第78話 闇鍋 その2

闇鍋を始めて一口目で俺達は思っていたよりも吐き気を催すレベルで不味く、もう本当に食べるのが嫌になっていた。


それでも食べ物で遊ぶだけ遊んで、もし残す様なことがあれば炎上してしまうかもしれないので、そんな事になってしまえば今後の活動にも影響してくる……


だからこそ俺はこの闇鍋の主催者として、鍋を残すわけにはいかないのだ!


そうして俺は置いてある自分の分の取り分けられた鍋を、一気に口へと掻き込み味を感じる前に無理矢理胃の中へと押し込んだ。


来た!これなら!


そう思った次の瞬間俺の口内には先程食べた鍋の味を何倍にも濃くした、もう食べ物の域を超えた何かしらの兵器に該当するであろう、味が口中に充満した。


俺は勢いよく走り出した。

周りの事など一切気にせずに、口内にある内容物を吐き出さない様に口を押さえて、トイレへと全力疾走で向かった。


するとちょうど色々吐き出せたのか、グロッキーになっているキラメとすれ違った。


いつもならすれ違う際には挨拶したり、一言二言話す俺たちだったが、今は2人ともそんな事をしている暇や元気がなかった為、そのままお互いのことを見ることもなくすれ違い、キラメは地獄へと俺はこの苦しみを吐き出して良い天国へと、異なる歩幅で向かった。


そして俺は吐いた。


その後は結局女性陣も頑張ってくれたが、さらに取り分けられた一杯を食べ終えると、気絶してしまったので残った鍋は、俺とスタッフ(園野さんのみ)で美味しく……うん美味しくいただきました。


俺の元々の想定では、ちょっと変な味のする鍋を食べて、最後に答え合わせをして配信を終えるつもりだったが、すでに3人が気絶して……いや今4人になったな。


そんな訳で俺以外が全滅してしまったので、結局この鍋に入っていた食材は分からずじまいで、配信は終了してしまった。


とは言ってもリスナーは鍋が作られているところを見ていたので、あの劇物鍋に何が入っているか知っているので、その辺りは大丈夫だろう。


だから……俺も…………今は……………………ゆっくりと…………………………休むよ


そうして、俺達5人は2時間後に帰ってきた真冬に起こされるまで、その場で気を失っていた。


結局その日は園野さん含めて、家に帰るほど元気がなかった為お泊まり会を行い、いっその事これも配信するかと言う話も出たが、流石に昼間の疲れが抜けきっていなかった俺達は、そのまま配信をする事なく真冬が頼んでくれた出前を食べて、そのまま泥の様に眠りにつき、翌日の朝に俺が家まで送り届けた。


ちなみにあの後結局あの鍋に、何が入っていたのかが気になり調べたところ、


俺が、

激辛鍋の元、白菜、牛肉、プリンの四つで


キラメが、

チョコレート、生クリーム、甘エビの三つで


マミさんが、

焼き鳥、お酢、マシュマロの三つで


ミリーが、

コーヒー豆、乾パン、カレーのルーの三つらしい。



いや鍋に入れるもの買ってきてるの俺だけかよ!


はっちゃけすぎかよ!

と言うかマミさんあなたは俺の味方だったのでは?

お酢って何ですか?お酢って!


ミリーに関してはカレーを入れるファインプレイをしているはずなのに、何故かあの何に入れても俺色に染めてくるカレーの味一切しなかったし、と言うか何か苦いと思ってたのはコーヒー豆か……


そして最後がキラメだが……

まぁ、なんて言うか正直これは妥当すぎて何も言えねーわ


だが正直これで終わっていたら、まだ良かったよ!


おい園野!お前何勝手に納豆、キムチ、くさやとか言う絶対臭くする三銃士みたいなの入れてんだよ!


俺はお前をカメラマン兼料理人として呼んだよな?何勝手なことしてんだよ!

そしてもし俺が巻き込んでなかったら、闇鍋の面白いところだけを楽しんで、逃げるつもりだっただろ!


いや本当無理矢理にでも巻き込んで正解だったわ


そうして無事かどうかはわからないが終了した闇鍋配信は、思いの外人気が出たおかげと言うか、せいと言いますか、vtuber界隈で闇鍋ブームが到来し、今デビューしているvtuberは全員闇鍋をしたのでは?と思うほどに皆んながこぞって闇鍋をやり出した。


まぁでもそこで第一走者である俺達が、結構闇鍋でも酷い部類のことをやったせいで、後になればなるほど元々ハードルがバカ高かったせいで、しまいには面白さを取るために食べ物以外も鍋に突っ込んで炎上するvtuber達を見て、俺は事前にキラメが謎の自称宝箱を鍋に投入しようとしたのを、無理矢理にでも止めて良かったと安心した。


そんな訳で俺達、特に俺はこの闇鍋ブームの第一人者という事で、注目を集めた結果登録者が8000人に到達した。

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