はなしのおはなし

——生まれた言葉が、生ゴミのように。

その字には、二本の足が付け加えられていた。無邪気に書かれた、紙の上の滑らかな線。余計に生まれた文字の意味が、歩き回って。

——生まれた言葉が、生ゴミのように。

脳の中身が、掻き乱されている。その意味は、私には分からない。手紙に並んだ、自分には読む事の出来ない文字列。

——生まれた言葉が、生ゴミのように。

ずらっと書き殴られた、文章の字体が。うにょうにょ、うにょうにょ……。

——生まれた言葉が、生ゴミのように。

うにょうにょと。胎動をし始めている。嫌にぬるくて、煽情的で……。

——生まれた言葉が、生ゴミのように。

そして、鮮やかだ。網膜に映る、黒く燃えた蛇のイメージ。消えた印象。

——生まれた言葉が、生ゴミのように。

ことごとく生まれ変わった言葉の音は、くしゃくしゃな程の迫力で。暗く、

——生まれた言葉が、生ゴミのように。

しぼんでいっている。重くて、静かなのである。ひどく臆病になった、大きな森の鼓動。

——生まれた言葉が、生ゴミのように。

歪んだ羽の音が。ぶんと。眼下の紙面で呼吸をしている。紙の外側へと飛び出した、生身の人間。

——生まれた言葉が、生ゴミのように。

身包みを剝がされた裸の意味が、まるで。自由か何かを手にしたかのように。

——生まれた言葉が、生ゴミのように。

振舞いを続けている。積み上げられた透明な死体。自分の事を徹底的に無視した上で。

——生まれた言葉が、生ゴミのように。

繁栄を、し続けているのだ。ああ……。

——生まれた言葉が、生ゴミのように。

ああ、紙川様。

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