ての壁をガラス貼りにしても安全面での問題はない
私がこうして考え事をしている間もジークとシャルはいちゃいちゃしている
というか気にしないようにするために考え事をしていたのだ
外にいる平民でも観察しようと思い外に目を向けても平民は見当たらない
竜車が大きすぎるせいで道にいないわけではないだろう
まだまだ余裕はあるし露店も100以上ある
しかし廃墟かのように誰もいない
理由は1つしかないだろう
貴族と平民との圧倒的な距離
それは階級社会がゆえの現象だろう
しかし全ての国が帝国のように貴族と平民との距離があるわけではない
帝国以外の国では無意味に平民を殺害したりすると罪に問われることはないが貴族であろうと非難を受けることになる
だからこそ何かしら正当な理由が必要になる
しかし帝国は違う
例えば私が特に意味もなく平民1000人を殺したとしても罪に問われることもなければ非難されることもない
それは今帝国が完全な一枚岩になりかけているからかもしれないがそうでなかったとしても貴族派からの非難は一切なかっただろう
そう断言出来るほど階級社会の構図が完成しているのだ
私は平民を意味なく殺した記憶はあまりない
しかし貴族全体で見れば帝国の人口12億人の0.06%、年間72万人程度死んでいる
死因としては上位に入らない程度のものではあるが
人の手によって殺される数と考えるととても多い
だが数だけを見れば事故や魔獣の被害などによって失われる命の方が圧倒的に多い
特に魔獣に関してはスタンピードと呼ばれる魔獣の大量発生現象が起こった場合その被害は甚大なものとなる
そしてスタンピードといえば多くの人があることを思い出すだろう
魔の森
そんな言葉がある
名前だけ聞けばどこか特定の森につけられた呼称のように思える
だがこれは地名ではない
ある条件を満たした森などの総称だ
スタンピードが発生した場合、放置することでさらにその規模が大きくならないように騎士団等が派遣される
しかし騎士団が派遣されてくるのは皇族に頼っていると認識されるわけにはいかないので貴族派は特別な私兵を所有している
話を戻すが魔の森はスタンピードによって失われて取り返せなくなった森や町の事だ
取り返せないと言うとまたスタンダードが起こりそうなものだがスタンピードが再び発生することはない
その理由は詳しく分かっていないが魔の森には必ず強大な生物がいるという噂がある
それも龍に匹敵するほどの生物だ
だがその強大な生物が魔の森から出てくることはない
ならば不干渉を貫くことが最善の選択だ
もともと龍を倒すことなど現実的なことではない
我々貴族派が龍を倒そうとしていること自体、他国からすれば頭がおかしくなったのでは?と考えるほどの事だ
もし今回の戦いで龍の討伐に成功したとすれば他国から見れば失われた生存圏の一部を取り返すことができるかもしれないという希望にもなり得る
だからといって我々が魔の森を攻略することはないが力を示すことで得られる利益は大きい
そもそもだが魔の森に生息する強大な存在が龍に匹敵するというのは少しおかしな事でもある
魔の森の強大な存在が弱いと言っているのではない
その逆で
私たち人類は今までただの一度も魔の森を奪還したことがない
龍は討伐報告があるのに魔の森の方はない
現状の情報だけで考えれば魔の森にいる存在は龍より強い可能性もある
長い時間を使ってやっと龍を倒そうとしているがまだまだ世界には理不尽な力を持つ生物が多く存在している
そんなことを考えながら閑散とした平民街を眺めていると巨大な門が見えてきた
大関門だ
高さがおよそ40メートルもある巨大な門だ
だが普段は開くことはない
今回は我々が竜車を使う関係でおよそ13年ぶりに開く
大関門が開くと視界の先には相変わらず広大なスラムが広がっていた
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スタンピード
魔獣が大量発生する現象であり発生するたびに大都市が1つ滅ぶ被害を引き起こす
基本的にはあまり強くない魔獣が大量発生することが多いが過去には強力な魔獣が大量発生し小大陸がなす術なく滅んだりもした
魔の森
人類の失われた生存圏
奪還できたことは歴史上一度もない
龍に匹敵する程の強大な存在が生息していると言われている
現在は帝国の国土の2%程が魔の森になっているが帝国以外の国はさらに多くの領土を侵食されている
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