第二十一話 頼れるキャトルズ・バーウィッチ
キャトルズ・バーウィッチ事、キャトに連れられ私は今まで見たこともないような人込みの中を歩いていた。
見たことのない服装の人や見たことない形の建物、商店、そして並べられている品の数々そのすべて新鮮できょろきょろあたりを常に見渡してしまう。
「エーナさん、さっきからいろんなものに目移りしてますねぇ。
やっぱり珍しいものばっかりですか?」
「あ、ええとそのごめんなさい、忙しなくて見っともないよね……」
「全然そんなことないっすよ!私も元々こんな都会とは縁の内容のな場所の出身なんすけど、初めて来たときはびっくりしてもうあたりを駆けまわりまくったすから!
……まああとでアルバート先輩に叱られたっすけどね」
へへ、と少し気恥しそうにキャトはそう語る。
最初こそぐいぐいくる勢いに戸惑ってしまったが話していると素直でやさしそうなイメージを感じてくる。
「そういえば、アルバートさんの事をさっき兄弟子って呼んでたけど……」
「そうっすよ、アルバート先輩と私は同じ師匠についてる兄弟弟子っす!
アルバート先輩と違って私はまだまだ師匠の元で修行中っすけどね」
「修行っていうのは、魔法の修行?」
「そうっすよ、師匠の元で今は基本的魔法の知識や実技練習をやってる最中っす!」
キャトに言われふと思ったが、よくよく考えてみればアルバートさんも魔法使いなのか、といまさらながらに気づいてしまった。
最初の出会いや執行者という発言に気を取られてしまい頭からその事が抜け落ちてしまっていたようだ。
「そういえば、エーナさんも魔法使い志望なんすか?」
「魔法使い志望かと聞かれればそうというかまだそうでもないというか……」
「あやふやっすねぇ。まだ誰に弟子入りするかとか、そういうのは決まってない感じってことっすかね?」
「そうといえばそうなんだけど、うーん経緯の説明をするとちょっと長くなるのよね……。ああでも弟子入りではないけど一応魔法の学校に入学する許可はあるみたいで」
そう説明しながら私はポケットからあの日、アピロさんから渡された学園への入学に必要だと言われた指輪を取り出してみせた。
「あーーーーーーーーー!それ、タリアヴィル魔法学校に入学するための賢智の指輪じゃないっすかーーーーー!」
キャトが上げた突然の大声に周りの人々の視線がこちらに集まる。
「ちょ、ちょっとキャト、声が大きいよ」
「すっすいません、ついびっくりして……。いやでもエーナさん賢智の指輪持ってるなんて凄いじゃないっすか、てことはつまりエーナさんは魔法学校に入学するって事っすよね。いいなーうらやましいなー!エリート街道まっしぐらじゃないっすか!」
「そ、そうなの?私もまだよくわかってないんだけど……。学校って入ろうと思えば誰でも入れるわけじゃないの?」
「とんでもないっす!あの学校に入るためには結構な額のお金とか、卒業生また関係者の推薦が必要なんすよ。だから入りたいと思ってそう簡単には行ける場所じゃ……、っていうかエーナさんそういうの知らないのに指輪もってるんすか?」
「ええとその、ごめんこれも話すと少し長くなりそうだから歩きながら話すね……」
そういって私達は再び歩みを進める。
そしてその間にキャトに私や村であった事をある程度かいつまんで話した。
私の母が魔法使いだった事、そして母の友人が訪ねてきたこと、その友人から指輪を貰った事など。
「なるほど、ある理解したっす。その指輪はエーナさんのお母さんがエーナさんに学校に行ってもらいたくて友人にお願いしていたって事っすね……。うう、なんていい母親なんすかエーナさんのお母さんは……」
泣けてくるっす、と言いながらよよよと目頭を熱くするキャト。
なんというか全体的に動作が派手な子だ。
「まあでも指輪までもらってるって事は大体の手続きは終わってると思うっすから。後はエーナさんから学園側に入学の意志を伝えちゃえばいいだけだと思いますっすよ。あれでも指輪を貰ってるってことはもう入学は確定しているんだったけか……、うーんどうだったかなぁ」
「その件を含めて一度確認したくて、タリアヴィルにいる指輪を渡してくれた魔法使いのところに行こうと思ってるの」
「そういう事なら先輩には既に言われてるかもしれなっすけど、魔法協会での用事が終わった後に一度タリアヴィル行きの馬車の時間を調べておくといいっす。場所なら私が教えますから行きましょう」
「ありがとう助かる。なんというか村かできていろいろ不安だったけど、キャトみたいに話しやすくて優しい人がいて本当に助かるわ」
「いやぁ、ほめても何もでないっすよ~。何より人に親切にするのは基本だってうちの師匠も言ってましたし、これくらいは当たり前の事っすよへへ……」
相変わらずのオーバーリアクションでうれしさを隠そうともしないキャト。
「そういえば、さっき言ってたタリアヴィルにいる母親の友人の魔法使いって何て名前なんすか?もしかしたら知ってるひとかもしれないし良ければおしえて……」
そうキャトが語り掛けてきたときだ。
ふと鼻孔をくすぐる香ばしい匂い漂ってきた。
肉が焼ける、香ばしい匂いが。
「なんと!この匂いは、すぐそこの酒場のおっちゃんが焼く羊肉香りっす!
最近入荷してなくて結構ご無沙汰だったおいしいやつっす!!
エーナさん、グリフォンで飛んできたってことは朝も昼もたべてないっすよね?」
「ええ、確かに食べてないけど……」
「なら食べに行きましょう!実は私もアルバート先輩やエーナさんを待つために朝からずっと着陸所前にいたのでハラペコなんす!」
「そんな前からいたの!?いや、というかアルバートさんに応接間で待ってるように言われたんだから早く向かわないとまずいんじゃ」
「そこは大丈夫っす!アルバートさんの用事は割と時間かかるっすから食べてから急いで向かえば問題ないっす!」
「いや流石にダメでしょ、それに私いま持ち合わせがそんなに無……」
といいかけた頃には凄い勢いで手をつかまれ酒場の入口付近へと引き込まれれていた。
「お金なら出世払いで貸してあげるので大丈夫すよ!さあお昼……からは結構ずれてますがとにかくごはん行きますよー!!」
本当に元気というか話を聞かないというか、今までに遭遇した事のないタイプの人だ、と心の中で感想を述べながら私は諦めたように酒場の中へ引きこまれていったのだった。
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