(251)空虚な言葉

 よく、LGBRQの問題に絡めて「性的マイノリティへの理解増進を~」などと政治家が言っているのを聞くが、この「マイノリティ」という言葉がやたらと氾濫している気がしてならない。


「マイノリティ」とは「少数派」みたいな意味なのだが、その反対語となる「マジョリティ」という言葉はあまり知られていないんだなという事を、今日の顧客との会話で知る事になった。


 マジョリティとは「多数派」という意味になる訳だが、顧客がやたらと


「弊社でもマイノリティへの配慮が求められていまして」


 みたいな事を言うので、


「それはいい事ですね。しかし、市場はマジョリティの論理で動いているので、どの分野のマイノリティに配慮するのかによって、どんな策を講ずるべきかが変わってきますよね」


 なんて返していたのだが、相手の反応が「???」みたいな感じだったので、「あれ? 僕の価値観とは合わなかったかな?」と思っていたところ、


「まじょるてぃ・・・?」


 と言いながら首を傾げるので、てっきり僕の滑舌が悪くて聞き取れなかったのだろうと、


「ああ、発音が悪くてスミマセン。マジョリティですね」


 と言い直すと、


「勉強不足でスミマセン。その、マジョリティって何ですか?」


 と訊かれた訳だ。


 え?


 やたらと「マイノリティへの配慮を~」とか言ってたのに、対義語である「マジョリティ」を知らないって事?


 それはつまり、「マイノリティ」の意味も理解しているかどうかが疑わしい訳で・・・


 なので、

「マイノリティが少数派を指すのと反対に、マジョリティは多数派を指す言葉ですね」

 と補足はしておいたのだが、顧客は「なるほど、ちゃんと意味を知らずに使ってましたよ」などと言いながらガハハと笑っていたりする訳で。


「ははは・・・、最近はやたらと横文字ばかりで困っちゃいますよね~」


 などと僕も調子を合わせておいたものの・・・


 相手は僕と年齢的には大差無い中年サラリーマンだったのだが、どうやら「マイノリティ」とは「障碍者しょうがいしゃ」の事を指す言葉だと思っていたらしい。


 まあ、確かに障碍者もマイノリティには違いないが、だからと言って「マイノリティ=障碍者」という意味では無い訳で。


 僕が知らないうちに、世の中は意味も分からず空虚な言葉だけが飛び交う社会になっていたのかも知れないな。


 そう言えば、国会でも与党の答弁って「意味の無い空虚な言葉」だったりするもんな。


 国の中枢がそんな状態なんだから、横浜の片隅でそんな中年サラリーマンが居てもおかしくは無いのかも知れないな。


 何だか空虚な言葉を交わしていると、まるで空虚な時間を過ごしている気分になってしまうのな。


 ほんと、言葉って大事だな。


 そんなことを思う、今日の僕なのでありました。

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