第5話 風邪

「佐々木、足の方を持て、運ぶぞ!!」

「榊原さん、頭を下にしてはいけません、もっと上にしてください」

怪我をしているのは、僕たちだけじゃない、だから、ストレッチャーが使えるわけがない。

「おい!!!、通してくれ、血を流してしてるんだ!!」

「君、こっちの病室に運んでくれー」

僕たちは無我夢中に運んだ。大人の女性を運ぶのは、こんなに大変なんだ。

すると、女の子が、背中を支えてくれた。(母)わずかな、力ではあったが気持ちが揺らいだ。大人の火事場の馬鹿力、初めて出したかもしれない。

「ありがとう君たち、ここからは私に任せてくれ」

女の子の手を繋いで、病室の外で待った。

3人とも、汗をかいていた。榊原さんは、女の子に布のような、ハンカチのようなもので、返り血や、汗を拭いてあげていた。

「僕、近くに水がないか探してきます」

「頼むぞー」

来た道を戻ると、ペットボトルをもった、外国人のカメラマンがいた。

おそらく、同じ戦場カメラマンだろう。彼らに水のありか、を聞いてみるか・・・

「Excuse me ? Where did you get water?」ーすいません、水はどこにありますか?

「Oh ,it is in the square」ー広場にあるぞ

「Thank you」ーどうも

多少の英語はできる、発音はよくないと思う・・・

急いで広場に向かった。そこは異様な光景だった。女性を運ぶのに必死で周りが見れなかった。腕が切断され、足がない人が数え切れないほどいる。体全てに、包帯がまかれている人も。そこらじゅうに、鳴き声とうめき声がしている。僕は、目を反らした、

広場のはずれのテントに水を無料で、提供している場所があった。

そこまで、誰とも目を合わせず、表情を変えず、足音を立てず、急いだ。

「健!!!」

聞き覚えのある声と同時に、その姿をを見て涙を流した。

「宮越さん!!!!」

彼は左足を切断していた。そして、血を多量に流してたため、顔色が悪かった。

周りには顔なじみのチームメンバーがいた。

「宮越さん、宮越さん、!!!!生きていてくれたんですね。」

「お前こそ、よく無事で・・・」

無くなった左足を、なでながら、、、

「俺は、もう引退だな・・・」

宮越さんは、笑っていた。僕たちを心配させないように・・

「お前さっき、女性を運んでいたが大丈夫か?」

我を忘れていた、目の前に起こった現実が信じられず、動揺して、頭が真っ白になった。

「すいません、水を届けてきます。”先輩”」

少し落ちついたような、素振りを見せ

「行って来い!!!」

僕は水をもらい、すぐに、女の子がいた、場所に向かった。

「ごめん・・・」

「おせえー」

「おせえー」

女の子が笑っていた。どうやら、榊原に心を開いたらしい。

「あぁ、うん、はい水」

「どうも」

「どうも」

今の状況は?

「わからない。何も報告がない。」

「そうか、あの子は、君になついたようだね。」

「まあーなって、あの子じゃなくて、”レミ”だよ」

「ごめん、ごめん、レミちゃんー僕は”健”《けん》だよ」

名前を呼ぶと笑顔になった。可愛いらしい一面をちゃんと、持っていた。

「けん、けん、けん、」

僕は頷いた。レミは指を指しながら

「こーいち、けん」

名前を覚えてくれた。

「よし、健ここは頼んだぞ、さんざん、待ったんだ、レナと遊んで来る、

奥に進むと小さい公園を見つけた・・」

レミは顔を縦に、頷いていた。

「浩一にも優しいところあるんだ。」

「別に、戦争の犠牲者は必ず子供だから・・・何かしてやれることをしてるだけだ。」

彼には何か、過去がありそうだ。詮索をやめておこう。

「分かった、ここは任せて、レミちゃんよろしく」

レミと手をつないで、奥の方へ進んだ。



一時間が経った。


ドアが開いた。

「安心してください、手術は成功です。」

「よしゃあああああ!!!!!」

「しばらく、入院の形になりま、、え、ちょっと話の途中・・」

僕はレミちゃんのいるところまで走った。そして、榊原と目が合うと、

手で大きな丸をジェスチャーして、以心伝心した。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「兄、大丈夫?」

「ひどい熱ねー<38.2>、しばらく、様子を見て熱が引かなければ、病院に連れていきましょう。」

「兄、・・・・・・・」

「うぅ、、宮越さん、、」

「誰かな?、」

僕は兄の手を握った。



「アヤメだいぶ良くなったね。<36.9>頑張った、頑張った、リンゴ食べれそう?」

「うん、そこまで多くなくていいよ。 スミレもありがとう」

「うん!!よかった。」

兄は汗をかいていた。服も濡れていた。

「そいえば兄、誰かの名前、言ってたけど・・・」

「誰?」

「忘れたーー」

「思い出したら、教えてね。」

「うん」

多分、僕は思い出すことはないだろう。











  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る