第9話 街へ
「ここが街かあ。城から出てってからあ見向きもしなかったからほぼ初見だぜ」
「え? その武器って買ったやつじゃないの?」
「あー、これあゴブリン? 的な奴を倒して奪った」
「……馬鹿をどう極めたんだ?」
「うるせえなあ。お前も指名手配されてんだろ? じゃあ一緒じゃねえか。そのせいでこんなわけわかんねえ能面みてえなのつけさせやがって。俺に眼鏡を貸せよ」
「やだね。なんかフードに眼鏡ってオシャレじゃん」
「オシャレ……? なあおい、オシャレってなんだ」
街は、王城を中心に広がっており、最端には立派な壁で囲われている。壁は門が付いていて、そこからしか出入りすることはできない。
門番もいるため、ちゃんとした許可が無いと入ることができないらしい。
もちろん俺たちに許可なんてあるはずもないので、こうやって裏技を使って中に入っている。
「まあとは言ってもあのチョークは万能じゃないけどね。行ったことのある場所にしか転送できないし」
「ま~別にいいんじゃねえの。街には来れたし、買いもんしてからさっさとダンジョンに戻れりゃあよお」
「それもそうだね。んじゃ、さっさと買い物しよっか。集合は二時間後にここで」
「別々なのか?」
するとアサはため息を一つ。
「こんな怪しい恰好してる二人組なんて一瞬で憲兵のお世話になるだろ」
「あ~確かになぁ。やっぱお前頭いーんだな」
「はいはい。じゃあ二時間後にここでね」
「おーう」
するとアサはすたすたと歩いて行ってしまった。
俺も武器とかを探すか。あとできりゃ服も欲しいな。
……武器やってどこだ? 地図もねえし来たことねえし分かんねえよ。
あと時間ってどうやって調べるんだよ。時計なんてもってねえぞ。
「駄目だ。分かんねえこと考えてても何にも解決しねえもんな。よっし、んじゃあ行くか」
という訳で考えなしに店を回って行く。
だがここで一つ大きなことに気がついた。
「あア? なんだこれ。落書かあ?」
字が読めねえ。
あ? 日本語は読めるわ、馬鹿にすんな。一応受験して高校入ってんだからな。
そうじゃなくてこの世界の字が読めねえんだ。
発音とか聞いてる言葉はそのまま日本語なのに、書かれてある文字が日本語じゃあねえ。
「気持ち悪りい」
そういえば自分の所持金もいくらか分からない。
コインらしきものはそこそこ持っているが、それがどれほどの価値なのかが分からないのだ。
「マジかよ、詰んでんじゃねえか」
どうすっかなあー。最悪奪い取るか?
いや、さすがの俺もモロ悪事はできねえなあ。
適当にぶらついていると、武器屋らしき建物が見えてきた。外にいろいろ武具を飾ってるし武器屋だろっ。
木製の扉を開ける。
すると中には客が一人だけいた。身長と前髪の長い男だ。
その男はどうやら店主と話しているようだったが、すぐに俺の方をみるなり、
「じゃあ店主さん、他のお客さんがきたのでここらへんで」
すると俺の方へと歩いてきた。俺の横を通り過ぎるとき、耳元でぼそりと呟いた。
「じゃあまたね、指名手配犯」
その男は、うすく笑っていた。男はそのまま店を後にした。
「気ん持ち悪りい~ことばっかだぜ」
俺は唾を吐きそうになるが、すんでのところで抑えた。
「てんちょーさん、お勧めの武器教えてくれ」
「……能面の客は珍しいな」
店長は優しそうな女の人だった。胸でけえ。
「お前さん、クラスはなんだい? それによって変わるからさ」
おっとお。
いきなりピンチが再来してきやがった!
おすすめを聞くのは俺にとっては地雷だったか!
「クラスは……さ、三年B組だっ!」
「はあ?」
「……え~人と言う字はあ~(激似)」
俺はお姉さんが転生者という線にかける!
「何言ってるか全然分らんわ。ごめんねえ」
「……終わった」
俺の渾身の一発芸でうやむやにしようと思ったが不発に終わってしまった。
すなわち絶体絶命である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます