ハリソンの手紙・2

 拝啓 ライラ・クライン様。




 本当に千通を超える手紙を送ってきたことに、正直私は呆れている。


 もうこれ以上君の癇癪のせいで、書簡の受け取りに携わっている者たちに余計な労力を費やさせるわけにはいかないので、私が君との婚約を一方的に破棄したことへの文句と、クライン公爵家への罰に対する不満について答えようと思う。


 まずは君に対して囁いた愛の言葉についてだが、私の名誉に誓って、うら若き乙女を騙す手練手管などではないと断言させてもらう。


 私が君との婚約を破棄した理由はただ一つ。


 先の手紙にも表れているとおり、君の凶暴な本性に失望しただけだ。


 はっきりと言わせてもらうが、暴性を内に秘めし者に私の妃は務まらない。


 そして、こうして君が手紙を送りつけてくれたことで、私の判断に間違いがなかったことを再確認することができた。


 私に文句を言っている暇があるなら、少しでもお淑やかさを身につける努力をすることを君に勧めるよ。


 それからクライン公爵の罪についてだが、君は信じないと強弁するだろうが、残念ながら事実だ。


 なにせ城に、クライン公爵の圧制に苦しむ領民からの嘆願書がいくつも届いているのだからな。


 領地以外の財産を接収しなかっただけ、ありがたく思ってほしいものだな。


 もうこれ以上、君と話すことは何もない。


 次からは、君からの手紙が届いたら破棄するよう下の者にも命じておく。


 だから、百通だろうが千通だろうが手紙を送りつけるだけ無駄だ。


 君を捨てた国のことなど忘れて、のうのうと生きていくことを勧める。




 ハリソン・ミラ・ウリザーグより。

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