美女達睨めっこってなあどんな状況でござんすか
美女の睨み合いってぇ、お前さんは見た事ぁあるかい？
まぁ、怖ェ。
竜と虎の睨み合いっつって過言じゃあねえな。一見どっちも逞しいやら美しいやらでもな？
冷淡な表情で目をこう、カッと見開いて対峙してんだぜ。背筋が寒くならぁ。
「オマエサマ」
出たよアゾット先生の小声で早口。声が冷てえ！
「な、なんでござんしょ」
地べたにでーんと尻餅ついたまま無機質に無表情な陶器の人形みてえな綺麗だが恐ろしい横顔を見上げるが視線はポニテの
冷てえ声が続いた。
「この小娘は何じゃ。お前様の知り合いか何かか？」
ん？
そう言われてみりゃあ、話した事はねえなあ？
「や、まー・・・同業者？」
ギリッとポニテの侍娘が俺を睨んだ！
なんで！？
俺がビビりまくってるとアゾットはニヤと笑って言った。
「なんじゃただの同業者か。赤の他人が妾とフィンクの間に入るでないわ痴れ者め」
「あなたは・・・！」
「んー？ なんじゃ小娘？」
一気に余裕になったなアゾットさん。
あ、そうか。俺がスカートの中覗くみてえに見上げっちまったもんだから侍娘さんは怒ってるのか。か？
「ええと、まずはそのう」ガバと正座してザッツＤＯＧＥＺＡ！「たたた、大変失礼致しやした！事故でござんす他意は無かったんでごぜえやす！どうぞどうぞ何卒お許しおくんなせえ！」
「何を勘違いなされているのですかフィンク殿」
・・・なぜ俺の名前を知っている。いや、五本木町で異人の冒険者つったら俺しかいねえから知られて当然か。
おずおずと見上げる。
「へい、なんでございやしょう」
「女子の前でみっともない姿を晒すものではございません！！」
なんで怒られた？
「そうじゃぞお前様。
「何が悲しくてお人形様の股座を見なきゃあならねえんで？あいたたた！！」
アゾットが容赦ねえ勢いで足蹴にしてきた。
さすがお人形様、足硬え！痛え！
「
「
「そーそー、全く双葉
「
「えーだってほんとーのことじゃーん」
「三江、あなたも大概になさい」
「はーい、一美姉様」
「っく・・・！」
双葉ってえのか。みんな別嬪さんだが、一美ってのは大人びた別嬪さんで双葉ってえのは大人になりきれてねえ可愛らしさが残ってる。三江ってのは・・・ガキだな。
双葉さんは最後にアゾットの事を睨みつけて姉妹の所に戻っていく。
背中にアゾットがアゾットさん流なのか捨て台詞を吐きつけた。
「フヒヒ負け犬めざまぁ」
「っ！おのれ！」
「双葉？」
「・・・はい、申し訳ございません、一美姉様」
「今日の捕物はいささか忙しないのですから。行きますよ」
「はい・・・」
去り際に三江が振り向いて俺にあっかんべーしてきた。うざっ。
と、三姉妹と入れ替わりで門から小太郎が顔を覗かせた。
「ええと、もう入っても平気でしょうか」
ああ、そういえば小太郎の事を冒険者登録させねえといけねえんだったな。ばたばたしてて忘れる所だったぜ。
「お、おお。すまねえなすまねえな。どっこらしょ」
と立ち上がって、アゾットに左腕に絡みつかれる。
「ええと、アゾットさん？」
「うん。なんじゃお前様？」
「非常に歩きにくいんで、離して貰えやせんかね」
「このままカタールを出して腕をちょんぎっても良いのじゃぞ？」
「えー・・・まずは受付に行きやしょうか・・・」
「うむ！ アザイの冒険者ギルドか、初めてじゃのう！ どんな所なのかのう」
「冒険者ギルドじゃなくて
「はい！ 先輩！」
うーん元気がいいなあイケメン少年。
周りの浪人崩れの冒険者どもから奇異な視線を感じるが、まあ、そうだろうねえ。
幸い、動いて喋ってるアゾットさん見ても違和感はあるみてえだが人形だとは思っていねえみてえだ。
ああ、まあ、生人形だって知れたら「まあフィンクだからな。アザイの女にゃ見向きもされなきゃしょうがあるめえな」とか蔑むやら同情するような目で見られるんだろうな。
悲しーなあ。
「はいはい、ごめんなすって、ごめんなすって」
とりあえず、美女（？）に腕を絡みとられた俺を不審者でも見るような目で見る男どもを掻き分けるように、屯所の入口を潜っていったのさ。
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