第10話・薬草畑を作る
あれから数日が経ち、ギルドのアリサさんから連絡をもらって俺は今商業ギルドに向かっていた。
今日も元気にドアを開けた。
「こんにちはー」
俺は先日教わった通り、専用の個室へと向かった。
「お待ちしておりました。アレックスさん」
「連絡ありがとうございます」
「依頼された根つき薬草が届いておりますよ。こちらを」
薬草のいっぱい入った籠をカウンターに置いたアリサさんから
俺は籠を受け取り、中の薬草を確認した。
「確かに。頼んでいた物です」
「大丈夫ですか? 全て確認し終わるまでお待ちしますよ?」
アリサさんが言ってくれたが
「いえ、商業ギルドを俺は信用していますから大丈夫ですよ」
俺はそう言ってこのままで大丈夫と言った。
いつものように受け取り証にサインをして、薬草を受け取る。
「育つといいですね」
笑顔でアリサさんが俺に言ってくれた。
アリサさんには本当に感謝している。
何もわからない俺に色々と親切に教えてくれたり、こうやっていつも笑顔で接してくれる。
仕事熱心だし。
俺もアリサさんを見習わないとな。
「じゃぁポーションが出来たらまた持ってきますね~」
俺はアリサさんに挨拶をし、ギルドを出た。
庭は既に畑を作る場所は耕して用意してあった。
後はこれを植えるだけだ。
「これ全部ここに植えてしまう? それとも半分にして、残りは水に浸けて水耕栽培してみる?」
「よし、実験も兼ねて半分は水耕栽培にしてみよう!」
俺は、買い取った薬草の半分は畑に植え、残りは俺が出した水の中で水耕栽培を行うことにした。
勿論、畑に植えた薬草にも、最後は「良いポーションの材料になってくれよ!」と念じながら水をたっぷり遣った。
「よし! 今日のところはここまでかな」
「暇になったな……毒消しポーションの作り方でも勉強するか」
俺は先日買った本を持って来て、復習をした。
────アレックスがポーション作りの本を読み耽っていた頃、冒険者ギルドでは
「お前のせいだぞ!」
「なんだと? お前が盾としての力不足だからだろ!」
「はぁ? マルクスお前のMPが直ぐに尽きるのが、わりーんだろうが!」
「大体、フレドリーの矢だって全然当ってなかったろ!お前、夜遊びばかりして集中力が落ちてるんだろ!それにお前、偵察役のくせに何度も道、間違えてたろ!」
「それはお前だって同じだろ! 道は間違えるし、タンクのくせにポーションはろくに用意してねぇし!」
「今までポーションなんかアレックスが全部用意してたから、そんなもん知るかよ!」
「あんなヤツのこと口にすんな!あんな役立たずの名前なんか!」
「やめろ! ゼント! フレドリー! それにマルセルも!今日はいつもより、みんな調子悪かっただけだ。疲れが溜まっていたんだ、きっと!」
「あぁそうだなぁ……最近疲れがなかなか抜けねぇ……」
「前までは、狩りの途中で息が上がるなんてことはなかったのに……最近は家に帰ってもなかなか疲れがとれねぇんだ」
「俺も最近は夜早く寝ても、なんか朝もだるい日が……」
「しっかりしろよ! もうすぐ昇級試験だぞ! 俺達の夢を忘れたのか!」
「あぁそうだったな。折角あのお荷物野郎のアレックスが抜けたんだ。こんなとこで、俺達がつまずいてる場合じゃねぇな」
「ああ、そうだな。次の狩りにはポーションも多めに持って行こう。あぁ、仕方ねぇな……出費は痛手だが、命の危険には変えられねぇ」
トボトボと歩きながら冒険者ギルドを出る四人の姿があった。
────
「おい! 今すぐ上級ポーションを50本用意してくれ」
冒険者ギルドに、鎧姿の王宮騎士達の姿があった。
「何事ですか?」
カウンターにいた、リオンが答えた。
「急ぎの用だ! 特務であるため理由は話すことは出来ない!」
「上級ポーションを50本もは無理です。そんなに在庫がありません!」
「では今あるだけでかまわん! 全て貰おう!」
「今、ご用意できるのはここにある10本だけです!」
「10本かぁ……止むをえん! それを貰おう!」
「は、はい……」
騎士達は、代金を支払うと直ぐにギルドを出て駆けて行った。
「何事でしょう……」
冒険者ギルドではザワザワとしていた。
リオンと、コニーも少し不安な気を隠し、仕事をしていた……
商業ギルドでも同じことが起きていた。
「上級ポーションですか……50本はとても無理です」
「では用意できるだけでかまわん!」
「今ご用意できるのは回復ポーションが19本、MP回復ポーションが20本です」
「良かろう。それを!」
「177000ペニーになります」
「177000?」
「はい。こちらのポーションは上級ですが、最上級とも言える品質ですので」
「…… 止むをえん」
「ですが、副長!」
「隊長には俺から話す! 全て購入しろ!」
「はい……」
支払いを終えると、急ぎ走り去っていった騎士達の後ろ姿を見ながら、商業ギルドの職員達も、
何やら不穏な雰囲気に不安を抱えていた……
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